2016年の大統領選挙当時に戻った米国株式市場
景気対策の進展がはかばかしくないことを嫌気
■23日のNYダウは前日比582.05米ドル安(▲3.0%)の18,591.93米ドルで引けました。前回の大統領選挙でトランプ氏が勝利した2016年11月8日の18,332.74米ドルとほぼ同水準となり、その後の上昇分をほぼ失いました。米連邦準備制度理事会(FRB)が、借入コストの抑制のために米国債を無制限に購入するなど大規模な金融緩和策を発表したものの、米議会で新型コロナウイルスの景気対策法案が進展しなかったことが嫌気されました。2月12日の史上最高値からのNYダウの下落率は▲37.1%と大きな変動となっています。
過去にも大きな変動局面があった
1990年以降、VIX指数が40を超えたのは今回が8回目
■米国株式市場は、過去にも大きな変動局面を経験しています。変動が大きくなる背景には投資家の心理のブレ、恐怖心も要素として指摘できます。こうした投資家心理のブレを示す指標の1つとしてVIX指数があります。下図に示すように、投資家心理が落ち着いているときは20以下で推移することが多いのですが、市場が不安定化すると大きく上昇します。今回のコロナ・ショックでは82.69とリーマン・ショックを超える数値となりました。ここでは40を超えた局面をチェックしましたが、過去7回ありました。
投資家心理は時間の経過とともに落ち着きを取り戻す
■過去7回のVIX指数40超の局面では、その後の株式リターンは3カ月後で約3%程度、6カ月後で約8%程度と概ね落ち着きました。今回、VIX指数は3月16日にリーマン・ショックで記録した80.86を上回り、1990年以降で最高の82.69を記録したことから、過去と同様の時間軸で落ち着きを取り戻すと期待するのは難しいかもしれません。参考となるのは、VIX指数が80を超えたリーマン・ショック時しかありませんが、金融システムが大きく毀損する中でも徐々に落ち着きを取り戻しました。今回はリーマン・ショックとは異なり、ウイルスが原因であり、企業などの経済活動への影響が大きいのが特徴です。金融政策は企業の信用力をサポートすることが可能で、財政政策は各国・地域の協調を伴いながら、世界景気を浮揚させることが可能です。時間はかかるかもしれませんが、市場が最悪期を脱することは可能と考えられます。
■とは言え、米国ではカリフォルニア州やNY州などで外出が制限されるなど、感染は拡大しています。新型コロナウイルスが海外からの帰国者によって持ち込まれるという新たな課題が浮上し、中国を含む多くの国・地域で入国を規制する動きが一気に広がっています。1-3月、4-6月の経済への打撃は避けられません。
■ただし、年後半は景気の持ち直しが予想されます。中国では積極的な投資拡大を進める方針で、4-6月にリバウンドが期待されます。一方、米国、欧州は足元で感染が拡大していることから4-6月にかけてはどの程度の悪化で食い止められるかが重要です。各国・地域で積極的な金融・財政政策が年後半の景気回復をけん引すると考えられます。楽観はできませんが、足元で景気に対する自信と期待が回復するためには、効果的な治療薬の登場と新型ウイルスの感染のピークアウトが待たれます。VIX指数は23日現在61.59と依然高いものの若干低下しました。グローバルベースで新規感染者数が減少に転じれば、いったんは安心感が広がる可能性があると思われます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『大きな変動局面を乗り越えてきた米国株式市場』を参照)。
(2020年3月24日)
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