税理士が見た相続の修羅場① 〜妻のヘソクリは誰のもの?

家族が集まる年末年始に改めて考えたい相続の問題。ここでは、相続税の申告で問題になりやすい「名義預金」を見ていきます。※本記事は牛田雅志会計事務所の牛田雅志税理士の書き下ろしによるものです。

申告漏れが起きやすい「相続人」の現預金

相続税の調査において追徴課税される相続財産の申告漏れナンバー1は何だと思いますか?

 

正解は「現預金」です。ちなみに2位は不動産、3位は有価証券です。

 

もちろん、相続人(遺された家族)が悪意をもって現預金を隠すという脱税行為やタンスの奥深くにしまわれて探し出せなかったような過失(タンス預金)を別にすれば、相続税の申告時に被相続人の現預金が漏れることは100%ありません。

 

しかし、申告漏れは現預金が最も多いということは、現預金が一番隠しやすいということでもあるのです。だからこそ、税務当局は現預金のありかや行方を追うのです。

 

では、一体誰のどんな現預金が漏れるのでしょうか。

 

正解は「相続人」の現預金です。

 

つまり、配偶者である妻や夫、あるいは子ども達の現預金が申告漏れとして追徴課税されるのです。「いやいやそればオカシイでしょう。被相続人のものではないのに」と思われるかもしれません。そこで、実際にあった調査のお話を通して、なぜ財産漏れが生じるかを紐解いてみましょう。

妻名義の預金が追加課税の対象になった事例

以下のようなご家族がいらっしゃいました。

 

夫(不動産賃貸業)、妻(専業主婦)、長男、次男、そして長女の5人家族です。

 

夫は毎月生活費として50万円を妻に渡し、ご夫婦は子供3人を育てながら生活をなされていました。子供たちが社会人として独立したあとも、夫から同額の生活費は手渡されていました。

 

夫は長い療養生活を経てお亡くなりになり、相続税申告書を提出した翌年、相続税の調査を受けることになりました。

 

結果から申し上げれば、被相続人の申告財産に100%誤りはなく問題はありませんでした。ただ、そろそろ調査が終了かなと思ったこのときが、実は相続調査のスタートだったのです。

 

調査官は妻にこういいました。

 

「奥様の預金通帳を見せていただけますか?」

「ええ、持って来ますよ

 

腰を上げる妻に、調査官は「一緒について行ってもいいですか」といって部屋まで同行してきました。

 

タンスの引き出しを開ける妻に対して調査官は「そのタンスの引き出し以外の引き出しも全部開けて見せてください」といい、すべての引き出しを開示させました。そして、タンスにあった通帳すべてを持ち出させました。

 

これらの通帳を前に調査官は妻に質問します。

 

「この通帳のお金は誰のものですか?」

「もちろん私のものですよ。ちゃんと名義を見てくださいよ」

 

妻は不審顔です。

 

「では、このお金はどうやって貯めたものですか?」

 

実は、この妻名義のお金は夫からの生活費の余りをコツコツ貯めてきた妻にとって大切なお金でした。妻は、このお金を貯めてきた経緯を調査官に話しました。そうすると調査官は信じられないことをいったのです。

 

「では、このお金の元はそもそもご主人のお金なのですね。そうなると、奥様の名義になっていますが、これはすべてご主人の財産となります」

 

妻は、この調査官の言葉を聞いて愕然とします。

 

「何をいってるのですか、私は夫からこのお金を預かって子供達を育て、長年貯めてきたものなのですよ。私のお金に決まってるじゃないですか」と激怒されました。

 

そんな妻に向かって調査官は、冷静にいい放ちました。

 

「奥様は専業主婦でいらっしゃったので、給料などをもらったことはありませんよね。今奥様がおっしゃったようにご主人から生活費を預かってその残りを奥様口座の銀行に預金していただけで、本来はご主人のお金なのですよ。奥様がこのお金をご自分のものだと主張されるのであれば、奥様自身に収入があったことを証明してください」

 

妻はそれを聞いて絶叫しました。

 

「私は夫からこれをもらったの、毎月もらって生活してたの。もらったのだから私のものなの。私が大切に貯めてきたのになんで夫のものなのよぉぉぉぉ」

税務調査で指摘の多い「名義預金」とは

この調査の結末は、奥様名義の預金のうち数千万円が夫の財産漏れとして修正申告になりました。実質的な所有者は被相続人ですが、名義だけ違う人のものになっている預金のことを「名義預金」といいます。実は、この名義預金が税務調査で一番指摘される財産漏れ資産なのです。

 

この名義預金がもたらす不幸は、そのご本人が名義預金だと認識されていないことにあります。

 

確かに、夫婦間でのお金のやりとりやその預金名義について気にされている夫婦はいらっしゃらないかもしれません。ただ、相続調査の現場では、この名義預金の知識が明暗を分けることになります。耐え難いことでしょうが、「妻のヘソクリは夫のもの」として追徴課税されてしまうのです。

 

相続税の調査では、うわべだけの財産名義だけでなく、実質所有者が誰なのかを執拗にチェックされます。相続税の調査時に修羅場にならないよう、名義預金には十分注意してください。

 

 

牛田 雅志

牛田雅志会計事務所 税理士

 

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連載家族が集まる年末年始だから本気で考えたい!「相続」特集 ~税理士・牛田雅志氏

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