社内の役員や従業員組織などが事業を承継するMBO(Management Buy-Out)、EBO(Employee Buy-Out)も広義のM&Aであり、事業承継において活用されるケースがあります。その基本的な仕組みを見ていきましょう。

ファンド等が介在するケースが一般的

オーナー社長の親族に後継者がなく、経営陣や従業員組織が、オーナーから株式を取得するケースがあります。いわゆるMBO(Management Buy-Out)、EBO(Employee Buy-Out)です。
 
これは、まったく関係のない他人に会社を譲り渡すよりは、創業以来苦労を共にしてくれた現在の経営陣や、従業員の組織に株式を譲渡するほうがよいという考えがベースにあります。ただ、サラリーマンの役員や社員は資金準備が難しいため、後継者の能力や事業の将来性などを担保にして、金融機関の融資や投資会社の出資等を受ける場合もあります。

 

MBOやEBOを単独で行う事例はほとんどなく、役員の資産蓄積、事業承継ファンド、プライベートファンド、後継者役員がタイアップして買っていくといったパターンがあります。
 
基本的には、投資家がお金を集めてきて、配当を受け取り、3~5年ぐらいの期間で売り抜くのがほとんどです。MBOの典型的な手法を見ると、次のような流れになります。
 
(1)後継者とファンドなどが出資して受け皿会社を設立する
(2)金融機関が受け皿会社に融資する
(3)受け皿会社が経営者から株式を買い取る
(4)子会社化、または「吸収合併」する

MBO向けの融資制度も増加

実際のMBOでは、「合併」を利用します。経営陣が「受け皿会社」を立ち上げ、そこに金融機関から融資を受けます。この受け皿会社がオーナーから株式を買い取る代わりに代金を支払います。そして受け皿会社をオーナーが所有していた会社と合併させる方法です。
 
MBOによるメリットは、以下の通りです。


①親族の後継者難から起こりうる会社の清算という事態を回避できること
②元々会社の役員が大株主になることから、これまでの経営方針が継続されること
③先の①と②によって、従業員の雇用方針が継続されること
 
近年は金融機関などでも、こうした手法での事業継続に融資制度を設けるところが増えてきています。

 

 

本連載は、2012年12月19日刊行の書籍『オーナー社長のための税金ゼロの事業承継』から抜粋したものです。2015年1月1日施行の税制改正は反映されておりませんので、ご留意ください。

オーナー社長のための 税金ゼロの事業承継

オーナー社長のための 税金ゼロの事業承継

編著 GTAC

幻冬舎メディアコンサルティング

事業承継の成功は自社株式を制することにあり ムダな税金を払わずに後継者に事業を譲り渡す。その秘訣は自社の株価を極限まで引き下げることにあった。「一年分のオフィス賃料は一気に払う」「高収益部門を分社化して本体の利…

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