『Amazon Prime Video(アマゾンプライム・ビデオ)』『Netflix(ネットフリックス)』をはじめとしたサブスクリプション(=サブスク)を活用している人は多いことだろう。有料動画配信サービスに倣い、自動車産業や食品メーカーをはじめ、大手企業がこぞってサブスクを始めている。本記事では、株式会社Macbee Planetエヴァンジェリスト・佐野敏哉氏の書籍『解約新書 マーケッターに捧げる解約の真実と処方箋』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、ネットビジネスについて解説していく。

シェアリングサービスで「買う」という行為が消えた?

◆「所有」せずに「利用」するシェアリングエコノミーが当たり前に

 

自分の持ち物にはならないけれど、利用できて楽しめるならばそれで十分、わざわざ買って持つ必要はなく、体験そのものを大切にするというのが若い人たちの間ではトレンドになっています。音楽はネット配信やダウンロードやストリーミングで聞き、CDはもう買いません。

 

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全米レコード協会によると、アメリカでは2019年上期に音楽業界の売上の80%をインターネットによるストリーミング配信サービスが占めるようになりました。音楽の有料サブスクリプションサービスの加入件数は6000万件を超え、こちらも急成長しています。

 

同じようにゲームも、スマホアプリを使って電車の中でする時間の方が長くなっています。アップルの「アーケード」やグーグルの「スタディア」というサブスクリプションのゲームサービスでは、プログラムはサーバに置かれてクラウド化され、ストリーミングで遊び放題になっています。

 

カセットやDVDに入っているゲームソフトは過去の遺物となりつつあります。かつて一世を風靡したファミコンのカセットはもう見かけなくなりました。カセットに名前を書いて友達と貸し借りしたのは昔のことで、ゲームを買ったとか家に持っているという経験がない今の子供たちは、ゲームを所有するという感覚がありません。

 

若者は自動車も買わなくなったといわれています。確かに日本でもアメリカでも出荷台数が減っていますが、自動車離れが起きているわけではなく、アメリカでは配車サービスの「ウーバー」や「ライドシェア」が、日本ではカーシェアリング市場が成長を続けています。インターネットとスマホで予約でき、それほど待たずに配車してもらえるので不便を感じません。

 

グーグル系の自動運転開発会社「ウェイモ」が始めた自動運転タクシーは、すでにアメリカの一部の州で商用サービスを始めています。アメリカのような車社会で、車を持たなくても済むようになりつつあるのは大きな社会の変化です。自動車が売れなくなっても、人の移動はなくなりません。買わずに使うシェアリングエコノミーがここでも当たり前になりつつあります。

フォルクスワーゲンがウーバーのために車を作る時代

◆シェアリングサービスは重厚長大産業と肩を並べるようになった

 

シェアリングサービスをしている企業は、ここ何年かで急速に成長を遂げています。試しに株価の時価総額を比較してみましょう。2018年のウーバーの時価総額は7200億ドルで、自動車メーカーで世界3位(当時)のフォルクスワーゲンが7410億ドルです。毎日車を何万台も生産している製造業の会社に、1台も作っていないウーバーが肩を並べようとしています。

 

ホテル・宿泊業では、予約サイトのエアビーアンドビーが3100億ドルで、世界的なホテルチェーンのヒルトン・ホテルズ&リゾーツの2800億ドルを上回っています。宿泊サービスを提供している点は同じですが、ヒルトンは世界各地に不動産や建物などの施設を所有しています。一方でエアビーアンドビーはオフィスも借り物ですが、時価総額で負けているのはヒルトンの方です。

 

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サブスクリプションサービスでは、世界的な動画配信サービスのネットフリックスが時価総額1兆5400億ドルです。米国ケーブルテレビNBCが1兆9300億ドルで、これに肉薄しています。

 

ネットフリックスは最近になってオリジナルコンテンツの制作にも力を入れていますが、もともとは他社が作った映画やドラマなどの番組を自社のプラットフォームで流しているだけでした。見たいときに見るという視聴パターンが、従来型のテレビの視聴パターンと逆転しつつあります。

 

見方を変えると、ウーバーが事業を展開するために使う車をフォルクスワーゲンが作っています。旅行予約サイトのエクスペディアのために飛行機が飛んでいるといえなくもありません。すでに海外のホテルは、ホテルズドットコムとエクスペディアからの集客が8割を占めています。

 

これはネットビジネスの道具を旧来の重厚長大産業が供給しているという構図です。ビジネスの風向きが確実に変わり始めました。

 

トヨタ自動車の時価総額はフォルクスワーゲンのおよそ2倍でまだまだ上ですが、これからはウーバーのために作って提供する側になるかもしれません。自分で資産を持つプレーヤーよりも、情報を集約し仲介するプレーヤーが中心になる産業構造へと世の中が変わりつつあります。

 

 

 

佐野 敏哉

株式会社Macbee Planet エヴァンジェリスト

 

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