不動産投資が活況だ。中でも賃貸住宅の供給戸数は2011年を底に上昇に転じている(国土交通省の住宅着工統計より)。だが、一方で全体の空室率は右肩上がりという調査もある。そんな競争激化が進む賃貸住宅投資市場で、「建築家のデザイン」を取り入れたオンリーワンの物件で空室リスク低減を狙う、神奈川の注文住宅大手タツミプランニングと日本最大級の建築家ネットワークを作り上げたアーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)の秘密に迫る本企画。第1回目は、ASJ事業本部の竹内宗則氏とタツミプランニング営業本部の藤郷紳也氏に、日本最大の建築家ネットワークASJと「建築家と建てる賃貸物件」の概要について伺った。

日本最大の建築家ネットワークを作り上げているASJ

――競争が激化する一方の賃貸住宅市場で、タツミプランニングとASJは「建築家と建てる賃貸物件」で異彩を放っていると聞いています。いかにして、そのプロジェクトは実現したのでしょうか?

 

藤郷 当社がASJさんに話を持ちかけたのがきっかけです。もともと当社は神奈川県内でデザインNO.1、受注量NO.1を標榜して、注文住宅の建設を行ってきたのですが、社内に抱えている建築士だけでなく、もっと多くの建築家の方々と一緒に住宅のデザインを考えていきたいと思っていました。そのなかで日本最大の建築家ネットワークを作り上げているASJさんの存在を知ったのです。

 

ASJみなとみらいスタジオ
ASJみなとみらいスタジオ
 

――どれだけの建築家を抱えているのですか?

 

ASJ事業本部 竹内宗則氏
ASJ事業本部 竹内宗則氏

竹内 日に日に新規登録される建築家が増えており、直近では2824人になります。加えてタツミプランニングさんのように、家作りを手伝っていただく加盟建設会社さんに「スタジオ」という名の営業・情報拠点を作ってもらっていまして、それが全国184か所にあります。

 

その建築家と建設会社をエンドユーザーに結びつけて、戸建新築からリフォーム、商業施設・収益物件の開発までをサポートするのがASJの役割。これまでに5万3千人を超える会員様にご利用いただいております。

 

――それは有料なのですか?

 

理想の物件の実現を建築家が直接サポート
理想の物件の実現を建築家が直接サポート

竹内 以前は有料でしたが、現在は登録無料です。会員登録すると、家のプランニングやコスト確認の見積もりなどに関して建築家と何度でも打合せができるようになります。遠方の建築家との打ち合わせでも、別に交通費を請求されたりしませんので、かなりお得かな……と(笑)。

 

 

建築家の個性が加わる賃貸住宅とは?

タツミプランニング
営業本部 藤郷紳也氏
タツミプランニング    営業本部 藤郷紳也氏

――でも、よくそれだけの有料会員組織をつくりましたよね? もちろん、家を建てる人からすればごくわずかな投資で、いろんな建築家の方の意見が聞けるという点では非常にお得ですけど。

 

会員向け建築雑誌『A-style』
会員向け建築雑誌『A-style』

竹内 もともとのスタートは大阪なんです。会員登録してもらえたらプランを書きますよ、建築雑誌を届けます、現場見学会の案内をしますという会員向け限定サービスを開始したのは。弊社代表の丸山がある種、お金に最もシビアな大阪のおばちゃんに「それ面白い!」って受け入れられたら、たぶん全国でも受け入れられるだろうなという考えでした(笑)。

 

とはいっても、商売人の町だけあって値切り交渉が強烈で、イベント来場者なら1万円でいいですよというふうにして、2014年7月から登録無料になったのですが、それまで徐々に有料会員を増やしてきた形です。大阪からスタートして西日本に広げて、東北、北陸、そして東京に進出したのが'07年のこと。タツミプランニングさんと一緒に始めたのは'10年のことでしたね。

 

――それから両社で賃貸住宅の開発を始めたのですか?

 

竹内 そうです。ASJとしての受注件数は創業以来15年間で5000件を超えていまして、そのうち5%程度を賃貸住宅が占めていて年々増加しています。

 

タツミプラニング賃貸物件施工例
タツミプラニング賃貸物件施工例

藤郷 タツミプランニングとしても、注文住宅の他に、賃貸物件を手掛けさせていただく機会が増えてきましたね。けれど、みなさんが想像する賃貸住宅とはまったくイメージのことなる物件です。共用部分を広くとった物件から、土間とリビングが一体になった物件、骨組みだけがむき出しになっている“ストリップ階段”をリビングに設置した物件など、どれもこれも個性のある賃貸住宅です(笑)。

 

いずれも、狭く感じさせることのない、空間を贅沢に活用した物件ばかり。そこに建築家の個性が加わっているので、長く利用してくれるコアなファンを獲得することに成功しているのです。

 

 

 

取材・文/田茂井 治 撮影/永井 浩 
※本インタビューは、2017年5月23日に収録したものです。