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契約を解除したくてもできない。個人投資家と大手企業の力の差
それなら、売却する前にサブリース契約を解除すればよいのでしょうか。実は、そう簡単ではありません。
サブリースでは、オーナーが貸主、サブリース会社が借主という賃貸借契約を結んでいます。この契約には借地借家法が適用されるため、オーナー側からの解約には制約があります。
さらに問題なのが、個人投資家とサブリース会社との知識や資金力の差です。サブリース会社は、不動産取引や契約実務に精通した事業者です。大手企業であれば、法務部門や顧問弁護士などの体制も整っています。一方、個人投資家の多くは、不動産や法律の専門家ではありません。
もちろん、契約内容や事情によっては、裁判で争うことも可能です。しかし、すでに締結した契約を解除しようとする以上、法律上の根拠が必要です。裁判を起こせば解決するというものでもありません。弁護士費用や裁判にかかる時間、結果がどうなるか分からないリスクもあります。数百万円の売却価格の差を取り戻すために、どこまで費用と時間をかけられるでしょうか。
結果として、サブリース契約の解除を諦め、契約が付いたまま売却することを選ぶ投資家もいるでしょう。
その場合、買主はサブリース会社から受け取れる家賃をもとに利回りを計算するため、売却価格は低く評価される可能性があります。
購入時には「家賃保証があるから安心」と考えていた契約が、売却時には大きな負担になるのです。
20代で購入したマンションを、一生持ち続けるとは限らない
今回相談に来た男性は20代でした。不動産投資を始めたばかりの頃は、毎月の家賃収入や住宅ローンの返済額に目が向きがちです。しかし、不動産投資では、将来の売却まで考えておく必要があります。
20代で購入したマンションを、一生所有し続けるとは限りません。収入が増えれば、より収益性の高い物件に買い替えたくなるかもしれません。結婚や転職などによって、資金計画が変わることもあるでしょう。別の不動産を購入するために、現在の物件を売却して自己資金を確保したい場合もあります。
そのとき、売却価格が想定より低ければ、次の投資計画にも影響します。さらに、売却代金で住宅ローンの残債を返済できなければ、自己資金を追加しなければ売却できない場合もあります。購入時には安心材料だったサブリース契約が、将来の選択肢を狭めてしまうことがあるのです。
サブリースそのものが悪いわけではありません。空室リスクを抑えたい人や、管理の手間を減らしたい人にとっては、利用するメリットもあります。
ただし、サブリース付き物件を購入するなら、少なくとも次の点は確認しておきたいところです。
- サブリース会社から受け取る家賃は、周辺の相場と比べて妥当か
- 家賃保証の期間と、家賃の見直し条件はどうなっているか
- オーナー側からサブリース契約を解除できる条件は何か
- 売却する場合、サブリース契約はどう扱われるのか
- サブリース契約が付いたままでも、希望する価格で売却できるのか
不動産投資は、購入して終わりではありません。将来の買い替えや資産形成の計画まで考えたうえで、購入する物件や契約内容を選ぶ必要があります。
「家賃保証があるから安心」という説明だけで判断せず、購入前に契約書をよく確認しておきたいものです。
竹下 昌成
竹下FP事務所 代表
日本FP協会認定CFP・TAC講師