税の繰り延べ効果は「確定事項」ではない
マイニング事業はまだ新しいビジネスであり、サービスを提供する事業者と投資家の間には、大きな情報格差が存在します。業者を選定する際に吟味を怠ると、厄介なリスクに晒される危険性があります。そこで今回は、信頼の置ける業者を選択するためのポイントを説明します。
①収益シミュレーションが相場頼みになっていないか?
「収益率」や「回収期間」について答えられない業者は姿を消しつつありますが、投資家に案内する期待収益率の条件が、現状から大きく乖離している業者は依然として多数存在します。
現在の仮想通貨相場と大きく乖離したシミュレーションには、ほとんど意味がありません。
株式市場と同様に、仮想通貨相場の将来を予測することは非常に困難です。ただ、マイニング収益の将来予測については、現状の環境が「継続する」という前提でシミュレーションすべきと考えます。シミュレーション結果が相場頼みになっている場合は、その業者の事業遂行能力に疑いの目を持ったほうが良いでしょう。
②設備投資額が大きすぎないか?
マイニング事業者にとって大きな設備投資となるのは、電気設備とその設置工事に関するものです。また、事前にグラフィックボード等の部品やマイニングマシンの購入に、多額の資金を投じている場合もあります。
大規模な設備投資をした業者が投資回収を急ぐと、投資家にとってベストなタイミング、ベストな内容での提案が難しくなります。つまり、業者と投資家のミスマッチが発生する確率が高くなるのです。設備投資額が大きければ安心という考えは、捨て去るべきでしょう。
③税務リスクを軽視していないか?
マイニング事業は新しい産業です。よって、事業から発生する収益やコストに関しては、慎重かつ丁寧な取り扱いが求められます。
そのような中、必ず特定の税制が適用されるという前提で、税払いの繰り延べ効果を、マイニング事業の収益に組み入れた情報を発信している業者がいます。
良心的な業者であれば、事業独自の収益源泉について、投資家自身が評価できる情報を提供するでしょう。正々堂々とした事業運営が、マイニング事業にも必要です。
不明点は放置せず、納得できるまで質問を
④新型マシンの納品を確約できるか?
近年、日本からも新型マイニングマシン開発競争に参戦する企業が出てきましたが、開発に参加するためには、多額の資金が必要となります。当然大手企業が有利になりますし、資金調達に成功したとしても、株主間の利害関係を調整しながら投資回収に向けたビジネスを展開することは非常に難しいと言えます。
そのような状況下で、投資資金の回収を急ぐ企業やグループは、「権利売買」に手を染める傾向があります。「この日までに新型マシンが発売されますので、あなたにはこの値段で、この台数を売りましょう。ですから今この額を払ってください」という類いのものです。
お金を払う前に、本当に期日までに納品できるのか、そもそも大規模生産できるのか、という点をクリアにしなければなりません。知らず知らずのうちに、架空の商品を買う事態になりかねないからです。
また、納期がだいぶ先になる場合は、仮にマシンがきちんと納品されたとしても、その間にマイニング環境が激変しているリスクもあります。つまり、出荷直後に競争力を失っている場合があるのです。
⑤不要な人材を配置していないか?
デジタル情報を高速処理するマイニングマシンを監視するには、人間の目視で確認するよりも、ソフトウェアによる24時間リアルタイム監視の方が、比較にならないほど効率が良いです。
業者の中には、地方自治体からの補助金目当てに、現地の人材を採用している所があります。当然人件費は膨れ上がりますが、誰がそれを最終的に負担するのでしょう?
マイニング事業では、開梱作業やセットアップといった力作業や一部のメンテナンスなどで、確かに人手が必要なケースもあります。ただ、本当に毎日多数の人材が必要なのかは疑問であると言わざるを得ません。
ここまで読んだいただいた方の中には、「やはりマイニングは難しそう」「リスクが高そう」と思われた方もいるでしょう。
しかし、上記ポイントは決してマイニング事業に限ったものではありません。
重要なのは、不明点を放置せず、納得するまで質問するということです。その対応次第で、危ない業者かどうかの判断も付くでしょう。わざと難しい用語を並べ無責任な回答をしてくる業者とも付き合うべきではありません。
マイニング事業が投資対象としてふさわしいのか、これまでの投資家経験を活かして判断することが大事です。
小田嶋 康博
株式会社ジェイベース 代表取締役 兼 共同創業者