「子どもの教育費は惜しまない」と答える親は7割にも及ぶ(NHK放送文化研究所厳しい将来に備えを―勉強を重視する親たち~「中学生・高校生の生活と意識調査2012」より)。そのような意識のもと、学習塾にかける費用も伸び続け、教育熱の高いエリート家庭にもなれば、年間の学習塾費用は数百万円にもなるという。しかし投資と同様、かけた分だけ成果となるわけではなく、塾選びに失敗し、希望する学校に入られない、というケースは多い。エリート家庭は、どのようにして塾選びに失敗しているのか、その原因を探っていこう。

エリート家庭が選ぶ「個別指導塾」とは?

子どもの塾選びに頭を抱える親は多い。平成28年度に文部科学省によって発表された「子どもの学習費調査」を見ると、年間、学校外の教育に、公立校の場合は小学生で20万円強、中学生で30万円強、高校生20万円弱、私立校の場合、小学生で60万円強、中学生で30万円強、高校生で30万円弱をかけている。学年が上がるにつれて学校での部活動や補習が充実していくので、小学生>中学生>高校生という傾向になるが、日本の受験システムを考えると、受験間近の学年になればなるほど、学習塾の学費のウエイトが高くなることは想像できる。

 

出所:文部化科学省「子供の学習費調査(平成28年度)」より
子どもの学習費 出所:文部化科学省「子供の学習費調査(平成28年度)」より

 

学習塾には、大きく集団塾と個別指導塾の2つにわけられる。1人の講師が20~30人程度の生徒に教える集団塾の場合、1~2万円/月であるのに対し、個別指導塾の学費は、週1コマの通塾で月3~5万円、1年で換算すると、30~60万円になる(※塾比較サイトによる)。個別指導塾の場合、基本的に1コマ=1教科であるので、数教科習わせようとしたら倍々ゲームとなり、さらに夏季や冬季、テスト直前の講習会を加えていくと、1年で百万円越えになるのが一般的だという。個別指導塾を通わせ続けるには、世帯年収の高いエリート家庭でないと難しいといえる。

 

なぜ、個別指導塾の学費は高いのか。その理由は単純に人件費によるものだ。数十人の生徒に対し講師が1人ですむ集団塾と、生徒1~3人に講師が1人の個別指導塾。集団塾の数倍の学費を設定しないと、個別指導塾の経営は成り立たない。

 

では個別指導塾のメリットはなんなのか。それは“指導が個別”であることに他ならない。どこの個別指導塾も「生徒一人ひとり合わせたカリキュラム」を掲げている。集団塾の場合、1人の生徒が理解していなくても、授業は進んでいく。一方個別指導の場合、生徒が理解していなければ、先に進むことはない。生徒の理解を確認してから先に進むから、取り残される心配がないのだ。

 

このように考えると、個別指導塾は最終的にコストパフォーマンスが高い、つまり「高い学費を払っても志望校に合格させられる」と考えることができる。そのため個別指導塾の特徴を理解している親は、集団塾よりも個別指導塾を好む。しかしそこにはクリアしなければならない「高い学費」という壁がある。個別指導塾の支持層は、高い壁を超えることのできるエリート家庭が中心、というのが現実なのだ。

多くの個別指導塾で「受験対策」はできない

しかし個別指導塾に通わせているエリート家庭からは「高い学費を払って個別指導塾に通わせたのに、子どもは志望校に合格しなかった」という声も聞く。その理由を紐解いていくと、塾選びがまずかった場合が多い。

 

ひと口に個別指導といってもピンキリである。生徒1人に対して講師1人という完全な個別指導塾もあれば、生徒5、6人、なかには10人の生徒に講師1人という塾でも「個別指導」をうたっているケースがある。当然“授業の濃度”に差が生じるので、教える生徒が少ない塾の方が良い結果は生まれやすい。

 

また個別指導塾は元々進学塾ではなく、補習塾という意味合いが強い。学校の授業についていけない“落ちこぼれ”が、集団指導では追いつくことができないから個別に対応する、というのが、個別指導塾の原点である。その後、受験戦争が激しくなるなか、有名進学塾の授業についていけない“学習塾の落ちこぼれ”が、進学塾の集団指導では追いつけないから個別に対応する、という形態の個別指導塾が生まれた。

 

つまり多くの個別指導塾が補習塾であり、進学塾ではない。個別指導塾は落ちこぼれを救うノウハウはあっても、志望校に合格させるノウハウが圧倒的に足りない場合が多い。受験を前提とするなら、通わせようとしている個別指導塾が進学塾かどうかの見極めが必要なのである。

 

しかし個別指導塾自らが「うちは補習塾/進学塾です」とうたうことは珍しく、判断は難しいかもしれない。そこで注目すべきは「合格実績」である。進学塾を自負している個別指導塾の場合、「東大に〇〇名合格!」と高らかに進学実績を掲げている。これは「うちは進学塾です」と自信を持ち、進学に対してノウハウがあることの表れだととることができる。

 

しかしここにも落とし穴がある。合格実績は生徒数が多ければ「良く見せること」が可能になる。生徒数の多い“大手”は、当然、合格者数が大きくなるので、実績が出ているように見せることができるのだ。

 

また個別指導塾は、教室間で差が大きい。考えてみれば、個別指導塾は多くの講師が必要となる。プロ講師(=職業として塾講師をしている)であれ、バイト講師であれ、質の高い講師をどこの教室にもバランスよく配置できるだろうか。多くの教室を展開していれば、どうしても進学実績の高い講師が集まる教室と、そうでない教室と差が生じる。個別指導塾を検討する際には、塾全体の合格実績はもちろんのこと、教室ごとの合格実績を確認することが、塾選びで失敗しないためには重要となる。

 

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