『鬼滅の刃』『ガンダム』…サブスク解約率、視聴作品で変わる

コロナ感染拡大の影響により外出自粛が続く今、多くの人が『Amazon Prime Video(アマゾンプライム・ビデオ)』『Netflix(ネットフリックス)』をはじめとしたサブスクリプション(=サブスク)を活用し、余りある時間に耐え忍んでいる。とはいえ、一定期間を過ぎればサブスクを解約する人も少なくないだろう。提供側としてはどうにか防ぎたいこの問題。株式会社Macbee Planetの佐野敏哉氏は、書籍『解約新書 マーケッターに捧げる解約の真実と処方箋』(幻冬舎MC)にて、解約率を下げる方法について解説している。

「寝た子を起こすな」が主流のサブスク業界に変化が

◆「幽霊会員」を生きて活動する会員にする

 

大手の動画配信サイトなどでは、いわゆる「幽霊会員」が100万人単位でいるといいます。

 

5%程度がヘビーユーザーで、こういう人たちが一人1日2時間以上コンテンツを見ると配信業者はコストが増えて損をしています。25%のユーザーは適度に見ていて、70%がほとんど見ず、見ない人の視聴料金に支えられてきたという構造があります。

 

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だからいるかいないか分からないような幽霊会員はそっとしておくというのが、この業界の常識となっていました。毎月定額がクレジットカードで引き落とされていることに気づかないでいてほしい、寝た子を起こさない方が得策だというわけです。

 

ところがここに来て、寝た子に積極的に働きかけて起こす方向に変わってきています。せっかく入っているのに使っていないと損だと教えるのは、サービスを提供する側の使命でもあるし、その方が自分たちにとってもメリットが大きい、むしろこれまで見なかったのはなぜかを知るべきだと考えるようになっています。

 

なにもしないで毎月収入があるなら、それはそれで悪くないような気もします。しかし視聴してもらわないと利用状況のデータが集まりません。もし誰も見なくなったら、どの年齢層がなにを見ているか、人気コンテンツはなにかといった運営政策を決めるための基本的な情報が得られなくなります。

 

今はビッグデータからAIでユーザーの動向を読み解く時代ですから、データ量が多いほど正確な分析が可能になります。その意味では、幽霊会員がいてもなんのプラスにもなりません。

 

外資系の動画配信会社では、どれだけ動画が見られたかを基準にして営業担当社員の報酬が査定されます。その社員が獲得したコンテンツが何億回再生されたか、あるいは何時間見られたかを評価しています。

 

それに見ていればなかなか解約しないのは言うまでもありません。ケーブルテレビ局のマーケティング担当の方が言っていたことですが、幽霊会員はやめると一生戻ってきてくれないそうです。入会したことも忘れていたようなサービスに、再び興味を持つことはないのです。

 

休眠状態になり、そのことに気づいて結局やめていく前に目を覚まして活動してもらうべきです。LTV(顧客生涯価値)を考えても、幽霊会員に頼っているうちはビジネスを発展させることはできないでしょう。

『鬼滅の刃』『ガンダム』の視聴で分かる意外な事実

◆1カ月でやめる人には、なにをしても無駄?

 

次に、すぐやめてしまう人たちにはどのような対応が可能でしょうか。

 

動画配信サイトでは、流行りのコンテンツを見ようとして入会した人は、退会するのも早いという傾向があります。最近では人気コミックが原作のアニメ『鬼滅の刃』を最初に見るとやめるのが早く、昔の『ガンダム』シリーズから見始めると長続きするといいます。さらに分析を進めると、このコンテンツを見たらかなり安心ということがいえるようになるかもしれません。

 

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解約防止と入会期間との間には、かなりはっきりした因果関係があります。解約を希望していたけれどもチャットボットで継続することにした人の内訳を見ると、入会して1カ月未満の人は15%ですが、1カ月以上1年未満では26%、1年以上が59%を占めます。解約するのを考え直した人の6割が長期ユーザーになります。

 

※ サブスクリプションのサイトにある解約ページで解約希望者と対話する機能。チャットボットは「チャット+ロボット」の略語で、解約希望者はこの「会話ロボット」を相手に、ラインのような感覚でテキストベースのショートメッセージをやりとりをする。

 

