『Amazon Prime Video(アマゾンプライム・ビデオ)』『Netflix(ネットフリックス)』をはじめとしたサブスクリプション(=サブスク)を活用している人は多いことだろう。有料動画配信サービスに倣い、大手企業がこぞってサブスクを始めているが、解約率の高さに頭を抱えるケースも少なくない。そんなときに活躍するのが、チャットボットを解約ページに置き、その原因をヒアリングするシステムだ。本記事では、株式会社Macbee Planetエヴァンジェリスト・佐野敏哉氏の書籍『解約新書 マーケッターに捧げる解約の真実と処方箋』(幻冬舎MC)より一部を抜粋、チャットボットを導入したFODを例に解説していく。

有料動画配信サービス「FOD」解約希望者の傾向は…

◆FODの解約希望者データから他社の利用状況も見える

 

2019年12月から、FODの解約ページにもチャットボットを置きました。FODはドラマや映画、雑誌などコンテンツが多種多様で、アニメに特化しているバンダイチャンネルと比較するとエンタテインメントサイトの色彩が強く、コアなファンよりも一般視聴者向けといえます。それだけにユーザーの声が集まるのか読めなかったのですが、思った以上によい反応を得ています。

 

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チャットボットの利用数は解約ページに来た人の大半になります。毎月後半になると増えていきますが、これは更新日が月末なのでなるべく最後まで利用しようとする人が多く、更新してすぐ月の始めにやめてしまう人が少ないからです。

 

チャットボットを置いた1カ月目は様子見の段階で、シナリオもやめていく人の声をそのまま聞いて、分かりましたと受け止めるような流れでした。その反応を分析して2カ月目からは親しみやすい語りかけに変えて、解約の前にサービスを見直してもらう案内をシナリオに織り込みました。その結果1回あたりの会話数は1カ月目の平均4.7会話から翌月には6.4会話に増えました。解約防止率も一定の効果が出ています。

 

チャットボットが画面に出てくる位置を画面の下から真ん中にしましたが、変えたその日からユーザー数や会話数が目に見えて上昇しました。特にスマートフォンではその効果が大きく現れています。アイコンの色を変えて、ランダムにウインクするようにするなど細かいところにも手を加えています。

 

FODでは、ほかのサービスはなにを利用しているかを聞いています。アマゾンプライムビデオ1社のみという回答だけでなく、ネットフリックスとアマゾンというように複数の人もある程度いて、FODと合わせると3つの動画配信を同時利用してきたことが分かります。

 

この結果からは、他社に関するデータを自社のユーザー(正確には解約希望者)を通じて得ることができるので、動画配信サービスの勢力図のようなものが見えてきます。自社の内部調査にもかかわらず、ほかの企業や業界のことが分かるマーケティング調査になっているのが面白いところです。

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