ポイント
政治改革がなければ、トルコの国際収支は危機に瀕する
大きな圧力
2018年8月に通貨危機に見舞われたトルコ・リラは、2019年3月後半、再び大きく下落し、短期インプライド・レートも急上昇しました。この背景には、トルコ政府によるショート・ポジションや資本規制などの影響が絡んでいると考えられます。 足元で市場が大きく変動したのは、地方選挙において現政権であるエルドアン大統領が率いる与党公正発展党(AKP)が特に都市部で支持を失いつつあることなどがあります。 現政権はこの状況をどのように対処するでしょうか? より大衆迎合的な政策を打ち出すのか、それとも、効果的な改革を打ち出すのか?政策の方向性が明らかになるまで、トルコ・リラには下落圧力がかかる可能性があると考えられます。
複雑に絡み合う国益
トルコは新興国においてアルゼンチンに続く2番目の高インフレ国です。トルコのインフレの状況をみる様々な指標は、足元の水準はピークである可能性も示しているものの、経済状況についてはより慎重な見方をもっており、政治的な不透明感は国際収支危機が今後も続くリスクがあることを意味していると考えます。
トルコの経常収支は振れ幅が大きく、昨年後半に黒字転換したものの足元では再び赤字に転落しています。トルコ・リラの下落がさらに大きくなれば、トルコ経済がリセッションに陥る可能性もあるリスクがあると考えられます。
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さらなる懸念
さらに、トルコ経済のもろさは、外貨準備をみても明らかです。足元では輸入のたった4ヵ月分をカバーできる水準です。一方、ブラジルは25ヵ月分、中国は16ヵ月分をカバーできる外貨準備があります。
高まる米ドル依存
さらなる懸念材料としては、米ドル建ての借入れが増加していることです。最近では米ドル建て預金の増加によって相殺されつつありますが、依然として通貨のミスマッチのリスクが残されていることには変わりません。
政治動向に注目
トルコへの投資機会を考える上で、直近の地方選挙の結果はまちまちな材料となりそうです。与党AKPの勢力が弱まっていることを考慮すると、緊急度の高い短期的および構造的な構造改革が打ち出される可能性もあるなど、より市場寄りの環境が整うことも予想されます。
そうなれば、トルコ経済も大きな危機に陥るリスクが回避される可能性が高いと考えられます。
市場については?
新興国で過去に発生した18回の通貨危機の状況をみると、GDPが通貨危機前の水準に改善するまでに要した時間は平均で4~6四半期かかったことが示されています。一方、株式市場をみると、回復局面に入るまでに平均で4四半期間は底ばい状態が続いたことを示しています。
こうした過去の経験則は、トルコ(そしてアルゼンチン)は、GDPおよび株式市場の回復には後少なくとも2四半期はかかる可能性があることを示唆しています。政治的危機の継続や必要な改革が実行されない場合には、経済および株式市場の回復にはさらに時間がかかる可能性もあると懸念されます。
※※市場環境の変動等により、上記の内容が変更される場合があります。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『危機に瀕しているトルコ』を参照)。
(2019年4月17日)
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