「純資産価額方式」の対象ならメリットが激減
「株価がこれほどまで下がるのなら、わが社でも持ち株会社の設立を」 ――そう考えたオーナー経営者も多いでしょう。前回の株価の計算では「便宜上」、持ち株会社設立から3期目、類似業種比準価額方式で計算していますが、実際にはそう簡単にはいきません。
まず、持ち株会社が株式保有特定会社(株式の保有率が25%あるいは50%以上ある会社)かどうかという点が、株価の引き下げに大きく影響を与えます。
株式保有特定会社の株価の評価方式は純資産価額方式となります。こちらの評価方式の場合、子会社の価値増加も織り込まれてしまうため、事業を子会社化した意味がなくなってしまいます。
株式の含み益に対して、法人税相当額42%という枠はあるものの、持ち株会社設立当初は子会社株式自体に含み益はなく、42%という控除枠は使えません。つまり、「持ち株会社」を設立したとはいえ、短期的には株価引き下げの効果はほとんどないといえます。
ただし、事業会社である子会社が、長期にわたって高収益を上げることができれば、自然と株式の含み益も生まれ、法人税等相当額の42%控除が適用されるため、株価引き下げの効果を発揮することができます。
そういった点も踏まえると、本業といえる事業会社の今後の成長に加えて、株式を後継者に渡す事業承継に至るまで、長期間にわたる計画が必要になるということです。
子会社の株式のみならず、不動産など資産全般を管理し子会社に貸し付けるという形態をとったり、保険積立金や貸付債権、投資信託商品、リース資産への投資も行う企業形態とすることで、「株式保有特定会社」から外れる場合には、株価の評価方式も純資産価額方式ではなく、類似業種比準価額方式がとれる可能性があります。
そうすれば、前回ご紹介したとおり、株価を1株あたり4万9300円まで引き下げることも可能となるのです。
株価の上昇を気にせず会社の売り上げを伸ばせる
類似業種比準価額方式でもまた、長期にわたって持ち株会社を運営することで、株価引き下げの効果をより実感できるようになります。子会社の収益が上がっても評価される株価には、影響がありません。
事業承継において、株価の引き下げのための利益の圧縮がもっとも効果的であると先に述べました。もちろん、いくら株価引き下げのためとはいえ、売り上げそのものを抑えるような経営者はいないでしょう。
しかし、持ち株会社を設立すれば、企業の成長と株価の上昇を切り離して考えることができます。そんなメリットを利用するためにも、非上場会社であれば、すぐにでも持ち株会社の設立を視野に入れてみるべきではないでしょうか。