大学受験のなかでも最難関とされる医学部は、現役合格が難しい学部とされています。今回は、医学部の現役合格率ランキングから、医学部合格への道筋を見ていきましょう。※本連載では、個別指導学院フリーステップなどを展開する株式会社成学社の入試情報室長の藤山正彦氏が、大学・学部選びの様々な視点を解説していきます。

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    浪人するのが当たり前!?「大学最難関」の医学部

    ここ数年の就職市場の好転も追い風となり、国際系、経営・経済系の人気が上昇しています。私立大学の定員厳格化の影響も加わり文系分野が難化するなど、時代によって専門分野による難易度の波はあるものですが、そのなかで今も昔も最難関であり続けるのが「医学部医学科」です。

     

    医学部医学科は、私立と国公立で授業料の差が大きいことでも知られています。正確いうと、国公立はどの学部でも授業料年間53万5800円(2018年度)が基本で、加えて実習費が4~15万円ほどかかる大学もありますが、それでも最高で年70万円ほど。一方私立は最安値の国際医療福祉大でも年間300万超、川崎医科大は788万円ほどになりますので、6年間で国公立との差は4000万を超えることになります。

     

    そのため国公立に人気が集中することになり、各大学の最難関学部となっています。大学入試センター試験と2次試験いずれも科目数が多く、別問題が用意されているケースもあり、難易度も高くなっています。

     

    近畿圏の医学部医学科の、入学者に占める現役者数ですが、[図表1]のように一番現役率が高い京都大学でも57%で、多くの大学は現役率のほうが低くなっています(公表していない滋賀医科大学は浪人だけでなく再入学の学生も多く、筆者が入学式を見た感じではおそらく現役生は4割程度だと思われます)。

     

    「大学の実力2019」中央公論社を元に、株式会社成学社が作成
    [図表1]近畿圏医学部医学科現役入学率ランキング 出所:「大学の実力2019」中央公論社を元に、株式会社成学社が作成

    「中高一貫の私立高校」が医学部受験では圧倒的に強い

    以前、NHKの夜11過ぎのニュース番組を担当していたお天気キャスターが、センター試験前の放送で自分が5回もセンター試験を受けた(つまり4浪した)ことを紹介していましたが、受験していたのは医学部だったようです(結果的に昭和音楽大学に進学したそうですが、卒業後気象予報士試験に合格していますのでやはり、ただ者ではありません)。

     

    なかなか現役で合格するというのは難しい分野なのですが、では、医学部に現役合格できる「高学力生」を育て上げた学校とはどのようなものでしょうか。2018年度の実績値をもとにランキングを作ってみました。現役合格数を卒業生数で割った値で並べています[図表2]

     

    出所:「サンデー毎日」2018年4月15日号を元に株式会社成学社が作成
    [図表2]現役合格率ランキング 出所:「サンデー毎日」2018年4月15日号を元に株式会社成学社が作成

     

    ■1位 兵庫県 灘高校

    浪人を含むと4割ほどが国公立の医学部です。それ以外の大半も東大が京大に合格しています(「国公立医学部+東大+京大」の人数は学年の9割近くを占めます)。灘高の先生から聞いた話ですが、校内のネットワークがダウンした時、生徒が自主的に接続機器のプログラムを書き直して復旧させたそうです。簡単にあきらめない、わかるまで調べるという文化が共有されているようです。

     

    ■2位 愛知県 東海高校

    あの、ほぼタレント化した予備校講師の出身校ですが、東大ランキングにも登場する中京地区の最難関校です。名古屋大学医学部での圧倒的なシェアで2割近くが現役で国公立医学部合格。卒業生数が灘の2倍近くですので実数では全国一位です。

     

    ■3位 福岡 久留米大附設高校

    こちらは九州大学に20名という大量合格を含む55名、現役でも33名という数値です。男子は寮がありますから、福岡だけでなく九州全域から優秀生を集めてのランクイン。5位のラ・サールと合わせると九州大医学部の約3割(定員111名)を占めていることから、九州のこの2強が実績を分け合っている状況がわかります。長崎大医学部など九州の医学部が難しいのはその影響でしょう。

     

    ■4位 愛媛 愛光高校

    もとは男子校で2002年から共学化しましたが、寮は男子のみ。それでも首都圏入試・大阪入試で全国から優秀生を集めてのランクインです。「愛光医会」という愛光出身の医師によるOB組織もあるほど伝統的に医学部に強いです。愛媛県でそれに続く難関高校といえば旧制松山中学だった県立松山東高校ですが、現役で8名(2.3%)と大差がついていますから、愛媛では独走状態です。

     

    40年ほど昔「灘→ラ・サール→愛光」と飛行機や鉄道を使っての受験ツアーである「西の御三家巡り」を行っていた学習塾もありましたが、今日では逆に愛光中の方が大阪や東京で会場を借りて「出張入試」を行っています。

     

    ■5位は 鹿児島 ラ・サール高校

    7割近くが寮生であるこの学校は、他学年も混ぜた8人部屋という毎日合宿状態が特徴で、新入学生もいつの間にか自然と自主的に勉強する姿勢が身につくというわけです。寮生活の影響で実家に帰ることを考えなくなるのか、進路先も全国に散らばるのが特徴です。芸能人であるラサール石井はここのOBだというのは有名ですが、大阪住吉区の出身だそうですから彼もこの寮で学んだことでしょう。

     

    ■6位 北海道 北嶺高校

    こちらも寮のある男子校です。寮では夜間も講習会が開かれていますが、加えて現役医学部生(または院生)の「チューター」が20名以上在籍し、勉強のサポートをしてもらえます。1学年100名強、(2018年卒業生数123名)と規模の小さい学校ですので、チューターの人数を見ればいかに手厚いかがお分かりいただけるでしょう。

     

    つづいて東京の桜蔭、筑波大駒場、兵庫の白陵、京都の洛南と都市部の学校が続きます。ご覧のようにベスト25まで見ますと、国立大付属を除いて公立高校は入っていません。

     

    データだけ見ると、6年一貫校や寮を併設している学校が多いですね。中学時代の学習や共同生活によって身に着ける、生活習慣の重要性も見えてくるような気がします。特にこれから中学受験というご家庭は、遠隔地であっても寮のある学校に入学させるのも一つ作戦として有効だといえるでしょう。

     

    今回は医学部医学科の現役合格ランキングをもとに進学校研究をしましたが、ランクインしていない中学・高校に在籍している場合でも、進学校の方法を研究し、自分の生活に取り入れることで、「高学力」を身に着けることができるはずです。身の回りに進学校在籍者や出身者がいれば話を聞いてみるといいでしょうし、そうでなくても合格体験記を読むことで、そのヒントが得られると思います。

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