今回は、相続税の過払いの有無のチェック方法等を見ていきます。※本連載は、税理士法人アレース代表社員の保手浜洋介氏の著書、『相続税は過払いが8割』(かんき出版)の中から一部を抜粋し、相続税の過払いが発生しやすいポイントをわかりやすく解説するとともに、過払い予防の対策を伝授します。

過少申告は追及しても、過払いはスルーするのが税務署

申告手続きを受け付けている税務署の職員たちは、定められた税制に沿って申告内容に間違いがないかをチェックし、修正の必要があれば指摘します。

 

ただし、それはあくまで過少申告だった場合。

 

過払いとなっているか否かまでつぶさにチェックし、そのことが発覚すれば申告者に教えてくれるようなことはまず期待しないほうがいいでしょう。

 

あきらかな計算ミスならまだしも、土地の評価をめぐって、本来使えたはずの減価要因を反映していないことが原因で相続税を納めすぎていたとしても、税務署の職員がわざわざ個別の案件をそこまで精査して指摘してくれることはまずありません。

 

つまり、すでに申告済みで過払いしたかもしれないと思っている人や、これから申告しようとしていて過払いは避けたいと考える人は、土地を正当に評価するため、個別にきちんと対応する必要があるわけです。

 

そのうえで、過払いだったことが判明した人は相続税の還付請求という手続きを行うことになります。その名の通り、払いすぎている相続税を返還してもらうための請求です。

 

この手続きは、相続税の法定申告期限(亡くなった日から10カ月後)から5年以内に行えるもので、「更正(こうせい)の請求」と言われます。

 

「更正の請求」は、税金を納める側に明確な権利が与えられており、税務署が手続きを進めずに放置したり、不当な理由で還付を拒絶したりすることは許されません。

 

もしそこで還付が認められなかった場合も、その理由を承服できなければ不服申し立ての手続きを行えるようになっています。

 

つまり、税務署としてはきちんと請求内容を確認して妥当な判断を下さなければならないのです。

 

[図表]もし、過払いだったら

 

 Point 

税務署は納税の過少申告には目を光らせるが、過払いには関心が低い

還付請求が正当なら、あっさり還付される

テレビやマスコミなどの影響もあり、税務署に対しては、多かれ少なかれ誰もが「怖いな・・・」という印象を抱いているのではないでしょうか?

 

「そんなことをすれば、たとえ還付を受けられたとしても、目をつけられて先々で厳しく税金を取り立てられるのではないか・・・?」と心配するのでしょう。

 

しかし、相続税の手続きは法律に基づいた納税者の正当な権利です。

 

それに、税務署は脱税行為や過少申告に対しては容赦なく追及してきますが、適切な評価をもとに行う還付請求についてはきわめて事務的で、公正に手続きを進めてくれます。

 

あくまで公正な手続きを行うのですから、税務署に対してはまったく気を使う必要はありませんし、「更正の請求」が正当なものであれば、意外とあっさり還付してもらえます。

 

 Point 

正当な理由があれば、事務的に税金を還付する

相続税が戻ってくる可能性がわかるチェックリスト

「すでに納めている相続税は、はたして妥当な金額だったのだろうか……?」

 

そんなことが心配になって、この本を手に取ったという人も少なくないはずです。相続した財産の中に土地が含まれていれば、十分に可能性があると考えていいでしょう。

 

次のチェックリストを見て、1つでも該当することがあれば、相続税を払いすぎている可能性があります。

 

相続税を納付済みの人は、自分に該当するものがないかどうかをチェックしてみてください。

 

 相続税が戻ってくる可能性がわかるチェックリスト 

 

□申告手続きを担当したのは、どちらかと言えば、会計経理を専門としている税理士である(たとえば、事務所名が○△会計事務所になっている)。

 

□申告書が手書きであったり、担当した税理士が高齢であったりする。

 

□申告における実務のほとんどを、税理士資格を持たない職員が行っていた。

 

□相続物件である土地について、きちんと現地までおもむいて調査を行ったり、所轄の役所で確認を行ったりした形跡がうかがえない。

 

□当初の打ち合わせ段階から、担当税理士の言動にいささか不安を覚えた。

 

□税理士の受け答えが高圧的で、質問しづらい雰囲気だった。

 

□申告書に、公図(土地の境界や建物の位置を確定するための地図)や路線価図、住宅地図などが添付されていなかった。

 

□国税庁のOBであるなど、担当した税理士がやたらと自分の経歴や肩書きを強調する。

 

□土地をどのように評価したのかについて、きちんと説明を受けていない。

 

□不動産鑑定士による調査分析や土地家屋調査士による測量など、多面的な検証がなされていない。

 

チェックの数が2つ以上あった人は、念のために還付の可能性がないかを調べてみて損はないかもしれません。

 

その結果、納税額が間違っていなかったとしてもペナルティを受けるわけではありませんし、過払いの事実が判明したら大収穫です。

 

現在、相続税の申告手続きを準備中だという人も、このチェックリストで確認しておいたほうがよさそうです。

 

最初から適切な申告を済ませられるのに越したことはありません。

 

 Point 

還付の可能性に気づいていない人は意外に多い

 

 

保手浜 洋介

税理士法人アレース代表社員 税理士・公認会計士・行政書士・宅地建物取引士

 

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