預金額2千万円の女性、セミナーで老後資金不足を指摘され…

「老後資金が足りない」「年金じゃ生活できない」…不安を煽る報道に、疲弊する人々。資産形成において焦りは禁物です。プロに一任するのではなく、正しい知識を蓄え、「自分で選択する」ことを意識して、将来設計をしていきましょう。ファイナンシャル・プランナーの岩城みずほ氏の書籍『やってはいけない!老後の資産運用 ダマされないための究極のコツ』(ビジネス社)より一部を抜粋し、解説していきます。

「複雑なもの」「内容を理解できないもの」は選ばない

◆マネーリテラシーを身につけよう

 

老後に向けた資産形成をするなかで、一発当てる銘柄を選ぼうとしたり、海外不動産投資に賭けようとしたり、また、本気で宝くじを当てることを狙(ねら)っているという人がいます。

 

もちろん自己責任ならいいのですが、老後の安心のためにということならば、考え方を変える必要があります。仮に、儲かる銘柄を当てたとしても偶発的な要素が非常に大きいと思いますし、そんな投資を続けていたら、いつかは大きく資産を減らすことになりかねません。

 

また、宝くじに当たるかどうかは「運」のみに左右されます。投じたお金(宝くじを買った代金)は、株式に投資をするのとは違い、なんら実体としての裏づけのない偶然性に賭けるにすぎないのです。

 

投資で「ハイリスク・ハイリターン」という言葉があります。リスクというのは株価などの価格の変動のことです。どうなるかわからない不確実性が大きいほど、リターン(収益率)も大きいということですが、宝くじは、「ハイリスク・ノーリターン」。リスクに見合うリターンを得ることはできません。よっぽど「運」のいい人がいるにはいますが、年末ジャンボ宝くじの1等に当たる確率は1枚につき1000万分の1ということです。

 

また、金融商品は、必ずしもリスクとリターンのバランスが取れているわけではなく、コストが高いゆえに結果的にハイリスク・ローリターンになるものもあります。下手をすると、大切な老後資金を減らしてしまうことになりかねません。お金を無駄に減らさないように注意しながら、安定的に資産形成をしていきましょう。

 

FP(ファイナンシャル・プランナー)としては不都合なことではありますが、一人ひとりがマネーリテラシーをしっかり身につければ、FPはいりません。私は、本気でそう思っていて、運用のスタートアップのときに1〜2回相談に来ていただいたり、何か迷ったり困ったりしたときにご相談くださるのはいいけれど、基本的には自分で管理ができるようになってほしいと思っています。

 

「お金のことは、自分で何とかしなくてはならない大切な問題だから、一人ひとりがお金についての正しい知識を身につけてくださいね」という気持ちです。ですから相談に来た方や勉強会では「解決策」と一緒に「杖(つえ)」もお渡ししています。「知識の杖」です。「魔法の杖」ではありませんが、知識としてきちんと身につけておけば、大切なお金を失わないですみますし、長い人生を安心して暮らすための準備をしていくことができます。本記事も同じように、皆さんに「杖」をお渡しするつもりで書いています。

 

お金は、決して、人生の中で一番大切なものではないですし、お金があれば必ず幸せになれるというわけでもありません。けれど、生きるためにお金は必要不可欠ですし、お金があることによって人生の自由度が大きく増すのは確かです。特に老後の豊かさと安心は、ある程度お金で買えるものでしょう。

 

「お金」は、単なる「手段」です。「安心」や「快適」や「幸せ」や「満足感」と交換できる「手段」なのですから、できるだけシンプルに扱えばいいのです。複雑なもの、内容をよく理解できないものは、それだけでアウト。手を出すべきではありません。これも重要なマネーリテラシーの一つです。

「1250万円を15年間で2500万円にしましょう」

◆複雑な保険を買って老後資金の不足を埋めようとしない

 

