(※写真はイメージです/PIXTA)
「買付を入れた以上、断れません」
相談者は、今回の購入を見送る方向で仲介会社に伝えようとしました。ところが、仲介会社は簡単には引き下がりません。
「買付を入れている以上、断れない」
という趣旨のことを言い出したのです。
不動産売買では、購入希望者が「買付証明書」などを提出することがあります。しかし、通常は買付証明書を提出しただけで売買契約が成立するわけではありません。今回も、まだ売買契約は締結されていませんでした。
私は相談者に、購入申込みを撤回して問題ないと伝えました。それでも仲介会社が理解しないようなら私も同行して説明するという話にまでなりましたが、単に購入を断るだけでは仲介会社が引き下がらない雰囲気もありました。
そこで、相談者の収入や将来の支出を踏まえ、無理なく返済できる金額から逆算して600万円の値引きを条件に購入を検討するという形で交渉することにしました。4,500万円から600万円引きの3,900万円です。
結果として、相談者は私が同行することなく、自分で仲介会社と購入撤回の話を終えることができました。ところが、最後に仲介会社の担当者から、こんな言葉があったそうです。
「ホントは拒否できないんですよ」
売買契約前の購入申込みを撤回した相談者に対する、捨て台詞のようなものでした。
大手仲介会社だから安心、とは限らない
不動産を購入する際、大手仲介会社であれば安心だと考える人も多いでしょう。しかし、実際に対応するのは個々の担当者です。
会社の知名度が高いことと、十分な説明を受けられることは別の問題です。今回の相談では、契約までの期間が短く、判断材料となる資料も十分ではありませんでした。
また、住宅購入で大切なのは、住宅ローンを借りられるかどうかだけではありません。購入後にどれだけ生活の余裕を残せるかも重要なのです。今回の相談者は年収800万円という高い収入がありましたが、子供を育てながら一人で家計を支えていく立場です。4,500万円の住宅を購入できたとしても、その後の生活に十分な余裕がなければ、安心して暮らせるとは限りません。
その後、相談者は別の仲介会社を通じて、3,000万円弱のマンションを購入しました。当初の4,500万円から、購入価格は1,500万円以上下がりました。住宅ローンの返済負担が軽くなり、家計にも余裕が生まれます。お子さんの教育費はもちろん、今後の転職や転居など、ライフスタイルの変化にも柔軟に対応できるでしょう。
不動産の契約書に判を押す権利は、他の誰でもない購入者自身にあります。大手の看板や営業担当者の勢いに流されず、少しでも違和感を覚えたら一度立ち止まること。その選択が、将来の自分と家族の生活を守ることにつながります。
竹下 昌成
竹下FP事務所 代表
日本FP協会認定CFP・TAC講師