下請中小企業振興法の「振興基準改正」のポイントとは?

昨年12月、下請代金の支払いについての通達が実に50年ぶりに見直され、さらに「下請中小企業振興法」の振興基準が大幅に改正された。下請法等の改正により、企業を取り巻く環境はどのように変わるのか。そして親事業者(発注者)として、どのようなサプライヤー(下請会社)の支援体制が求められるのか。連載第3回目は、下請中小企業振興法の「振興基準改正」のポイントについて、中小企業庁の安藤保彦取引課長にお話を伺った。聞き手は、売掛金の電子債権化事業に取り組むTranzaxの小倉隆志社長である。

事業者の取り組みを応援するための「支援法」

小倉 下請中小企業振興法の“振興基準”の改正というのは、どのようなものですか?

 

安藤 まず、下請中小企業振興法は、その名のとおり下請中小企業の経営基盤の強化を促し、下請関係の改善・自立化を図っていくための法律です。規制法としての下請法とは異なり、強制法規ではない、事業者の取り組みを応援するための“支援法”という位置づけです。

 

この下請振興法の規定に基づいて、経産大臣は親事業者と下請事業者の望ましい、あるべき取引の姿を示す「振興基準」を定めることになっているのです。

 

Tranzax代表取締役社長 小倉隆志氏(左) 中小企業庁 取引課長 安藤保彦氏(右)
Tranzax代表取締役社長 小倉隆志氏(左) 中小企業庁 取引課長 安藤保彦氏(右)

 

改正された6つの基準とは?

小倉 それがどのように変わったのでしょう?

 

安藤 親事業者と下請事業者がWin-Winの関係を築いて、ともに付加価値向上を図り、新たな設備投資や賃上げができるような好循環を実現していくために、主に6つの基準を改正しています。1つ目は取引先の生産性向上等への協力。親事業者は生産性向上に努める下請事業者に対して、面談や工場訪問、サプライチェーン全体での連携など、必要な協力を積極的に行うようにとしました。2つ目は合理的な原価低減要請。これは原価低減要請自体を否定しているわけではなく、客観的な経済合理性や十分な協議手続きを欠く要請と受け止められないよう、合理性の確保に努めること、としました。

 

3つ目は取引対価への労務費上昇分の影響の考慮。下請事業者から取引対価の見直し要請があった場合には、人手不足や最低賃金の引き上げ等に伴う労務費の上昇について、その影響を十分に加味して協議するように、としています。4つ目は型の保管・管理の適正化です。先にも触れたように、型の保管に関しては下請事業者が割を食っているケースが少なくありません。ですので、金型・木型の保管に関しては双方が十分に協議したうえで、必要事項を明確に定めること。また、親事業者の事情で下請事業者がその保管を求められる場合には、親事業者がその保管費用を負担するようにと明記しました。

 

5つ目は手形支払及び支払関係。これは、あとで解説する「下請代金支払条件に関する通達」(手形通達)と同じ内容ですが、簡単に言うと、下請代金の支払いは原則、現金払いとし、手形で支払う場合には割引料等を親事業者が負担しましょうと定めたものです。6つ目は「業種別下請ガイドライン」及び「自主行動計画」の位置づけです。親事業者と下請事業者が望ましい取引慣行を実現するためには、業種・業界挙げての取り組みが欠かせません。

 

そのため、世耕プランの一環として主だった産業界の皆様に、今回の基準改正を踏まえて「自主行動計画」をつくっていただき、今後、各業界の大企業が先頭に立ってその行動計画を実践していただくという方向で中小企業振興を推進して行こうと考えているのです。

 

中小企業庁 取引課長

通商産業省(現、経済産業省)入省後、ベンチャー支援や社会起業家支援、地域活性化などの仕事に携わる。高知市副市長(出向)、博覧会推進室長、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構総務企画部長などを経て、2015年7月から現職。

著者紹介

Tranzax株式会社 代表取締役社長

一橋大学卒業後、野村證券に入社。金融法人部リレーションシップマネージャーとして、ストラクチャード・ファイナンス並びに大型案件の立案から実行まで手掛ける。主計部では経営計画を担当。経営改革プロジェクトを推進し、事業再構築にも取り組んだ。2004年4月にエフエム東京執行役員経営企画局長に。同年10月には放送と通信の融合に向けて、モバイルIT上場企業のジグノシステムを買収。2007年4月にはCSK-IS執行役員就任。福岡市のデジタル放送実証実験、電子記録債権に関する研究開発に取り組んだ。2009年に日本電子記録債権研究所(現Tranzax)を設立。

著者紹介

連載下請法等改正~親事業者として求められるサプライヤー支援体制とは?

取材・文/田茂井治 撮影/永井浩 ※本インタビューは、2017年2月13日に収録したものです。