日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は、東京オリンピックで一躍注目を集めた、堀米雄斗選手の「10億円稼ぐ!」の宣言に焦点を当てていきます。
15歳の堀米選手が宣言「10億円稼ぐ」…もし会社員が実現させるなら ※画像はイメージです/PIXTA

会社員の「平均生涯労働時間」は何万時間か?

生涯賃金の話をしたので、もうひとつ、生涯労働時間についても見ていきましょう。

 

前出の『ユースフル労働統計2020』によると、学歴別では、男性高校卒だと11.0万時間、大学・大学院卒だと9.4万時間、女性高校卒だと9.6万時間、大学・大学院卒だと8.5万時間。学歴が高いほど就業開始年齢が遅くなるため、それだけ生涯労働時間は短くなっています。

 

また大学・大学院卒・男性で企業規模別に見ていくと、「従業員10~99人企業」で9.7万時間、「従業員100~999人企業」で9.4万時間、「従業員1000人以上企業」で9.3万時間と、大きな差は見られませんが、企業規模が大きいほど短くなる傾向にはあります。つまり学歴が高く、規模の大きな企業に勤務したほうが、効率的に稼げている、といえましょう。

 

さらに生涯労働時間の推移を見ていくと、いまから30年ほど前の1990年の生涯労働時間は9.23万時間。そして最新の2019年では9.49万時間。昨今、働き方改革で労働時間が減っているといわれていますが、トータルでは増えています。これは定年年齢の引上げが要因。1990年であれば60歳までの労働時間は8.10万時間で、61歳以後が1.13万時間でしたが、2019年は60歳までが7.82万時間、61歳以降が1.67万時間でした。

 

【男性大学・大学院卒「生涯労働時間」の推移】

1990年 9.23万時間

1995年 9.08万時間

2000年 8.98万時間

2005年 9.03万時間

2010年 9.06万時間

2011年 9.16万時間

2012年 9.31万時間

2013年 9.33万時間

2014年 9.38万時間

2015年 9.39万時間

2016年 9.48万時間

2017年 9.55万時間

2018年 9.61万時間

2019年 9.49万時間

 

独立立行政法人労働政策研究・研修機構『ユースフル労働統計2020』

 

9.4万時間かけて生涯賃金を稼いでいる会社員。10億円稼ぐには30万時間以上の時間が必要だということがわかる一方で、改めて、堀米選手の凄さもわかります。

 

もし会社員が「10億稼ぐ!」となると、大企業のトップにのぼりつめるか、宝くじを当てるか、資産運用で大きく増やすか……選択肢は限られます。しかも大きく増やすというなら、同じだけのリスクを取る必要もあります。やはり、堅実な運用でコツコツと資産を形成していくことが、会社員にとって幸せの近道、といえそうです。