現状、通貨よりも「株式」に近い仮想通貨の特性
「仮想通貨」という言葉は聞いたことがあるけれど、「マイニング」という言葉は初めて聞いた、という方は多いのではないでしょうか。本連載では、仮想通貨とマイニングの基本について解説していきたいと思います。
「仮想通貨」という日本語訳が広く知られていますが、本質を理解する上では、この訳はあまり適していません。英語では「Crypto Currency」、「Crypto」は暗号という意味ですから、「暗号通貨」という日本語訳の方が、本来の英語表現に近いと言えます。
「通貨」(Currency)という言葉も、実態とズレています。「通貨」という表現だけにとらわれ法定通貨の定義と重ね、「通貨の機能を満たしていない、インチキだ!」と極論に至ってしまう人がいます。
仮想通貨というものは、どちらかというと株式に似た特性を有しています。それは仮想通貨が最初に作り上げられる段階から見ても明らかです。
将来に渡り展開する事業計画をいかに評価するかによって資金調達の成否が決まり、その後の事業運営の成否に応じて、仮想通貨の価値が上下し、問題のある通貨は機能不全に陥ります。
何らかの理由で「仮想通貨は株のような有価証券とは異なる!」と主張する向きが強いですが、個人的には違和感があります。仮想通貨が多くの人々の支持を受け、不特定多数の間で交換される形で流動性が高まれば、結果として法定通貨に近い決済性を持つようになると考えています。
<「価値」とは?>
また「仮想通貨なんていうものには、価値がない!」と感情的になられる方もいらっしゃいます。そもそも我々が認識する「価値」というのは一体どういうものなのでしょうか?
例えば、御徒町にある宝石店で売っているダイヤのリングと、銀座のハイブランドショップで売っているダイヤのリングがあるとします。どちらも同じものですが、価格体系が全く異なります。カッティングを含むジュエリーデザインやブランド力の違いはありますが、物質的には全く同じです。
どちらで買うのが正解ということはありません。人によって購買の基準が異なるため、どちらも商売として成立します。とある方は銀座のダイヤモンドリングにより大きな価値を見出し、別のある方は御徒町のダイヤモンドリングに大きな価値を見出しています。
ある人には価値があるが、ほかの人には価値がない。価値の大きさも人それぞれ変わるということです。
私たちが価値を決める時、絶対的な尺度は存在しません。長期にわたり「価値」として人気があるゴールドに至っても、大きな価値を見出す人たちが多くいる一方で、金利も配当も生まないゴールドには全く価値がないと考える人たちもいます。私たちは自分の価値基準で考え、相対的な価値を見出しているのです。
そう考えれば、仮想通貨の価値に対する判断も、冷静に行えるのではないでしょうか。
仮想通貨市場は、現時点で22兆円を超える規模となっており(2018年8月23日時点)、仮想通貨に対して価値を見出している人たちが、とても多くいることがわかります。
データベースの更新作業を手伝うこと=「マイニング」
<仮想通貨のマイニングとは?>
マイニングという言葉には、「鉱物を採掘する」という意味があります。つまり仮想通貨のマイニングは、「仮想通貨を採掘する」という意味になります。
仮想通貨そのものはデジタルデータであり、主にブロックチェーンと言われる技術を用いて改ざんが非常に困難なデータベースとして管理されています。そのデータベースの更新作業を手伝うのが、仮想通貨のマイニングなのです。
代表的な仮想通貨であるビットコインやイーサリアムは、マイニングを利用し強固なデータベースを構築・更新し続けています。
データベースの更新作業は特定の大型コンピュータに依存するのではなく、世界中の小型コンピュータの力を結集して行われています。小型コンピュータの集合体で作業しているので、一部のコンピュータが故障してもデータベースの更新作業に影響を与えることはありません。
少数の大型コンピュータを採用する大手銀行などのATMシステムでは、障害が発生し、現金の出し入れが出来なくなることがありますが、高度に分散されたコンピュータ群に支えられた仮想通貨のネットワークでは、このような問題は起きにくいのです。仮想通貨が高度なセキュリティを持っていると評価される理由の一つです。
<仮想通貨マイニングの対価とは?>
マイニングによってデータベースの更新作業を手伝う人たちに対して、仮想通貨が新規に発行されます。それがマイニング事業における収益源となります。マイニングによりデータベースを更新し続けていく手法を採用している仮想通貨には、マイニングへの対価として新規発行で応える機能が内在されているのです。
今回は第一回目ということで、仮想通貨とマイニングの定義に焦点を当ててお話ししました。次回からは、より専門的なお話をしていきます。
小田嶋 康博
株式会社ジェイベース