米国発の「リスク対応型証拠金計算システム」とは
(3)売買に必要な資金
1.SPAN(R)証拠金制度
商品先物取引は、総取引金額のおよそ3~10%程度の資金で取引を開始することが可能です。
この資金のことを「証拠金」といいます。2011(平成23)年1月から、国内二つの商品取引所における証拠金は、SPAN(R)に準拠した制度となっています。証拠金額の計算は、証拠金計算方法であるSPAN(R)(スパン)に基づいて行われます。
SPAN(R)とは、The Standard Portfolio Analysis of Riskの略で、米国のシカゴ・マーカンタイル取引所が開発したリスク対応型証拠金計算システムのことです。世界各地の主要取引所で広く採用されており、証拠金計算の国際標準といえます。身近なところでは、大阪取引所に上場される日経225ミニ等の証拠金計算に採用されています。
SPAN(R)証拠金制度では、株式会社日本商品清算機構(以下、JCCH)が定める計算変数(=SPANパラメータ)を基準に、証拠金額を算出します。JCCHとは、商品先物市場の清算機関です。SPANパラメータとは、過去における商品先物取引の銘柄(=原資産)の日々の価格変動に基づき、JCCHが定めた証拠金計算の基礎となる変数です。
商品先物取引業者は、JCCHが定めた最低限必要な証拠金額を下回らない範囲で、各社のルールに基づき「委託者証拠金額」を定めます。
従って、委託者証拠金額や証拠金に関するルール等は、商品先物取引業者により異なります。ちなみに、最低限必要な証拠金額を「取引証拠金維持額」といいます。商品先物取引を行う際は、委託者証拠金を商品先物取引業者に差し入れまたは預託する必要があります。
証拠金は取引に参加するために必要な担保金であり、また、取引を決済するまでの間は、定められた証拠金額を維持することが必要となります。
2.SPAN(R)証拠金制度の特徴
SPAN(R)証拠金制度は、保有する建玉全体(=ポートフォリオ)から生じるリスクに応じて証拠金を計算するところに特徴があります。
ちなみに、建玉とは、取引所で成立した注文のうち未決済のものを指します。ポジション、「玉(ぎょく)」ともいいます。具体的には、次のような組み合わせにおいてリスクを相殺したうえで、建玉全体のリスクを計算します。
a.同一商品・同一限月の「売り」と「買い」の建玉
b.同一商品・異なる限月間における建玉
c.価格に相関性のある商品グループ間における建玉
d.先物とオプションの建玉
組み合わせによってはリスクが軽減され、建玉全体に対する証拠金必要額が減額になることがあり得ます。