意外に広い「接待交際費」の対象範囲

意外に広い「接待交際費」の対象範囲

「接待する相手として妥当」でありさえすれば、相手の立場にかかわらず、接待交際費として落とすことができます。今回は、意外に広い接待交際費の範囲についてお話しします。

接待の意味さえあれば接待交際費は適用できる

ある生活雑貨卸販売会社のT社長は、営業担当の若手社員N君が出してきた伝票を見て「何だ、こりゃ?」と目を留めました。「居酒屋○○」と記された7000円の領収書でしたが、添付された伝票を見ると「接待交際費」になっています。 
 
「おい、これは誰を接待したんだ?」と聞くと、彼はすまして「女将です」と答えました。
 「女将を接待?」――N君によると、これは本当に女将の接待、と言い張りました。 
 
実は、この店の女将さんは、居酒屋の主としての顔のほかに、生活雑貨のブロガーとして知られており、一部で高い評価を得ている人でした。彼は彼女にわが社で扱っている生活雑貨をブログで紹介してほしいと頼みに行ったのです。 
 
店を休めないからという理由で、彼は営業時間内に店を訪れて、少し飲みながら女将さんに雑貨の紹介をお願いしました。シリーズものの雑貨をプレゼントしたことはいうまでもありません。 やや特殊な例かもしれませんが、こうしたはっきりした理由がある場合なら、これも接待にあたると考えていいと思います。 
 
N君は、伝票に「接待交際費」と社長に説明した通り「女将さんが著名なブロガーであること、生活雑貨紹介の依頼交渉のための飲食であること」を書き足して、再提出しました。広告宣伝費じゃないのか、という指摘もありましたが、彼女は自分のショップも持っており、営業活動として接待にしたそうです。 
 
接待交際費として算入するためには、まず相手が「接待する相手として妥当な人かどうか」が問題になります。もちろん現在の取引先は「接待するにあたってもっとも自然」な相手になります。それが下請けであれ、元請けであれ同じこと。A君の例のように、はっきりした理由があれば、居酒屋の女将さんも接待相手になり得ます。 
 
接待というと、何となく「受注を目的として」行うことが多いので、下請け会社が「えらい人」に対して払う印象があります。しかし、いつもお世話になっている下請け会社の部長さんを接待しても、もちろんまったく問題はありません。

業務に関連するのであれば先の話でもかまわない

また、現在の取引先でなくても、「将来的に会社の業務に役立ちそうな付き合い」を期待する相手も接待の対象です。将来的に、業務拡大のキーマンになりそうな人、あるいは業務拡大に役立ってくれそうな人というのは、立派な接待相手になります。 
 
さらに、取引そのものに直接的な関連がなくても「業務拡大のヒントをくれそうな人」あるいは「関連する情報を提供してくれそうな人」に対しても、その対価として飲食接待をする価値があれば、問題はありません。 
 
極端な話、情報を提供してくれそうな相手なら、業種によってはキャバクラのキャバ嬢でもいいし、ライバル会社の従業員でもかまいません。ただし、業務に役立つかどうかは、税理士や税務署から問い合わせがあったときにきちんと対応できるように、しっかりと記録を残しておけばいいだけのことです。 
 
接待相手が、こういう人物で業務に関する接点やどんな種類の情報を提供してくれるのかを、きちんと残しておけば問題ありません。 

 

 

本連載は、2012年12月19日刊行の書籍『スゴい「節税」』から抜粋したものです。その後の税制改正は反映されておりませんので、ご留意ください。

スゴい「節税」

スゴい「節税」

編著 GTAC

幻冬舎メディアコンサルティング

増税、デフレ、円高不況…。中小企業が日本の厳しい経済環境を乗り切るには、いかに売上を伸ばすかということ以上に、今ある利益をいかに残すかに注目することが必要でした。その解決策は節税にアリ。「日々の交際費でコツコツ…

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