1カ月未満でやめる人は「見たかった作品を見終わった」「見たいものがなくなった」という解約理由が多くなっています。視聴時間を調べると、1日に10時間も見るような人は、無料お試し期間に見たいものだけ集中して見てはやめていきます。アフリカのサバクトビバッタが大量に繁殖して一瞬で草を食べ、不毛の地にしては次の草地に移動していくのに似ています。

 

それに対してアニメ動画サイトで毎日1時間ずつコンスタントに見ているアニメ好きの人は、無料期間を使ってほかを渡り歩くようなことはしません。ゆっくり草を食べて牧草地と共存していく羊のような存在です。

 

1カ月未満でやめる人たちは、流行のものにしか興味がなく会員サービスの中身には関心を持っていません。その人たちの解約を防止しようと対策を取っても、しょせんは労力のわりに報われないと割り切るべきかもしれません。LTV(顧客生涯価値)を重視してサバクトビバッタが食べに来るようなコンテンツはあえて置かないという選択もありでしょう。

 

一方で1年以上の継続会員は、そのサイトへのロイヤルティが高く、企業にとってありがたい存在です。こうした会員を大事にして、1年未満の人に1年以上続けてもらえるようにする方策に力を入れる方が賢明かもしれません。

「限度額は超えていないはずなのに?」…クレカの罠

◆サブスクを複数利用するとカードが使えなくなることも

 

チャットボットで解約を防止できる一番の要因は、サービスのよさを改めて伝えることです。

 

動画配信サイトでは、解約を防止できたケースのうちコンテンツの品揃えの豊富さや面白さをよく知ってもらったり、知らなかったサービスを教えたことがきっかけになった場合が4割、続いてトラブルの解消法を知ったことが1割から2割程度というところでしょうか。逆にいうとコンテンツやサービス、トラブルの解決法を知らないことが解約原因の多くを占めているわけです。

 

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またこれは通販サイトでもいえることですが、支払いがうまくできなくなったから解約したいというケースがあります。カードの使用期限が切れてしまい登録し直すのが面倒だからという人には、使用期限だけ更新すれば簡単に続けられますと案内することで継続してもらえる可能性が高まります。

 

複数のサブスクリプションサービスを使っている人が、カードで引き落としができないと連絡を受けて驚くことがあります。カードに利用限度額があることは知っていても、そんなに買い物をした覚えがないのになぜだろうと不思議に思いながらも、カードが使えないならやめてしまおうということになりがちです。

 

実はクレジットカードで定期利用料金を決済すると、カード会社によっては当月分だけでなくその先の引き落としも含めて3カ月分の利用枠を押さえているところがあります。

 

毎月1万円ずつサプリや健康食品を3社から買い、複数の動画配信サイトも使っていると、月々の出費が3万数千円になります。仮に利用限度額が20万円のカードでこれらを決済して3カ月分の利用枠を押さえられると、それだけで10万円を超えて残った利用限度額は10万円以下になります。

 

でも本人は月々3万数千円だからまだ16万円以上残っていると思っています。ところが少し買い物をし過ぎた月に限度額を超えてしまい、「なんで?」ということになるのです。

 

これはサブスクの意外な盲点で、解約につながる原因にもなります。解約防止策としては、引き落としができない理由を説明して、別のカードを使うか決済方法を変更するよう案内することになります。チャットボットで説明しきれなければ、「よければお電話でお答えします」とコールセンターにつなぐ方法も考えられます。

 

株式会社Macbee Planet  エヴァンジェリスト

ブライトコーブ株式会社にてSaaS型の動画配信サービスをテレビ局や大手企業100社以上に導入。その後、サブスクリプションモデルへのビジネスチェンジに見事に成功したアドビ システムズ株式会社にて、デジタルマーケティングや広告配信の業務を5年にわたりサポート。サブスクリプションの黎明期より、ビジネス、システムの両面に知見を持つ。

2018年9月よりMacbee Planetに参画。解約防止ツールのプロダクト責任者として従事している。

著者紹介

連載解約新書~マーケッターに捧げる解約の真実と処方箋

解約新書 マーケッターに捧げる解約の真実と処方箋

解約新書 マーケッターに捧げる解約の真実と処方箋

佐野 敏哉

幻冬舎MC

サブスク時代のリテンションマーケティング 「解約したい」をネガティブ要素から未来のマーケティングへ。 逆転の発想で解約を防止する! 近年、急速に注目を集めているサブスクリプションサービス。 継続利用しているユ…