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高度成長期(1955年〜1972年)
高度成長期の後半では、ニクソン・ショックと第二次ベビーブームについてみていきましょう。ニクソン・ショックとは、1971年にアメリカのニクソン大統領が発表した、それまでの世界秩序に対する二つの大きな方針転換のことを指します。第二次ベビーブームとは、第一次ベビーブームで生まれた団塊の世代が子供を持つようになったことから起こりました。1971年から1974年までに生まれた人が該当し、団塊世代の子供なので「団塊ジュニア」と呼ばれることがあります。
ふたつのショック
ニクソン・ショックとは、1971年にアメリカのニクソン大統領が発表した、それまでの世界秩序に対する二つの大きな方針転換のことを指します。
最初のショックは、7月15日に発表された中国への訪問の予告から、翌年2月の実際の訪問に至るまでの新しい外交政策です。アメリカと中国は、1950年代の朝鮮戦争で直接戦うこととなり、両国関係は冷え切っていました。その後、アメリカはベトナム戦争が泥沼化して、当時の北ベトナムの後ろ盾であった中国との関係改善によってベトナムからの円満な撤退を模索していました。一方、中国も同じ共産主義陣営の当時のソ連との関係悪化が深刻化したことから、アメリカとの関係改善に前向きに取り組みました。その後、1979年のカーター政権時代に両国の国交が樹立されました。なお、日本はニクソン大統領が訪中した1972年に、中国と国交を正常化しました。
もうひとつのニクソン・ショック(ドル・ショック)は、1971年8月15日にニクソン大統領が、それまでの金本位制の金1オンス=35米ドルの金と米ドルとの交換を一時停止したことです。1944年のブレトン・ウッズ体制以来維持されてきた、金本位制が電撃的に終わりを告げました。戦後の金・米ドル体制において、1950年代は戦後の復興と科学技術の進歩による経済成長、貿易や投資といった国際取引が拡大しました。1960年代になると、西欧各国ならびに日本が大きく成長する一方、アメリカはベトナム戦争で多くの戦費を支出したことから財政赤字となり、相対的に米ドルの価値が下落していきました。
ニクソン・ショックからスミソニアン協定へ
1966年には、諸外国が保有する外貨準備がアメリカの保有する金を上回る事態になりました。こうなるとプロローグで説明したように、戦前に各国が金本位制の維持ができなくなって、経済的・政治的に混乱した国々の二の舞となります。実際に1971年8月に入って、イギリスとフランスが米ドルを金に交換しようとしたのがニクソン・ショックの引き金となりました。
ニクソン・ショック直後から、信用力を失いつつある米ドルの売りが殺到しました。日本銀行は1米ドル=360円の固定為替レートを維持すべく、懸命に米ドルを買い支えましたが、8月末には1米ドル=340円までの円高となりました。このまま各国が変動相場に移行するとどうなるのでしょうか? 普遍的な価値を持つ金を裏付けとした米ドルとの固定為替制度が崩れると、各国が恐れることは第二次世界大戦の二の舞、すなわちブロック経済から戦争への道筋でした。
戦争に発展する事態を回避するため、1971年12月に先進国10ヵ国(G10)はアメリカのスミソニアン博物館で会議を開き、金1オンス=38米ドルとして米ドルの価値の引き下げを行いました。この時、日本円は1米ドル360円から308円に切り上げられて、固定相場制度を維持することとなりました。このブレトン・ウッズ体制を存続させるための措置を「スミソニアン」協定と呼びます。本来ならば、米ドル安によってアメリカは貿易黒字となり、米ドルがアメリカに戻ってきて金本位制が維持できるはずでした。しかしながら、その後もアメリカはベトナム戦争の泥沼から脱することができず、スミソニアン協定は1973年に終わりとなりました。
第二次ベビーブーム
第二次ベビーブームとは、1947年から1949年の第一次ベビーブームで生まれた団塊の世代が子供を持つようになったことから起こりました。1971年から1974年までに生まれた人が該当し、団塊世代の子供なので「団塊ジュニア」と呼ばれることがあります。団塊ジュニアは毎年200万人以上出生していました。
団塊の世代が、日本の高度経済成長の前に生まれて中卒、高卒、大卒それぞれの年代で経済成長に貢献する労働力だったことと比較すると、団塊ジュニアは日本の高度成長が終わる頃の世代といえます。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識 金融/経済史編(5)<高度成長期②>』を参照)。
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