子の質問…答えられる?Japanをjapanと書いてはいけない理由

小学校の英語教育が変わります。2020年度より全国的に小学3年生から必修(外国語活動)となり、5年生からは「教科」として扱われる予定です。既に2018年度より移行期間は始まっており、子どもから「英語」に関する質問をされて困った…という人もいるのではないでしょうか。本連載では、高校の英語教諭・大竹保幹氏の著書、『子どもに聞かれて困らない英文法のキソ』(アルク)から一部を抜粋し、もう一度おさらいしたい英文法の基礎と、子どもに教える際のポイントを解説します。 

文法って本当に必要なのだろうか?

今、皆さんの周りには何がありますか。仕事をしているなら、パソコン(PC)、机(desk)、カップ(cup)などがあり、隣には同僚(co-worker)の方が座っているかもしれません。電車でこの本を読んでいるなら、スマートフォン(smartphone)、新聞(newspaper)、学生さん(student)などが目に入るでしょう。私たちの周りは人や物であふれています。

 

人や物には、「机」や「学生」のような決まった呼び方があります。みんなが同じ呼び方をすることで、何について話をしているかが分かるようになっているんですね。こういった人や物のことを「名詞」というのでした。

 

身の回りの物は、形があるので見たり触ったりすることができます。スーパーで売っているリンゴ(apple)は、よく見ると色や形がそれぞれ違うのでしょうけれども、頭で想像するリンゴは、同じようなものになるはずです。決まった形があるから、みんなで同じものを思い浮かべることができるのです。

 

ところが、名詞には決まった形がないものもあります。例えば、愛(love)はどうでしょうか。好きな人にプレゼントを渡すのが愛という人もいれば、誰かを守ることが愛だという人もいるかもしれません。「愛のかたち」は人それぞれなのです。他にも、幸せ(happiness)や平和(peace)など、目に見えないものでも名前が付けられていますが、愛と同じように決まった形があるわけではありませんよね。

 

英語をうまく話すことができなくても、とりあえず名詞を知っていれば相手とコミュニケーションを取ることができます。海外旅行に一度でも行けば、自分が欲しいものを単語で言うだけで買い物や食事くらいなんとかなることに気付きます。すると、「こんなに簡単に英語が通じるなら、文法って本当に必要なのだろうか。むしろ必要ないのではないか」と、英文法の学習に後ろ向きな考えが頭をよぎってしまうこともあるかもしれません。

 

もちろん、買い物など簡単なやり取りであれば、名詞だけでも英語は通じるでしょう。ところが、このような楽なやり方ばかりに頼っていると、自分の意図しないメッセージを伝えてしまうことだってあるのです。

 

Q:次の2つの文は、「コーヒーを1杯注文している」という点では同じですが、伝わるメッセージが微妙に違います。一体どのように違うのでしょうか。

 

①Coffee.

②Coffee, please.

 

ここで気付いてほしいのは、丁寧さの違いです。「コーヒー」とだけ言うよりも、「コーヒーください」と言ったほうが印象が良いのは、日本語でも英語でも同じです。友人とのやり取りならまだしも、初めて会う人や店員さんにはなるべく丁寧な言葉遣いを心掛けたいものです。②の例文のように、名詞の後に~, please.(~をお願いします)を付け加えるだけでも相手の印象がぐっと良くなりますし、英文法を詳しく知ることでそれ以上に丁寧な言い方をすることだってできるのです。

 

「どんな形であれ、言いたいことが伝わればいいのだ」と英語を道具のように乱暴に扱ってはいけません。英語は人の話す言葉です。心を込めてメッセージを伝えるためにも、英文法の力が必要なのです。

“Japan”は「日本」だが、“japan”の意味は…

名詞の中には特別な名前が付けられているものもあります。愛犬には「ポチ」や「ハチ」といった名前を付けますし、土地にも「東京」や「日本」といった地名が付いています。もちろん、私たちにだって名前がありますよね。このような特別な名前や地名を、普通の名詞と区別して「固有名詞」というのでした。固有名詞は、英語を書くときに特別扱いをされます。「英語の文は大文字で書き始めるけれども、それ以外はすべて小文字にする」というのが英語を書くときの基本ルールですが、固有名詞だけは文の途中で使われても、必ず語頭を大文字にすることになっています。

 

例外とはいえ、実はこのルールはとても大切で、大文字と小文字を区別して書かないと英文の意味が変わってしまうこともあるのです。

 

Q:次の文は、本当は「中国」が好きであることを伝えたいのですが、これでは違うものが好きなことになってしまいます。一体どのように伝わってしまうのでしょうか。

 

I like china.

