子どもの「モヤモヤ」と「ワクワク」心
子どもの短所が目についた親は、何とかしてあげたいと考えます。そして多くの親は、子どもの優れたところはあっさりスルーして、劣っている部分を矯正しようとします。
「みんなができないことより、みんなにできることができるようになってほしい」と願って、短所を矯正して、みんなと同じように平均化しようとするのです。
お子さんを心配する気持ちは理解しますが、みんなと同じように「平らにならす」ことは必要でしょうか?
私なら、劣っているところを矯正しようとはしません。もっと伸びるかもしれない優れた芽を、摘んでしまうことになりかねないからです。
ここでふたつの例を紹介しましょう。不得意な教科を克服させようとするケースと、得意な教科を伸ばそうとするケースです。
〈子どものテストが「算数90点、国語50点」だったとき〉
①不得意な教科を克服させるケース
親の心の声(算数はいいけど国語がね…)
親「算数はもういいから、国語の成績を上げられるようにがんばろうね」
子「わかった」
親の期待に応えたい子どもは次のテストでがんばります。首尾よく「算数70点、国語70点」をとってきました。
親「70点と70点を合計して140点ていうことは、前回と同じね。褒められる点数じゃないけど、平均点がとれたなら、まあいいかな」
子「…」
はじめのテストで残念だと感じた気持ちを言葉にして、短所いじりをしてしまっています。さらに2回目のテストをがんばった子どもに対して反応をしないで、しぶしぶ納得しています。子どもは、モヤモヤします。
②得意な教科を伸ばそうとするケース
親「いいね! このまま算数をがんばろうか」
子「わかった!」
子どもは得意の算数でまた高得点を出せることを想像し、ワクワクしながら勉強します。
2回目のテストでは「算数95点、国語75点」と驚くような高得点をとりました。
親「95点と75点を合計して170点。30点の成績アップだね」
子「やったー!」
これが、成績がいいほうの科目をさらに強化した結果です。注目したいのは、得意科目を伸ばすと、要領を得たかのように苦手科目の成績も上がることです。得意科目を伸ばすとすぐに苦手科目が上がる場合もありますが、通常は少しタイムラグがあります。しかし、まずは得意科目をさらに引き上げる方法のほうが、最終的に苦手科目をも伸ばす結果になるという事例は枚挙にいとまがありません。
ひとつの「得意」やひとつの「好き」にのめり込むことで、子どもは、学びの方法、学ぶコツを習得し、自信をつけていきます。そして「夢中になってやった経験」は、他のフィールドでも生かされることを知り、自分なりに応用します。こうして苦手だった国語の成績も、いつのまにか伸びていくのです。