「老後資金が足りない」「年金じゃ生活できない」…不安を煽る報道に、疲弊する人々。資産形成において焦りは禁物です。プロに一任するのではなく、正しい知識を蓄え、「自分で選択する」ことを意識して、将来設計をしていきましょう。ファイナンシャル・プランナーの岩城みずほ氏の書籍『やってはいけない!老後の資産運用 ダマされないための究極のコツ』(ビジネス社)より一部を抜粋し、解説していきます。

ネギを背負いトコトコ来てくれたカモを逃がすわけない

◆こんなセミナーには行ってはいけない

 

「人生100年時代」というフレーズを目にする機会が増えたせいか、お金のセミナーが流行っています。人気FPが人寄せパンダをする無料セミナーや、綺麗(きれい)な若い女性を講師に据えたセミナー、お土産付き、お茶とお菓子付きとさまざまなセミナーが大盛況です。相変わらず不動産投資のセミナーも多いようです。

 

これらの経費がどこから出ているのかを考えれば、売りたい金融商品があるのだろう、使ってもらいたいサービスがあるのだろうと想像できます。ですが、皆さん、「まあ、聞くだけなら、タダだし」と軽い気持ちで行ってしまうようです。

 

でも、相手はプロです。ネギを背負ってトコトコ来てくれたカモをそう簡単に逃すわけはありません。「相手が何倍も上手だということをお忘れなく」です。

 

しかし、このように言ったり書いたりすると、「無料でも良心的なセミナーもあるではないか!」と、お叱(しか)りを受けることがあります。もちろんそういうものもあるでしょう。でも、良心的なものでも、セミナーを開催する目的は必ずあるということは理解しておいたほうがよいと思います。その上で、よいと判断できるものはもちろんご参加なさればいいでしょう。

 

「無料の投資セミナー」怪しくない?
「無料の投資セミナー」怪しくない?

「とりあえず商品を買って投資を始める」でいいの?

私は、以前、「長期投資を普及する」という目的で、ある会社3社で開催するセミナーのコーディネーターをボランティアで2年ほどお手伝いしていたことがあります。生活者が資産形成をしていくのに「長期投資」という考え方は大切ですから、意義ある活動だと思い、協力していました。

 

しかし、会社からセミナー運営費用が出ている以上、会場では、参加者に各社のパンフレット等を配ります。大変よいお話が聞けるので、参加者は感動して1万円ずつ3社の投信を購入し、積立投資をスタートします。

 

私はそのうち、FPとしてはちょっと違うのではないかなと考えるようになりました。長期投資の意義を伝えるのは大切なことですし、大いに協力をしたい。でも、まったく投資をしたことがない人が、商品から入るのはどうなのだろうと思い始めたのです。

 

自分がどのくらいリスク商品を持てるのかなど、商品を買う前に考えることがあります。もちろん、すでに投資をスタートしていて、自分のポートフォリオ(資産配分)が決まっている、「コア・サテライト」という考え方を理解している人ならまったく問題ありません。

 

ちなみに、コアというのは中心になる存在のことで、「サテライト」は衛星、つまり、コアの周りの部分です。資産全体を中心と周りの部分に分けることで、合理的な運用をするという考え方ですが、もともとは年金運用で用いられていて、個人の資産運用にも応用されるようになりました。

 

個人の運用では、一般的には、コアでは低コストのインデックスファンドを長く持ち続けて「守り」の運用をし、サテライトの部分でアクティブファンドや個別株などを持ってリターンを向上させるため、「攻め」の運用をするという方法が紹介されています。

 

このような考え方を知っていてポートフォリオを組むのと、何も知らずにセミナーを聞いて、一万円ずつ3本のファンドを買うというように商品から入るのはやはり違うと思うのです。

 

これは、この会社の商品を否定しているのでも、アクティブファンドを否定しているのでもありませんので、そこは誤解なきようお願いします。私は、「商品選択は最後の段階だ」と考えているからです。

 

いやいや、そんなことはない、投資はとりあえず商品を持って始めることこそが大切だという人もいるでしょう。でも私は、そうは考えませんので、このセミナーのお手伝いをするのはちょっと違うかなと思うようになりました(結局、最後は、なんとなく苦い感じの卒業となりましたし、なかなかこのような話をする機会もないので、たくさんの方に誤解をされたままで辛い思いもしていますが)。

 

何が言いたいのかというと、セミナーで情報を得るのは非常に有意義ですが、セミナーの意図を理解し、その上で、自分で判断することが大切だということです。

「紹介手数料を支払いますよ」業界の裏事情は…

私は、ある証券会社が主催している、非常に評判のいい無料のセミナーに行き、その後、なんども社債のセールスの電話がかかってきたことがあります。個人情報を提供することで、セールスにつながる場合もないとは言えません。

 

「無料のセミナーは絶対にダメ」と一括(ひとくく)りで言っているわけではありませんので、誤解しないでくださいね。

 

また、高額な受講料を取っても内容に偏(かたよ)りがあったりするもの、金融商品の購入やサービスが目的のものも多くありますので注意が必要です。

 

さて、情報提供をするこちら側の事情もお話ししましょう。実は私の元へも、FPになった当時からありとあらゆるお誘いがありました。オフショアの海外ファンド、外資の貯蓄型生命保険、海外不動産、サブリースの不動産投資などなど。

 

「買いませんか」ではありません。「お客さんを紹介してくれませんか。紹介手数料を支払いますよ」「成約となればキャッシュバックするので組みませんか?」というものです。提示された手数料率はかなり高かったように記憶しています。

 

現在は、フィデューシャリー・デューティー宣言をして金融庁へ届け出て、HPにも掲載していますから、さすがにそのような誘いも減りましたが、まだ皆無ではありません。依然、彼らは鼻息荒く、カモを懸命に探しているのです。

 

ちなみにFD宣言は、専門家としての知識と良識を持って、もっぱらに顧客の利益のために働くということを宣言することです。利益相反取引を排除し、合理的報酬で顧客のためにベストを尽くすということになりますから、いくら誘われてもお断りします。

 

 

岩城 みずほ

ファイナンシャル・プランナー/CFP認定者

 

やってはいけない!老後の資産運用 ダマされないための究極のコツ

やってはいけない!老後の資産運用 ダマされないための究極のコツ

岩城 みずほ

ビジネス社

◆ダマされないための究極のコツ! ◆ 2000万円をためるどころの話ではない! あなたの蓄えが狙われている! 正しい老後の資産運用をおしえます! 50代が資産形成のラストチャンス! 60代70代はいかに資産を守るべき…

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