 

国名である「中国」が好きであることを伝えるためには、固有名詞のルールどおりに大文字で書き始めなくてはなりません。

 

I like China.と書いてあれば「中国が好き」ということをうまく伝えることができるのですが、ここでは小文字のchinaになってしまっています。こうなるとchinaは「普通の名詞」だと認識され、「陶磁器」を意味することになってしまいます。

 

すべての固有名詞で同じことが起こるわけではありませんが、書き方のルールをちゃんと守っていれば、このような間違いが起こることはなくなります。大文字と小文字を書き分けることは、私たちが思っている以上に大切なことなのです。

 

実は、Japanも例外ではありません。小文字で書かれたjapanは、なんと「漆、漆器」という意味を持っています。自分のプロフィールを英語で書くときは、「漆器生まれ」にならないように、Japanを大文字で書き始めてくださいね。

子どもに、英語の「名詞」を教えてあげる際のポイント

【名詞の基本】

名詞とは「人や物の名前を表す語のこと」。

 

名詞の種類

普通の名詞:身の回りの人や物など

 例  book(本), student(生徒), apple(リンゴ), piano(ピアノ)

 

決まった形がない名詞:物質や抽象的なことなど

 例  love(愛), hope(希望), air(空気), work(仕事)

 

固有名詞:人の名前や地名など

 例  Tokyo(東京), London(ロンドン), Chris(クリス), Mary(メアリー)

※固有名詞は、文のどこであっても必ず大文字で書き始めます。

 

書き方が特殊な名詞

常に大文字で書く語

● I(私)

●省略語  例  TV(television)、the USA(the United States of America)など

 

大文字で書き始める語

●固有名詞

●月、曜日の名前など  例  Monday(月曜日)、April(4月) 

 

(ポイント1) 名詞はコミュニケーションの基本

 

英単語は知っていればいるほど良いのは当たり前のことですが、特に「名詞」はコミュニケーションの役に立ちます。名詞だけでは失礼な言い方になることもあるかもしれませんが、単語を知らなくて相手に何も伝えられないよりはましです。教科書や試験に出る語だけでなく、身の回りにある物や、自分が興味を持っていることなどを一緒に辞書で調べるなどして語彙を増やしていくと良いでしょう。

 

☆プチ通訳ゲーム

身の回りの物を「日本語から英語」にすぐに変換できるように、ゲーム形式で練習してみましょう。英単語を頭で考えてから言うようでは、実際のコミュニケーションで使うのは難しいといえます。名詞は、同時通訳のように瞬時に英語で言えるようにしておくことが重要です。

 

イラスト/Kiko design

 

(ポイント2) 大文字と小文字の区別は大切

 

大文字と小文字を使い分けるのには理由があります。日本語だって急にカタカナで書かれたら、まるでロボットのセリフのように感じてしまいますよね。文字をすべて覚えるのは大変ですが、大文字と小文字の両方をしっかりと覚えなくてはなりません。一緒に文字を書いて、丁寧に教えてあげましょう。

 

☆大文字と小文字は同じ形だが、背の高さが違うもの

C c O o S s など

 

☆まったく違う文字なのに、よく似ているもの

I l b d p q など

 

何の文字を難しいと思うかは人によって違います。たくさん練習をして、きれいな字を書けるようにしましょう。

 

 

大竹 保幹

神奈川県立厚木高等学校 教諭

文部科学省委託事業英語教育推進リーダー

 

 

神奈川県立厚木高等学校 教諭

1984年横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。
平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。

著者紹介

連載子どもに聞かれて困らない! 大人のための「英文法」おさらい基礎講座

イラスト/Kiko design

子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ

子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ

大竹 保幹

アルク

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