1人当たりGDPとは
1人当たりGDPとはGDPの総額をその国の人口で割った数字です。現在1人当たりGDPが少ない国は、5年、10年といった長期的な観点で成長余地があるとも言えます。かつての日本も高度経済成長を謳歌していたときがありました。
これまでGDPを国単位の総額で捉え、人口増加や経済効率の向上といった要因で、GDPが増えていく例を見てきました。一方、GDPは1人当たりGDP×人口と表すことができます。
一般的に1人当たりGDPが大きいほど経済効率が高く、経済的に豊かであるとされ、一般的には10,000ドルを超えると先進国と言われるようです。具体的に、オーストラリアとメキシコの例をみていきましょう(図表1)。
GDPを見ると、両国とも1兆ドルを超えた水準で、ほぼ横並びとなっています。一方、人口はオーストラリアの24百万人に対して、メキシコは121百万人で、5倍もの開きがあります。そこで、1人当たりGDPを見ると、オーストラリアは51,000ドル超、メキシコは9,000ドル台というように、逆に5倍の差となっています。
ただし、今現在1人当たりGDPが少ないということは、今後の成長余地が大きいということです。今、1人3万円しか稼げない国が30万円稼げるようになると、GDPは10倍になります。
一方、現在の日本のように人口が減少すると、1人当たりのGDPが増えなければGDPは減少、すなわちマイナス成長になります。上記の例で、人口の少ないオーストラリアは人口
が少ないことから経済大国にはなれません。米国の人口の10分の1以下のオーストラリアは、1人当たりで米国人の10倍以上稼いでやっとGDPで並ぶことができるのです。
それでは、1人当たりGDP、人口、およびGDPの2020年における予想を見ていきましょう(図表2)。1980年をスタート地点として2020年までにどれだけ増えているかを表しています。
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一番上のGDPから見ると、中国やシンガポールといった国が大きく成長しているのが分かります。そして1人当たりGDPは、中国が39倍、シンガポールが13倍と、これが両国の大きな経済成長を遂げる要因になっているのが分かります。
高い経済成長率がもたらすもの
1人当たりのGDPが、その国の経済効率や豊かさを示しているとご紹介しましたが、高度経済成長を経験した日本の例を検証して見ましょう。1955年からの約40年間で、日本
の1人当たりGDPは概ね40倍となりました(図表3)。前のページで見た中国の1980年~2020年までの40年間の予想と同じ程度の伸び率を日本は経験したこととなります。
この高度成長の過程において、日本は世界第2位の経済大国になりました。日経平均株価は、最高値である38,000円台をつけ、また地価も暴騰して1990年のGDPが449兆円の時に、国土交通省が発表した地価総額は2,470兆円を記録しました。
このように日本の経済が大きく成長している時と、現在の状況を比べて見た場合、大きく異なる点があります。高度成長時の日本の株式のリターンは非常に高く、金利も高く、また日本円も他の通貨に対して大きく上昇しました(図表4)。
経済の状態が良いと、一般的に次のようなことが想定されます:
・預金や国債の利回りが高くなりやすい、
・企業の利益が増加し、株価が上昇しやすい、
・インフレ率が高くなりやすい、
・給料が上がりやすい、
・不動産の価格や賃料が上がりやすい、
・自国通貨の価値が上がりやすい、
・失業率が低下しやすい、
・外国からの投資や移住、企業進出が増えやすい、
・政府の税収が増えやすい、
このように高い経済成長率、すなわち1人当たりGDPの伸びは国民の豊かさの向上につながっています。そして、投資家が今後の中長期的な投資先を選ぶときの判断材料の1つとなります。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識マクロ経済編(4)<1人当たりGDPと高い経済成長率がもたらすもの>』を参照)。
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