これからリタイアメントまでに老後資金を少しでも増やしておこう!と決めたとき、気をつけたいのは、保険を含めた金融商品をすぐに買わないことです。

 

日本人は保険がとても好きです。保険の加入者は相当多いのですが、もしものときの保障だけでなく、「お金を貯める」といえば、「保険」を思い浮かべる人もまた多いのです。しかし、特に今売れ筋の外貨建て保険は、「複雑なもの」の代表格です。私のところにご相談に来られる人で、自分の買った外貨建て保険の商品内容、リスクなどを正確に理解している人はほぼいません。

 

先日、お金の相談にこられた53歳の女性Aさん(自営業)は、20代で独立して以来懸命に働き、堅実な生活を送ってこつこつと貯金を増やしてきました。現在の預金額は2000万円です。しかし、加齢とともに体力的な限界を感じるようになり、この先、いつまで仕事ができるのかと考えるようになりました。

 

同時に、最近よく耳にする「人生100年時代」というフレーズにも不安を搔(か)き立てられます。長い老後、お金が持つのか心配でした。

 

そんなとき、よく利用する生活雑貨の通販サイトから無料マネーセミナーの案内がありました。お茶とスイーツを頂きながらマネープランについての話を聴けるとあり、Aさんは、気軽な気持ちで参加しました。

 

ちょっと余談ですが、最近は、金融業とは関係ない会社が金融事業を始めたり、提携したりすることも増えています。また、会社の福利厚生でマネーセミナーが開催されて、その後の個別相談で、外貨建て保険を勧められたという相談も少なくありません。

 

さて、このAさん、初めて聞くお金の話は勉強になり、あっという間の1時間でした。セミナー後は、無料でFPが相談にのってくれました。これまで投資をしたことがないというAさんに、「保険なら元本保証があるので安心ですよ」と、二つの保険を提案してくれました。

 

「保険なら元本保証があるので安心ですよ」
「保険なら元本保証があるので安心ですよ」

 

一つは、「このままでは、老後に約1250万円の資金が不足するので、15年間で増やしましょう」と、1250万円の一時払い保険料を支払い、倍の2500万円にするという「① 米ドル建て変額保険」。もう一つは、「② 米ドル建ての介護終身保険」です。この保険は、「公的介護保険制度の要介護2以上の状態になったとき」など、支払い事由にあてはまると保険金が支払われます。介護状態にならなければ死亡時に保険金がでます。

 

おひとりさまのAさんは、死亡より心配なのはむしろ、病気やケガで介護状態になった場合だと切々と説かれたそうです。どちらも、金利の低い円建ての保険に代わって、熱心に売られている外貨建て保険です。保障と貯蓄がパッケージになっているもので、「死亡リスクに備えながらお金が貯められる」という触れ込みですが、コストが非常に高いので、その分、運用成果を損なってしまいます。お金を増やしたいAさんには向かない商品です。

 

でも消費者にとってコスト高で不利なものは、売るほうにとっては手数料がたくさん入る売りたい商品ということなのでしょう。

 

また、このFPがいう「保険なら元本保証があるので安心ですよ」も正確ではありません。元本保証されているのはあくまで外貨ベースです。保険金受け取り時に契約時より円高になっていれば元本割れする可能性がありますし、一定期間内に途中で解約すれば、元本割れします。Aさんは、これらを理解してはいませんでした。渡された保険設計書やパンフレットを見てもチンプンカンプンで、言葉も難しいし、読む気さえ起こらなかったといいます。

 

しかし、このFPは何を根拠に、「1250万円を15年間で2500万円にしましょう」などと言えるのでしょうか。設計書も、為替のリスクや運用成績がふるわなかった場合などまったく考慮されず、確実にお金が増えるというシミュレーションでした。つまりバーチャルです。ずいぶん無責任な提案です。また、53歳のAさんに介護保険を勧めるのもどうかと思います。

 

