今回は、相続税過払いを防ぐための知識などを見ていきます。※本連載は、税理士法人アレース代表社員の保手浜洋介氏の著書、『相続税は過払いが8割』(かんき出版)の中から一部を抜粋し、相続税の過払いが発生しやすいポイントをわかりやすく解説するとともに、過払い予防の対策を伝授します。

相続税に強い税理士を探すための3つのポイント

全体から見れば少数派ではあるものの、私たちのように相続税などの資産税を専門としている税理士は全国に存在しています。ただし、その中の誰に頼んでも同じ成果を期待できるのかと問えば、けっしてそうではないのが現実でしょう。

 

同じ国家資格の持ち主であっても、知見の蓄積やこなしてきた案件の数、成功実績には違いがあるものです。

 

また、報酬の設定も少なからず異なっています。

 

当然ですが、腕の立つ税理士に、なるべく良心的な報酬で依頼できるのに越したことはありません。

 

とくに避けたいのは、それなりの調査料を渡して依頼したものの、「精査してみると過払い請求は不可能でした」と突き返されるというパターン。

 

その意味でも、完全成功報酬制というシステムを採用している事務所に注目するのがよいでしょう。

 

これは、「還付を達成できなければ、経費を含めて一切の報酬を請求しない」というシステムです。

 

もちろん、費用だけでなく実績のチェックも不可欠です。

 

問い合わせの際には遠慮なく、これまでの還付実績について明確な数字で答えてもらいましょう。

 

まずは、相談を持ちかけられた顧客のうち、おおよそどの程度の割合で還付を実現してきたのかを確認しましょう。

 

そして、還付請求した顧客の何割が還付金を得たのかという点や、平均の還付率・還付額などについても聞いてみましょう。

 

きちんと実績を残している税理士なら、明確に答えられるはずです。

 

それに、そういったところは自信の表れとして、完全成功報酬制を採用していることでしょう。

 

さらに言えば、現地調査にどれだけ力を入れているのかについてもあらかじめ聞いておきたいところです。

 

図面だけを見ていると道路に広く面していて便利に見える土地でも、自分の目で現場を確かめてみると、道路と土地の間には高低差があり、すんなりと道路にアクセスできない・・・なんていったことも少なくありません。

 

現地調査を怠った結果として、相続財産の評価や相続税の金額に大きく差が出てしまうこともあります。

 

ですから、私たちは現地調査を非常に重視しています。巻き尺や水準器、傾斜計、測量ポール、騒音計といった測量ツールを用いて自分たち自身が土地の状態を調べているのは、現地調査の重要性を痛いほど知っているからです。

 

建築関係のプロならまだしも、税理士が測量しているなんて、ほとんど見たことのない光景かもしれませんが、実はこれこそが相続税申告のキモと言ってもいいでしょう。

 

 Point 

「完全成功報酬制」「還付実績」「現地調査」などが税理士を選ぶときのコツ

過払いを防ぐ為には見逃せない「道」と「道路」の違い

土地の相続の世界がきわめて専門的で、単なる面積の違いだけでなく、個別の条件の違いによっても相場が異なっていることは、なんとなく理解していただけたかと思います。

 

そして、そういった違いに対応して、相続税でも評価に反映させるルールが設けられていることから、相続税を計算する際の評価方法もおのずと複雑になっているわけです。

 

言い換えれば、「不動産とそれに関わる法律や税制のことにを熟知した税理士に任せないと、損する可能性もある」ということです。

 

読者のみなさんは、家の前の道が「道」か「道路※2」かを知っていますか?

(※2)ここでは建築基準法の道路を「道路」としている。

 

そもそも、違いを理解している方のほうが少ないのではないでしょうか。

 

日常生活において、私たちは「道」と「道路」をあまり区別して使っていません。

 

ところが、不動産の世界ではこれら2つを明確に区別しています。

 

まず、「道」は人や自動車などが往来できるもので、とくに細かい条件や意味が定められていません。

 

これに対し、「道路」については建物の建築について定めた「建築基準法」という法律の42条によってきちんと定義づけられています。むずかしい話になるので建築基準法の細かい規定の説明は割愛しますが、同法42条1項で1号~5号のタイプ別に分類したうえで、4メートル(特定行政庁が指定した区域では6メートル)以上の道幅のあるものを道路と呼んでいるのです。

 

[図表]「道路」とは法律上できちんと定められたもの

 

「道だろうが道路だろうが、そこに住んでいる人間がとくに不便を感じていないならどっちでもいいんじゃない?」と思った人もいるでしょうが、そうではありません。

 

というのも、建築基準法の43条によって、「建物を建築する敷地は建築基準法に定める道路に2メートル以上接しなければならない」と規定されているからです。これはつまり、「建築基準法の道路に2メートル以上接していない土地」には建物を建てられないということを示します。

 

そういった土地は建物が建てられないことから、建物を建てられる土地と比べて著しく取引価格が下がります。

 

こうした側面を相続税の計算時における土地の評価に反映することが認められていますので、土地に接した通りが「道」であるか「道路」であるかの違いが相続税額に大きな違いをもたらします。

 

しかし、それが道なのか道路なのかについては、外見から簡単には判断できないものです。不動産に関わる法律の知識がなく、きちんと確認もせずに申告手続きを進めてしまうケースが少なくないのが実情です。

 

しかも、驚いたことに、建築基準法で認められた道路でなく、その道に接していても建物が建てられないにもかかわらず、路線価が定められていることも少なからずあります。

 

結果として、建物が建てられない土地なのに「建てられる土地」として評価され、高い相続税を納めさせられているケースもあるのです。

 

自宅前の道が「道」なのか「道路」なのかについて、把握できていないことも多いのではないでしょうか?

 

しかし、相続税の過払いを防ぐうえでは、絶対に見逃せないポイントなのです。

 

建築基準法上の道路以外に路線価がついてしまっているものは、誤まりなのですぐにでも取り下げてもらいたいものです。ただそうは言っても、実際にはその事実に気づかず相続税の過払いに結びついてしまっているケースが多いもの。税理士がきちんと土地評価の知識を身につけ、その事実を判明させれば、ムダな相続税を払わずに済むはずです。

 

まずは、相続する土地の前にある道を、しっかり調べてみてはいかがでしょうか。

 

 Point 

家の前の道が「道」か「道路」かで、土地評価は大幅に変わる

 

 

保手浜 洋介

税理士法人アレース代表社員 税理士・公認会計士・行政書士・宅地建物取引士

 

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