「うちの子に特別な才能や能力なんかありません」という大間違い
昭和の時代のサラリーマンのように、大企業の一員を目指そう、多数派のつくるスキームに乗って無難に世渡りをしよう、そんな時代遅れのたらい船に乗ってみたって、もう明るい航路は見えません。日本だけにあった「終身雇用」という雇用常識は、遠くない未来に崩れ去っていくでしょう。
そうでなくたって、インターネット社会の成熟により、日本でも働き方の様式が大きく変わってきています。だれもが情報発信をできるようになりましたし、どこにいたってあらゆる情報を集められるようになりました。
オフィスへ出かけなくてもリモートで仕事はできますし、世界中の人たちとリアルタイムでつながることができるのです。こうした変化が、社会と働き方を大きく変えていきます。
自分が好きなことを仕事にするチャンスは増し、自分にしかできないこと、個人の個性や能力が、より明確に問われる社会がやってくるのです。
そんな新しい時代を生きる子どもに求められるのは「知識をフレキシブルに使って、個性を生かす」能力です。言い換えれば「いくつになっても、どんなところでも、強く楽しく生き抜いていく力を磨いた人間」でしょう。
私が講演会やオンライン配信でそんな話をすると、多くの親御さんが不安げな面持ちでこうおっしゃいます。
「うちの子には、そんな特別な才能や能力なんかありません。世の中が変わるなら、よけいに人並みのことをできるようにさせなければと思ってしまいます」と。
親御さんが思い描く「特別な能力や才能」とは、たとえば10代のプロ棋士、天才ジュニアゴルファー、テレビで話題のキッズプログラマー、若き画家やデザイナーでしょうか。
しかし、ごく一部の天才やトップアスリート、クリエイターたちをひきあいに「うちの子は天才ではないので、これまでどおり一般常識を叩き込んでいきます」と決め込むのはいかがなものでしょう?
「子どもはみんな天才です」
こんな大げさなことを言うつもりはありません。でも、子どもたちはみんな、その子ならではの才能のかけら、個性的な能力の種子を持っています。それはとてもささやかで、さりげないため、ほとんどの親御さんが見過ごしてしまいがちです。欠点や短所だと見誤っているケースも、大変多い。
子育てには、正解はありません。しかし、子育てに「大間違いはある」と知っておいてください。
今まで気づかなかった長所を伸ばすと、子どもの成績がぐんぐん上がる。これは、実証済みのこと、間違いありません。
石田 勝紀
教育評論家