日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点をあてるのは「社会保険料」。給料明細を見て「こんなに天引きされている!」と驚いたことはないでしょうか?
月収30万円、手取り23万円…なぜ社会保障費は恐ろしく高いのか? ※画像はイメージです/PIXTA

給料30万円の会社員、手取り額は…

厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、会社員(平均年齢43.2歳)の残業代などを除く平均月給(所定内給与額*)は30万7700円。ただ手元に30万円が支給されるかといえばそうでもないことは、会社員であれば痛感していることでしょう。

 

*労働契約等であらかじめ定められている支給条件、算定方法により6月分として支給された現金給与額(きまって支給する現金給与額)のうち、超過労働給与額(①時間外勤務手当、②深夜勤務手当、③休日出勤手当、④宿日直手当、⑤交替手当)として支給される給与をいう。

 

まず引かれるのは税金。独身であれば、住民税が2万円ほど、所得税は8000円ほど引かれます。そして大きいのが社会保険料。4万2700万円ほど引かれて、手元に残るのは23万円ほどとなります。

 

もちろん住んでいる地域や家族構成などにより、給料から天引きされる額は異なりますが、大きく変わることはありません。

 

給料から天引きされる社会保険料は「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」、さらに40歳以上であれば「介護保険料」の4つ。

 

「健康保険料」は加入する健康保険によって負担額が異なります。会社員であれば、中小規模の会社が加入する「全国健康保険協会」か、大規模の会社が独自に運営を行う「健康保険組合」、自営業等であれば「国民健康保険」、公務員などは「各種共済組合」があります。

 

「全国健康保険協会」は、都道府県ごとに保険料率が異なります。令和3年度、最も高いのが「佐賀県」で10.68%、最も低いのが「新潟県」で9.50%。全国平均は10%程度です。

 

実際の保険料は被保険者の収入に応じて決められますが、残業代など毎月変わる報酬までも考慮すると複雑になってしまいます。そこで50等級に単純化した「標準報酬月額」に当てはめて計算します。自己負担額は「標準報酬月額×都道府県別の保険料率÷2」で求めることができます。

 

「健康保険組合」は全国に1400弱ほどあり、被保険者とその家族と合わせると、全国民の4分の1ほどが加入しています。保険料率は会社の被保険者数や標準報酬月額などを考慮して、3~13%の間で組合ごとに決められています。健康保険組合の平均は9.2%程度です。また負担割合は原則折半となっていますが、組合ごとに負担割合を決めることができます。

 

「介護保険」は40歳から健康保険と合わせて保険料が徴収されます。40〜64歳までの介護保険料率は「全国健康保険協会」であれば、全国一律で1.80%(令和3年度)、「健康保険組合」の場合は各組合で設定されています。

 

「厚生年金保険料」は、国民年金の上乗せとして加入するもの。国民年金の保険料は月額1万6610円(令和3年)、厚生年金保険の保険料率は現在18.3%、実質負担率は9.15%です。標準報酬月額は、第1級の8万8000円から第32級の65万円までの全32等級に区分されています。

 

「雇用保険料」は会社員の雇用を守るもので、保険料率は一般事業の場合は0.9%で、会社が0.6%、従業員は0.3%を負担します。