「疲れてきちゃってね」半年後、娘に打ち明けたこと
「一番つらかったのは、家にいても自分の時間がなくなったことなんです」
百合子さんは、同居後の生活についてそう振り返ります。
以前は夫婦で昼食を食べに出かけたり、午後から趣味の手芸教室に通ったりしていました。
ところが、同居後は孫たちの帰宅時間を気にして外出を控えるようになりました。学校が休みの日には昼食も用意するため、まとまった時間を取りにくくなったそうです。
文雄さんも、夕方に散歩へ出かけようとすると、孫から「宿題を見て」と頼まれることが増えていました。
「孫たちに悪気はないんです。でも毎日となると、こちらも疲れてしまうんですよね」
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、子どもがいる65歳以上の人のうち、「同居したい、同居を続けたい」と回答した人は23.2%、「同居ではなく近居したい」は32.8%でした。
また、同居や近居を希望する人にそのメリットを尋ねたところ、「子や孫の世話ができる」と回答した人は27.0%でした。
子や孫の世話をすることは、同居を希望する理由の一つになり得ます。ただし、実際にどこまで担えるかは、年齢や体力、家族の生活状況によって異なります。
百合子さんの場合、娘が家に入れる月8万円については特に不満はありませんでした。食費や光熱費の増加分はおおむね賄えていたからです。
それでも家事に追われる毎日が続くと、次第に気持ちの余裕がなくなっていったといいます。
ある日、百合子さんは美咲さんに「少し話したいことがある」と切り出しました。
「一緒に暮らせてうれしいんだけど、お母さんも毎日ごはんを作るのは疲れてきちゃってね」
美咲さんは驚いた様子でした。
「そんなに負担になってたの? いつも大丈夫って言ってくれるから、甘えちゃってた」
百合子さんは、娘の仕事を応援したい気持ちは変わらないと伝えたうえで、週に何日かは夕食作りを休みたいこと、手芸教室にも以前のように通いたいことを話しました。
その後、家族で家事の分担を見直すことに。
平日の夕食は百合子さんが週3日担当し、残りは美咲さんが作り置きや宅配弁当などを利用して用意することにしました。孫たちも、自分の洗濯物を片づけたり、食後の食器を運んだりするようになりました。
また、百合子さんが手芸教室に通う日は、美咲さんが放課後の預かりサービスを利用することにしています。
「全部自分でやらなきゃと思っていたのが、よくなかったのかもしれません」
百合子さんはそう話します。
文雄さんも、孫たちには「おじいちゃんにも予定があるから、宿題は先に自分でやってみよう」と伝えるようになりました。
「孫と暮らせるのは今でもうれしいですよ。でも、夫婦2人の時間も、もう少し大切にしたいんです」
家族との同居では、食費や光熱費などの負担だけでなく、家事や育児に費やす時間も変わります。親世代が無理を重ねないためには、同居を始める段階で役割を話し合い、生活が落ち着いてからも分担を見直すことが大切でしょう。
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