「人生100年時代」という考え方が一般化してきた昨今。老後2000万円問題も追い風となり、資産形成の方法に不安を抱く人も多い。収入アップのための「起業」や「副業」が注目されてはいるものの、リスクを恐れ、なかなか一歩を踏み出せないのが現状だ。しかし、株式会社GEAR代表取締役・有薗隼人氏は、書籍『働きながら小さく始めて大きく稼ぐ 0円起業』(クロスメディア・パブリッシング)にて、0円からでも起業できること、そして副業を持つ重要性を説いている。本記事のキーワードは「世代格差」。

高齢者は「2003万円の金融資産がある」という事実

◆世代の格差はチャンスでもある

 

読者のみなさんが、最もリアルかつシビアに直面されているのが「世代間格差」かもしれません。現在、就職率は上向き傾向で、新卒採用は売り手市場になっていますが、少し前の就職氷河期の凄まじさは大変なものがありました。

 

年金制度なども、私たちが高齢者になったとき、どうなっているかはまったくわかりません。孫世代は祖父母世代よりも公共サービスからの受益や支払う負担の合算で、1億円も損をするという研究結果もあります。由々しき事態で、正直腹も立ちますが、とはいえ人口減少社会に突入している日本において、行政の力で今後この格差が是正されると考えるのは過度な期待であると思います。ですから、この格差についても、ビジネスの力で乗り越えるのが正解なのだろうと私は考えます。

 

本連載にて触れてきたように、格差のあるところには、チャンスも隠されています。

 

総務省の全国消費実態調査の結果をベースに、日本経済新聞社とみずほ総合研究所が算出したデータによると、世帯主が無職で65歳以上かつ、2人以上の世帯における金融資産の平均値は2003万円だそうです。

 

この数字を、羨んだり、ずるいと感じたところでしょうがありません。怒りから世代間の断絶が起きるようなことになったら、社会情勢が悪化するだけです。そうではなく、上の世代が自分たちよりもお金を持っているのであれば、それが金の鉱脈だと考えればいいのです。

 

要するに、自分の能力を、高齢者向けにアレンジすることができれば、同世代や下の世代に向けてビジネスをするよりも、儲かる可能性があるということです。

 

たとえば最近は、お店に来ることのできない高齢者の方相手の出張ネイリストの方も増えているそうです。ファッションが好きで、ネイリストや美容師、スタイリストなどになった方は、自分の世代がかっこよく、かわいく、美しくなるための知識や技術を身につけてこられていると思うのですが、高齢者が喜ぶメイクやデザイン、知識や会話のネタなどを意識的に伸ばして、高齢者向けのサービスに特化するなどできれば、一気に差別化が図れるように思います。和風で雅な図柄のネイルとか、受けると思うのですがいかがでしょうか。

 

世代格差をどう受け取るか?
世代格差をどう受け取るか?

「やまわけキッチン」から学ぶ高齢者ビジネス

大阪府堺市の泉北ニュータウンの一角にある茶山台団地には、2018年11月にオープンした「やまわけキッチン」という、イートインもできるお惣菜屋さんがあり、毎日住人のみなさんで賑わっているそうです。

 

丘陵地にある団地から最寄り駅までは徒歩20分で、そこまでスーパーや飲食店やコンビニもなく、すでに野菜などの移動販売を行うなど、茶山台団地は買い物支援等の先進的な取り組みをしていたそうですが、スーパーや飲食店の不足を補うだけではなく、移動が難しい高齢者の住人のコミュニティを活発化される機能もあるようで、見事な施策だと思います。

 

この「やまわけキッチン」の事例のように、高齢者のみなさんにも、生物として避けられない問題とはいえ、自由に出歩けないなど、さまざまな問題があります。若い世代が自分からそこに飛び込むことで、自分の世代格差も、高齢者から見た世代格差も埋められるビジネスチャンスがあるのではないでしょうか。

 

たとえば出張ネイリストなども、複数の団地と協定を結んで、1か月に一度、その団地の集会所などでネイルができるようにしてもらい、複数箇所を巡回する――といったことができれば、一気に数百人、数千人単位の潜在顧客を獲得できます。近頃は出張理容・美容のサービスも多いようですが、近隣の登録者にネイルや美容などの出張サービス希望者を表示し、マッチングできるアプリなどがあっても面白いと思います。

 

お金がなくても体力はある若者が、お金はあるけど体力のない高齢者に会いに行ってサービスを提供する。どちらも不足しているものがあり、それを埋め合う交流の流れができたら、それはとても美しいビジネスになることと思います。

「自分のスキル」が高く評価される場所を探そう

また、世代間格差において、大きなポイントになるのは、世代ごとに価値判断基準が異なる点だと思います。

 

自分の武器を棚卸しするときは、自分の特徴を、できるだけ多角的な視点で(それこそ友達や家族に聞いてみたり)評価してみてください。自分では大したことがないと思っている部分が、上の世代から見ると、大きな価値を持っていることもあります。

 

モノで考えてもらうとわかりやすいと思うのですが、あなたの家に祖父母世代の古い本があったとします。その本は、あなたから見ると特に価値がないものでも、専門的な古書店の店主や、その顧客から見たら、何十万円という価値があるかもしれません。

 

当然反対のケースもあるでしょう。最近だとメーカーにこだわらなければ、50型以上のかなり大きなテレビが5、6万円くらいで購入できます。でも、そのテレビに30万円くらいの価値を感じる高齢者の方は普通にいるのではないでしょうか。

 

当然ながら、詐欺的な転売をしろという話ではありません。でも、この「大型テレビ」が、あなたの「スキル」に置き換えられる可能性は十二分にあるわけです。仮に、あなたがバリバリのウェブ制作会社に入り、中の下~下の上くらいに収まるウェブサイト制作のスキルを持っているとしましょう。

 

その武器を活用してビジネスをする場合、まずスキルを上げていくための努力も大切ではあるのですが、売る場所を考えるだけで、引き合いが変わってくるかもしれません。知っている人からすれば、安い大型テレビやウェブのスキルは珍しいものではありませんが、それが高齢者のコミュニティになれば話は別、となるかもしれないわけです。

 

自己発信やコミュニケーションを求める高齢者の方は、少なからずおられるように思います。そんな方々にとって、わざわざ自分のサイトをつくるという選択肢は頭にないかもしれません。でも、目の前に「私がつくりますよ」と提案したら、やってみたいと思う方もおられるのではないでしょうか。

 

そこで、最新のスキルがなくても、見当違いの質問などをされても、懇切丁寧に対応することなどを武器にできれば、同世代の人や業者よりも、サイト制作のスキルを高く買ってもらえる可能性は結構あるように思います。

 

渡辺和子さんのベストセラー『置かれた場所で咲きなさい』は200万部売れたそうで、素晴らしい書名だとも思います。また、置かれた場所でうまく咲けない人の理由が、本人の努力や気配りの不足であることもかなりあるでしょう。でも、置かれる場所を変えることで、より大きな花を咲かせることだってできるはずです。

 

私がこの連載を書いていて驚いたのが、ビジネスで成功することができれば、格差に抵抗できるということです。格差は、ビジネスの武器にすることができるとは言っても、好ましいものではありません。しかし、そんな格差を是正するための武器が、ビジネスであるわけです。何だか禅問答のようですが、副業や起業に興味がある方の背中を押してくれる事実だと思います。

 

 

株式会社GEAR 代表取締役

有薗 隼人

 

働きながら小さく始めて大きく稼ぐ 0円起業

働きながら小さく始めて大きく稼ぐ 0円起業

有薗 隼人

クロスメディア・パブリッシング

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