NPO法人生活支援機構ALL代表理事・坂本慎治氏。生活困窮者の相談に乗り、生活保護の申請を手助けし、住まいを紹介。また新生活のための生活支援も無償で行っている。そんな同氏のもとに、ひとりの若い女性がやってきた――。 ※本連載では書籍『大阪に来たらええやん!西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』(信長出版)より一部を抜粋・編集し、日本の悲惨な実態に迫っていく。
「お前、金借りてこい」DV男から逃げても逃げても…生活困窮女性の実態 (※画像はイメージです/PIXTA)

2人はそれぞれ「病院」「警察」行きになる事態へ

「なんで家賃払ってないの?」と彼女が指摘すると、ホストは逆上。ボコボコに彼女を殴りつけ、彼女は病院に運ばれました。

 

当然、警察沙汰となります。ホストは逮捕されました。

 

それでも、彼女はこの生活から解放されたわけではありません。

 

ホストがすぐに外の世界に戻ってくるかもしれない。すると仕返しされるかもしれない。その前にお金がなく、家賃も払えない。今度こそもう、行くあてがない……。彼女はわらをもつかむ思いで、私たちの元に駆け込んできたのでした。

 

顔はまだボコボコ。家に行ってみれば、床には血が溜まり、壁には彼女の頭がガンガン打ち付けられた跡が痛々しく残っています。

 

その環境の中、家具だけはなぜか豪華です。かつて「羽振りのいいおじさん」から買い与えられた高級家具がまだ残っていたのです。なんとも複雑な気持ちになりました。

 

その後、我々のほうで支援させていただき、彼女は元気に暮らしています。ちょうど先日電話が来たのですが、穏やかな声で、安心しました。

 

 

坂本 慎治
NPO法人生活支援機構ALL 代表理事
大阪居住支援ネットワーク協議会 代表理事
株式会社ロキ 代表取締役

 

※本連載で紹介している事例はすべて、個人が特定されないよう変更されており、名前は仮名となっています。