空室でも家賃が入る「サブリース」。不動産投資の初心者には安心できる仕組みに見えます。しかし、購入時にはメリットだった家賃保証が、売却時には大きな障害になる場合があります。20代の男性投資家から受けた売却相談をもとに、サブリース付き物件が安く評価される理由や、契約解除の難しさを解説します。借地借家法による制約に加え、個人投資家と大手サブリース会社との知識・資金力の差も無視できません。現役大家CFPの竹下昌成氏が、事例をもとに紹介します。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「空室でも家賃保証があるなんてサイコーじゃん!」20代男性投資家が、マンションの売却価格「360万円ダウン」に愕然…最高なはずの〈サブリース契約〉に足を引っ張られたワケ【現役大家CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

契約を解除したくてもできない。個人投資家と大手企業の力の差

それなら、売却する前にサブリース契約を解除すればよいのでしょうか。実は、そう簡単ではありません。

 

サブリースでは、オーナーが貸主、サブリース会社が借主という賃貸借契約を結んでいます。この契約には借地借家法が適用されるため、オーナー側からの解約には制約があります。

 

さらに問題なのが、個人投資家とサブリース会社との知識や資金力の差です。サブリース会社は、不動産取引や契約実務に精通した事業者です。大手企業であれば、法務部門や顧問弁護士などの体制も整っています。一方、個人投資家の多くは、不動産や法律の専門家ではありません。

 

もちろん、契約内容や事情によっては、裁判で争うことも可能です。しかし、すでに締結した契約を解除しようとする以上、法律上の根拠が必要です。裁判を起こせば解決するというものでもありません。弁護士費用や裁判にかかる時間、結果がどうなるか分からないリスクもあります。数百万円の売却価格の差を取り戻すために、どこまで費用と時間をかけられるでしょうか。

 

結果として、サブリース契約の解除を諦め、契約が付いたまま売却することを選ぶ投資家もいるでしょう。
その場合、買主はサブリース会社から受け取れる家賃をもとに利回りを計算するため、売却価格は低く評価される可能性があります。

 

購入時には「家賃保証があるから安心」と考えていた契約が、売却時には大きな負担になるのです。

20代で購入したマンションを、一生持ち続けるとは限らない

今回相談に来た男性は20代でした。不動産投資を始めたばかりの頃は、毎月の家賃収入や住宅ローンの返済額に目が向きがちです。しかし、不動産投資では、将来の売却まで考えておく必要があります。

 

20代で購入したマンションを、一生所有し続けるとは限りません。収入が増えれば、より収益性の高い物件に買い替えたくなるかもしれません。結婚や転職などによって、資金計画が変わることもあるでしょう。別の不動産を購入するために、現在の物件を売却して自己資金を確保したい場合もあります。

 

そのとき、売却価格が想定より低ければ、次の投資計画にも影響します。さらに、売却代金で住宅ローンの残債を返済できなければ、自己資金を追加しなければ売却できない場合もあります。購入時には安心材料だったサブリース契約が、将来の選択肢を狭めてしまうことがあるのです。

 

サブリースそのものが悪いわけではありません。空室リスクを抑えたい人や、管理の手間を減らしたい人にとっては、利用するメリットもあります。

 

ただし、サブリース付き物件を購入するなら、少なくとも次の点は確認しておきたいところです。

  • サブリース会社から受け取る家賃は、周辺の相場と比べて妥当か
  • 家賃保証の期間と、家賃の見直し条件はどうなっているか
  • オーナー側からサブリース契約を解除できる条件は何か
  • 売却する場合、サブリース契約はどう扱われるのか
  • サブリース契約が付いたままでも、希望する価格で売却できるのか

 

不動産投資は、購入して終わりではありません。将来の買い替えや資産形成の計画まで考えたうえで、購入する物件や契約内容を選ぶ必要があります。

 

「家賃保証があるから安心」という説明だけで判断せず、購入前に契約書をよく確認しておきたいものです。
 

 

竹下 昌成

竹下FP事務所 代表

日本FP協会認定CFP・TAC講師