厚生労働省の「介護費給付実態調査」によると、女性の介護費の受給割合が2人に1人(45%)になるのは、85歳以降です。Aさんが要介護認定を受ける可能性が高まるのは32年後ということになります。また、Aさんと同じ1965年生まれの女性の2人に1人が死亡するのは97.5歳ですから、死亡保険金を受け取る可能性が高まるのも44年以上も先のことです。かなり遠い未来のことです。その頃、お金の価値も社会保障制度の要介護認定の仕組みも変わっている可能性があります。

 

民間の介護保険は、支払い要件が定められています。高額な保険料を支払い、もしものときに備えるより、いつでも自由に使える貯蓄を増やしていったほうがより安心です。そして、なるべく長く健康でいられるように病気の予防に努めることが大切です。

 

私は、「未来の心配のために、利回りを何十年も固定してしまうより、税制優遇のある口座で、低コストのインデックスファンドを使って適切に長期分散投資をしていくほうが合理的ですよ」と伝えました。

超低金利時代に「保険でお金を増やすのは夢の話」

先のようなセールストークに心を動かされたとすれば、自分のお金を守るためにもしっかりと知識を身に付けることが必要です。そもそもの大きな間違いは、不安を解消するために金融商品を買って対処しようとすることです。自分だけ、特別によい商品を紹介してもらったという気持ちなのかもしれませんし、不安を解消するために対策を講じたと安心感を覚えるのかもしれません。

 

しかし保険に入ったからといって病気の罹患率(りかんりつ)が下がるわけではありません。保険は貯蓄もできて一石二鳥などと思っているとしたら、今の低金利時代、「保険でお金を増やすのは夢の話だ」ということを知ってください。

 

今感じている経済的な不安への対処は、しっかり貯蓄をしていく以外にはありません。正しい方法で貯めて増やしていくことです。そのためには、長期の契約で大きな固定費となる民間保険の保険料は必要最小限に抑え、なるべくたくさん貯蓄をすることが必要です。「不安」に対し、すぐに「商品」を選ぶのは間違いです。介護のために、老後のためにといった目的別に「お金を色分けする発想」もやめましょう。

 

また、「ゴールベース資産管理」という手法があります。自分の思い描く人生のゴール(夢や目標)を決め、その実現に向けて運用プランを立てるというものです。人生相談をして、金融商品も勧めてもらえるわけですが、これにも注意が必要です。

 

効率的なお金の貯め方は、何歳だろうと、どんな夢や目標があろうと同じだからです。あなたの悩みに応じて、特別な方法があるなどということはありません。この「ゴールベース」の考え方は、セールストークですので注意してください。

 

資産運用に必要以上の目的を持つ必要はありません。今の収入を全部使わず、将来のために、毎月決まった貯蓄額を淡々と積み立て、運用していけばいいのです。必要が生じたら、その都度取り崩せばいいのですから、特段、目標値(ゴールの金額)を設定する必要はないでしょう。

 

 

岩城 みずほ

ファイナンシャル・プランナー/CFP認定者

 

ファイナンシャル・プランナー
CFP認定者

慶應義塾大学卒。NHK松山放送局、フリーアナウンサーを経て、FP資格を取得。特定の金融商品等に荷担することなく個人の家計相談、セミナーなどを行う。日本経済新聞社、東洋経済オンライン、毎日新聞「経済プレミア」、マネー現代(講談社)、マネーの達人等で執筆中。

著者紹介

連載やってはいけない!老後の資産運用~ダマされないための究極のコツ

やってはいけない!老後の資産運用 ダマされないための究極のコツ

やってはいけない!老後の資産運用 ダマされないための究極のコツ

岩城 みずほ

ビジネス社

◆ダマされないための究極のコツ! ◆ 2000万円をためるどころの話ではない! あなたの蓄えが狙われている! 正しい老後の資産運用をおしえます! 50代が資産形成のラストチャンス! 60代70代はいかに資産を守るべき…

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