アフリカ外交に力を注ぐ中国習政権…数字で見るその実態

中国政府が2018年最大の外交主戦場と位置付けたとされる「中国アフリカ協力フォーラム」。多くのアフリカ諸国のリーダーが参加し、習近平国家主席も20ヵ国以上の首脳と自ら会見した。本連載では、その様子を通じて、中国のアフリカ外交の現況と今後を考察する。

20ヵ国以上の首脳と自ら会見した習主席

9月3〜4日北京で開催された中国アフリカ協力フォーラムは、中国政府が2018年最大の外交主戦場と位置付けていた会議だ(8月29日付新華社)。

 

アフリカで唯一なお台湾との国交を持つエスワティニ(旧スワジランド)が不参加だったが、15年に開催された前回の会議後、台湾との国交を断絶したガンビア、サントメ・プリンシペ、ブルキナファソの3ヵ国が新たに参加した。さらに、5ヵ国がトップを派遣しなかったが、その他全てがトップを派遣し、アフリカ関連メディアに「会議は大陸をリーダー不在にした」と言わしめた(9月3日付Africanews)。

 

秋に開催された国連総会には、アフリカ首脳の約半数しか出席しなかったことと対比して考えると、アフリカ諸国の本フォーラムに対する期待の大きさがうかがわれる。習近平国家主席は20ヵ国以上の首脳と自ら会見するなど、そのもてなしは「超規格(破格)」だったという(海外中国語メディア)。本会議から、現在中国外交が置かれている状況が見えてくる。

資金支援のうち「援助」は3倍に増加

第1に、前回会議と同額600億ドルの資金支援をプレッジ(約束)したが、その内訳は通常の商業融資が200億ドル、無償援助や無利子融資等援助が150億ドル、開発融資特別基金100億ドル、アフリカからの輸入をファイナンスするための特別基金が50億ドル、民間企業の直接投資100億ドルで、援助が前回会議の50億ドルから3倍に増加した。これは中国の支援がアフリカを債務トラップ(わな)に陥れているとの国際社会の批判を強く意識したものだ。

 

商業融資200億ドルはなおこの援助150億ドルを上回っており、援助と商業ベースの資金を併用する方式に基本的変化はないと思われるが、アフリカ諸国には商業融資も中国が好条件との意識が強い。実際、例えばジブチのコンテナーターミナルプロジェクトでは、先進諸国の7つの銀行からの融資2.68億ドルは金利9%、期間9年という条件だったのに対し、中国の融資6.2億ドルは2.85%、20年だった(8月31日付ロイター中国語版)。またアフリカ関係者は、中国は最貧国以外でもプロジェクトに着目して低利融資を供与する、融資審査に要する時間が短い(西側融資が平均9年に対し、中国は2年程度)などのメリットを指摘している(Ryder、9月5日付英字誌The Diplomat)。

 

■600億ドルの内訳

通常の商業融資:200億ドル

無償援助、無利子融資:150億ドル

開発融資特別基金:100億ドル

アフリカからの輸入ファイナンス特別基金:50億ドル

民間企業の直接投資:100億ドル

 

第2に、新たに設けられた特別基金50億ドルだ。中国がアフリカから資源や一次産品を輸入し、アフリカが中国から付加価値の高い工業製品を輸入する貿易構造だ。中国海関(税関)のウェブサイトで一般に公開されている貿易統計からは、対アフリカ貿易の商品別輸出入の詳細は明らかでないが、地元経済誌によると、主要10品目は繊維製品、衣類、電気機械等一般工業製品で総輸出の60%、輸入は資源と農産品が主で、16年、原油、金、宝石、木製品等主要10品目で総輸入の87%、うち原油が37.9%を占めている(8月28日付中国財経報)(注)

(注)現在進行している米中貿易戦争が経済面でアフリカに対しいかなる影響を及ぼすか、プラス、マイナス様々な見方が交錯している(Girard、10月25日付 The Diplomat)。アフリカにとってプラスと見る見方は、①米国に輸出される中国製品に追加関税が課せられることにより、中国以外の対米輸出製品の競争力が高まる。特にナイジェリア等多くのサブサハラ諸国が協定に基づき、多くの製品が関税ゼロで米国市場に輸出できるようになっており、この機会を利用できる、②中国企業が米国の追加関税を逃れようとして、米国以外の投資先を開拓しようとし、アフリカはその選択肢の1つになる、③中国が米国からの輸入の代替として、アフリカからの輸入を拡大する(例えば、ケニアから農産物、ナイジェリアから石油など)といった点に着目している。他方、マイナス要因としては、①中国が輸出市場としての米国を失い、アフリカ市場にダンピング等の輸出攻勢を強める結果、アフリカ諸国の国内産業が打撃を受ける(例えばウガンダ)、②中国の対米輸出鈍化で中国国内経済が減速、アフリカ製品に対する需要が減少する(例えばエチオピア)といった点が指摘されている。

 

こうした両者の貿易パターンは、両者の経済状況、経済の発展段階を考えれば当然の帰結だが、先進諸国からは「新植民地主義(neocolonialism)」だとの批判がある。実際、こうした貿易パターンの下で、アフリカ経済は資源や一次産品価格の変動に対して脆弱になり、さらに対中貿易赤字の増大が債務トラップの懸念を高めている。

 

中国の対アフリカ貿易は2000年100億ドル程度にすぎなかったが、近年年間ベースで1700億〜2000億ドル程度まで急増しており、すでに9年連続でアフリカにとって最大の貿易パートナーとなっている。また貿易バランスは15年以降、中国側の貿易黒字だ。基金は後述、習近平国家主席がフォーラムの演説で言及した「8大重点行動」と合わせ、アフリカからの輸入を促進し、貿易パターンの是正に努力している姿勢を国際社会に示すねらいがある。

 

[図表]中国の対アフリカ貿易(億ドル)

(出所)2000〜15年は中国国家統計局統計年鑑、17年、18年は中国海関統計月報
(出所)2000〜15年は中国国家統計局統計年鑑、17年、18年は中国海関統計月報

 

 

 

金森 俊樹

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) 独立取締役

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) 独立取締役

1976年、大蔵省入省。1990年、アジア開発銀行理事代理、2000年、香港理工大学中国商業センター客員研究員。2003年、アジア開発銀行研究所総務部長、2006年以降、財務省神戸税関長、財務省財務総合政策研究所次長、財務省大臣官房政策評価審議官、2010年から大和総研常務理事等の要職を歴任。 2015年、NWB(日本ウェルス)の独立取締役に就任。一橋大学卒。香港中文大学普通話課程修了。
WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/

著者紹介

連載中国習政権のアフリカ外交戦略を読む

 

 

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