日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点をあたるのは「残業」。さまざまな角度から残業時間と年収の関係を見ていきます。
働けど働けど稼ぎは増えず…会社員の「残業時間」と「年収」の実態 ※画像はイメージです/PIXTA

働けど稼ぎは増えず…業種・職種別に見る残業時間と年収

次に学歴別に平均残業時間を見ていくと、男性高校卒で月平均14時間、大卒、大学院卒で10時間。高校卒のほうが残業時間は長く、稼ぎは少ないという結果に。学歴による収入格差が如実に現れています。

 

【男性会社員、学歴別平均残業時間】

※(かっこ)内は推定平均年収

高校卒:14時間(391万円)

大学卒:10時間(500万円)

大学院卒:10時間(579万円)

 

出所:厚生労働省:『令和2年賃金構造基本統計調査』より。従業員10名以上の企業を対象とした1ヵ月の超過実労働時間数

 

さらに業種別に見ていくと、最も平均残業時間の長い業界は「運輸業、郵便業」で23時間。一方で最も短いのが「教育、学習支援業」で4時間。平均残業時間は業界によって5倍強の差があることがわかります。

 

また「運輸業、郵便業」の推定平均年収は452万3000円に対し、たとえば「電気・ガス・熱供給・水道業」であれば、平均残業時間は1/2の12時間で、平均年収は1.4倍ほどとなっています。

 

【業界別、平均残業時間】

※(かっこ)内は推定平均年収

1位「運輸業、郵便業」23時間(452万円)

2位「鉱業、採石業、砂利採取業」14時間(570万円)

3位「建設」13時間(540万円)

4位「電気・ガス・熱供給・水道業」12時間(662万円)

5位「製造業」10時間(491万円)

5位「情報通信」10時間(620万円)

5位「金融、保険業」10時間(612万円)

5位「学術研究、専門・技術サービス業」10時間(633万円)

9位「不動産業、物品賃貸業」8時間(533万円)

9位「宿泊業、飲食サービス業」8時間(354万円)

11位「卸売業、小売業」7時間(478万円)

11位「複合サービス事業」7時間(466万円)

13位「生活関連サービス業、娯楽業」5時間(378万円)

13位「医療、福祉」5時間(444万円)

15位「教育、学習支援業」4時間(581万円)

 

出所:厚生労働省:『令和2年賃金構造基本統計調査』より。従業員10名以上の企業を対象とした1ヵ月の超過実労働時間数

 

また職種別にみていくと、いわゆるトラック運転手が最も平均残業時間が長く35時間。平均年収は会社員の平均以下の453万円です。ほかの運転手も同様に平均残業時間は長く、年収は平均以下、という傾向にあります。

 

【職種別、平均残業時間】

※(かっこ)内は推定平均年収

1位「営業用大型貨物自動車運転者」35時間(453万円)

2位「営業用貨物自動車運転者(大型車を除く)」31時間(419万円)

3位「バス運転者」28時間(427万円)

4位「船内・沿岸荷役従事者」26時間(534万円)

5位「ダム・トンネル掘削従事者,採掘従事者」25時間(508万円)

6位「クレーン・ウインチ運転従事者」24時間(503万円)

7位「電気工事従事者」22時間(577万円)

8位「獣医師」20時間(631万円)

8位「建設・さく井機械運転従事者」20時間(452万円)

10位「建築技術者」19時間(619万円)

 

出所:厚生労働省:『令和2年賃金構造基本統計調査』より。従業員10名以上の企業を対象とした1ヵ月の超過実労働時間数

 

さまざまな視点で「残業時間」を見てきました。立場によってその時間はさまざまですが、すべてを通していえるのは、残業時間が長いからといって稼ぎが多いというわけではない、ということではないでしょうか。職場によっては帰りづらい、などという場合もあるかもしれませんが、無駄に会社にいるのはやめて、さっさと帰ったほうが賢明だといえるでしょう。

 

なお本調査の超過実労働時間数には、いわゆるサービス残業の実態は反映されていません。もちろんサービス残業は違法です。