本連載では、株式会社ジェイベース代表取締役・共同創業者である小田嶋康博氏が、「仮想通貨マイニング事業」の基礎知識と最新事情について分かりやすく解説します。今回は、仮想通貨マイニング事業のリスクを詳しく見ていきましょう。

中国企業の独占状態にある「マシンの製造販売」

仮想通貨マイニング事業には、他の一般的な事業と同様に、運営上のリスクが存在します。今回ピックアップした、マイニング事業特有かつ、収益率に大きな影響を与えうるリスクですが、これらは克服・軽減することが可能なものです。

 

<マイニングマシンに由来するリスク>

 

●マシン購入の難しさ(タイミング・価格・数量の問題)

これまでにない性能を持つマシンが登場すると、人気が集中し、欲しいタイミングで購入できなくなるケースがあります。マシンメーカー側もその人気を反映し、強気な価格設定をしてきます。マイニングマシンの価格は、マイニングの期待収益に連動する傾向が非常に強いためです。

 

マシン本体の価格が高ければ、いくら性能が良くても満足のいく水準でのインカムゲインが期待できなくなります。さらに、人気マシンには購入制限が設定され、一人一台しか買えない場合もあります。

 

●メーカーによる短期大量生産の悪影響

マシンの製造販売は、中国企業の独占状態となっています。マイニングマシンに限らず太陽光パネルなどでも、ある程度の品質のものを圧倒的な物量で、また圧倒的な短期間で製造し納品できるのは、中国企業以外に存在しません。

 

現在の中国の物流は驚くほど進化しており、新規開発した高性能マシンを大量生産し、世界中に一斉に届けることが可能です。喩えるなら、これまで30名程度の釣り人がいた釣り堀に、ある時を境に1000人もの釣り人が集まってしまったという状況なのです。当然ですが、当初期待していた釣果も得られなくなります。

 

●新型マシン開発競争と相対的能力の劣化

新型マシン開発の対象となりやすいのは、マイニングが必要かつ時価総額の高い仮想通貨です。特に、時価総額トップ20位に入る仮想通貨ではマイニングをしている人たちが多いため、開発競争のターゲットになる傾向があります。メーカーは新型マシンの開発で多額の投資を行うため、投資回収を意識し、より多くマシンを販売しようとするためです。

 

事実、現在熾烈なマシン開発競争が繰り広げられているのは、ビットコイン、イーサリアム、Zcashなどの時価総額トップ20位以内に入る仮想通貨です。最大の時価総額を誇り、最も人気があるビットコインは、常に開発競争のターゲットになります。

 

これらの仮想通貨を対象とするマイニングマシンは、常に相対的な能力の劣化というリスクに晒されているのです。今日の相対的優位性は、1ヶ月後にはどうなっているか分からないということです。

ハードフォークの発生で、マシンが無力化することも!?

<仮想通貨の動向に由来するリスク>

 

●マイニング対象通貨の下落

単純な話ですが、マイニング対象の仮想通貨の価値が下がれば、マイニング収益は縮小し、コストを賄えなくなる可能性が高まります。

 

最近では、グラフィックボード(GPU)という画像処理デバイスを複数並べたお手製マシンでマイニングしていた人々の収益が、赤字状態となってしまいました。

 

マイニングをやめてしまう人たちも増えています。GPUマイニングの対象として人気があるイーサリアムが今年に入って大幅下落していることや、高性能新型マシンが登場していることが背景にあります。

 

●マイニング対象通貨のハードフォーク

「ハードフォーク」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 詳細な説明は省きますが、ハードフォークという事象が発生すると、これまでマイニング対応していたマシンが無力化されてしまう場合があるのです。つまり、収益機会が突然奪われることを意味します。

 

ハードフォークが発生すれば、現在所有しているマシンでマイニング可能な他の仮想通貨を見つけ、マイニング環境を再構築することが必要になります。

 

<マイニングファーム運営事業者に由来するリスク>

 

●経営構造に問題があるケース

これはマイニング事業に限ったことではありませんが、投資家が知らないうちに事業者リスクに晒されてしまうケースがあります。自転車操業に陥っている企業では、投資家の資金を抱えたまま事業を停止する可能性があるのです。

 

経営者や株主がどのような経歴の持ち主で、顧客に向き合ったビジネスを展開するインセンティブを持っているのか、長期運営する意志を持っているのか、きちんと調べることが重要となります。

 

●無計画/無謀な設備投資をしている場合

不要に大きな設備投資をしている事業者は、顧客にとってベストなタイミング、ベストな内容での商品提案が困難となり、自分たちの設備投資の回収を急ぐ前提で顧客に対峙する傾向が強くなります。そのような事業者は、投資家の収益性を無視した無謀な価格設定をしてしまいがちです。

 

いかがでしょうか? リスクが多くあるように思われるかもしれませんが、上記の通り、リスクは全て明確に説明できます。これらのリスクと向き合う方法が分かれば、必要以上に怖がる必要はありません。

 

 

 

小田嶋 康博

株式会社ジェイベース 代表取締役 兼 共同創業者

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