事業承継における最大の課題は、やはり自社株をどのように引き継ぐかでしょう。今回は、そのポイントとなる「自社株の評価」について見ていきます。

株式の取得者が同族株主等に該当するか否か?

円滑な事業承継を進めるうえで大きなポイントとなるのが「株式の評価と承継」です。株式の評価額によっては、相続税や贈与税に大きな影響を与える場合がありますので、事業承継を考える際には、株式評価についてもあらかじめ考えておく必要があるのです。

 

今回は、株式を相続または贈与により取得した場合、どのように評価されるかについて考えてみましょう。ここでは、特に中小企業の事業承継において問題となる非上場株式について相続税法による評価方法を紹介します(この評価方法はM&Aで使われる評価方法とは異なります)。

 

まず、非上場株式を取得した株主が同族株主等に該当する場合には、原則的評価方式で評価します。同族株主等に該当しない場合は、特例的評価方式である配当還元方式で評価します(同族株主等とは、株主やその関係者のグループで議決権の合計30%以上〔50%超所有するグループがいる場合にはそのグループのみ〕所有する場合の株主とその同族関係者のことをいいます)。

 

原則的評価方式では、会社を卸売業、小売・サービス業、その他の業種に分け、純資産価額および従業員数または取引金額に応じて大会社・中会社・小会社に区分します。

 

大会社の株式の価額は、類似業種比準価額によって評価します。ただし、納税者の選択によって純資産価額で評価することもできます。中会社の株式は、類似業種比準価額と純資産価額との併用方式で評価します。小会社の株式は純資産価額で評価しますが、これに代えて「類似業種比準価額×0.5+純資産価額×0.5」として評価することもできます。

株式の評価額が高ければ高いほど相続税は高くなる

類似業種比準価額というのは、国税庁が公表する業種の類似する上場会社の平均株価に比準させて株式価格を求める方式です。比準要素は、一株あたりの配当金額、一株当たりの利益金額、一株あたりの純資産価額の3要素になります。

 

純資産価額は、会社の資産および負債を評価通達の定めに従って評価し、一株当たりの純資産価額を求める方式です。純資産価額は、原則として相続等が起きたときの資産・負債の相続税評価額を計算することになります。

 

配当還元価額は、その株式を所有することによって受け取る一年間の配当金額を、一定の利率で還元して評価する方式です。

 

各々の評価方法についての詳細説明は別項に譲りますが、一般的に相続あるいは贈与する株式の評価額が高ければ高いほど、相続税も高くなります。逆に評価額を低くすることができれば、相続税を安く抑えることができます。そこで、株式の評価方式を意識しながら事業承継の準備を進めておくことで、有効な節税対策が可能となるのです。事業承継を検討するのに「早すぎる」ということはないのです。

 

 

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