入居者が物件の「ファン」となる仕掛けとは?
――かなり多様な収益物件の開発を手掛けているようですが、そのほかにはどんな個性的な賃貸住宅がありますか?
竹内 そのほかには、地下に「ロフト」がある物件などもあります。一般にロフトは1.4m以下の天井高で上部に設置されるものですが、開発した土地に段差があった関係から、玄関下に天井高1.4mのデッドスペースを造らざるを得なかった。それを、「地下のロフト」として建築家の方がデザインしてくれたのです。こうした空間は「DEN=洞穴」と言われるのですが、入居者は荷物置き場にしたり、寝室のように利用したりとさまざま。
このようにちょっとした“余白”を作っておいてあげると、入居者が自身の感性を生かして使い道を見出してくれるんです。それがファンを生み出す物件の強みにもなる。
――個性的な自宅併用の賃貸住宅やその他の収益物件なども開発されていますか?
竹内 もちろん、自宅併用型の集合住宅も数多く手掛けてきました。ただ、その場合は建築家の個性やアイディアを発揮するというよりも、クライアントさんの個性をデザインに生かすということのほうが多いでしょう。例えば、アウトドア好きのオーナーさんの土地の開発を手掛けた際には、その個性を生かして緑を増やし、入居者同士が交流できる屋外の共有スペースを設置しました。
駒澤大学駅から徒歩10分の閑静な住宅街の土地を保有するオーナーさんに対しては、地階と1階をメゾネット店舗にして、2階を賃貸住宅に、3階をオーナー住居とする物件を提案させてもらって、街並みに溶け込むシックな自宅併用型集合住宅を開発した例もあります。
決して高収益ではないグループホームだが・・・
藤郷 新しいところでは、現在ASJさんから提案頂いて、タツミプランニングでグループホームの開発も進めていますね。オーナーさんが地域に必要とされるかたちで土地の有効利用を図りたいということで、グループホームで行きましょうと。特徴的なのは、木造である点です。RC造のグループホームが数多く存在しますが、木造は温かみもあって調湿効果にも優れています。さらに建築コストを抑えることも可能です。
この先の日本を見ると、2035年には団塊世代の方たちがだいぶお年を召して、一旦高齢者が減ると言われています。つまり、20年ぐらい経つと、高齢者向けの施設が供給過剰に陥る可能性もある。その点、木造ならば解体コストも抑えられるんです。
――グループホームでの土地の有効活用を図りたいというニーズも高まっているのでしょうか?
藤郷 グループホームは決して、高収益なわけではありません。今回手掛けるものでいうと、グループホームは18室で、建築コストは坪90万円程度。さらに、小規模多機能型居宅介護事業所が設置されるので宿泊できる施設が9室ある構造になります。月々の利用額は5万円前後ですので、表面利回りは8%程度でしょう。
ただ、介護という分野だけあって、入居者の入れ替わりが少なく、介護事業者さんも長期のテナント契約になります。利回りは決して高くない反面、安定経営が実現できるのです。おそらく今後は、このようなグループホームに加えて、保育所での土地の有効活用を図る案件が増えていくのではないかと予想しています。