「毎月少しずつ足りないんだ」娘が初めて知った父の家計
久しぶりに帰省した美紀さんは、父親に毎月の生活費について尋ねました。
最初は「心配するほどじゃないよ」と話していた正雄さんでしたが、娘が一緒に家計を整理することを提案すると、通帳や公共料金の明細を見せてくれたそうです。
正雄さんの年金は月約13万円。税金や社会保険料を差し引くと、手元に残るのは月11万円台です。
一方、普段の生活費は食費や光熱費、通信費、医療費などを合わせて月10万5,000円ほど。
「これなら、少しは残るんじゃない?」
美紀さんがそう言うと、正雄さんは別のノートを取り出しました。
そこには、固定資産税や火災保険料、家の修繕費など、毎月の生活費には含めていない支出が書き出されていました。
「古い家だから、何かとお金がかかるんだよ。去年も給湯器の修理をしたしね」
正雄さんによると、年間の臨時支出は約15万円。月平均にすると1万2,500円です。
さらに冬場は、通常の月より灯油代が増えるため、生活費が月12万円を超えることもあります。
「毎月少しずつ足りないんだ。貯金もあるけど、なるべく減らしたくなくてね」
正雄さんの預貯金は約280万円。急な修繕や入院に備え、できるだけ手をつけずに残しておきたいと考えていました。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の単身無職世帯では、月平均の可処分所得が11万8,465円、消費支出が14万8,445円となっています。平均では、毎月約3万円の不足が生じている計算です。
また、総務省『2025年平均消費者物価指数』によると、灯油の価格指数は前年比6.7%上昇しました。暖房費の負担を気にする正雄さんにとって、無視できない変化です。
「冬になる前から、こんなに気を使っていたなんて知らなかった」
美紀さんは、父親が一人で家計をやりくりしてきたことを初めて実感したそうです。
その後、親子は冬場の支出を改めて整理しました。美紀さんは毎月の仕送りを提案しましたが、正雄さんは「まだ自分で生活できるから」と遠慮します。
そこで、まずは自宅の断熱状態や暖房器具の点検を行い、無理のない範囲で光熱費を抑えられる方法を調べることにしました。美紀さんも、冬場は定期的に電話をして、暖房や食事に困っていないか確認するつもりです。
「寒いのを我慢してまで節約しないでね。必要なときはちゃんと言ってほしい」
そう伝えると、正雄さんは「分かったよ」と答えたそうです。
年金生活では、毎月の食費や日用品代だけでなく、季節によって増える光熱費や住宅の維持費も考慮する必要があります。離れて暮らす家族も、普段の生活費だけで判断せず、年間を通じてどのような支出があるのかを知っておくことが、必要な支援を考えるきっかけになるでしょう。
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