「昼飯、何?」定年翌朝、妻が返した思いがけない言葉
「定年退職した翌日、妻に『昼飯、何?』と聞いたんです。そしたら、思いがけないことを言われましてね」
そう振り返るのは、61歳の正志さん(仮名)です。
正志さんは長年勤めたメーカーを退職し、現在は妻の和子さん(59歳・仮名)と2人で暮らしています。子ども2人はすでに独立。住宅ローンも完済し、退職後は趣味の釣りや旅行を楽しむつもりでした。
正志さんは60歳以降も再雇用で働いていましたが、61歳を区切りに退職することを決めたといいます。一方、和子さんは現在も近所のスーパーで週4日、パート勤務を続けています。
退職翌日、正志さんはいつもより遅く起き、リビングで新聞を読んでいました。和子さんはその日、午後からの勤務を控え、午前中は家にいました。
午前11時を過ぎたころ、正志さんが台所にいる妻に声をかけたのです。
「昼飯、何?」
和子さんは返事をせず、しばらくして「あとで話すから」とだけ言い、洗濯物を干しに行きました。正志さんは首をかしげましたが、特に気にせずテレビを見始めました。
約30分後、和子さんがリビングに戻ってきます。
「さっきのお昼ごはんの話だけど」
「ああ、何か作るの?」
正志さんがそう答えると、和子さんは落ち着いた口調で言いました。
「私、今日からあなたのお昼ごはんは作らないことにしたの」
「えっ?」
正志さんは思わず聞き返しました。
「どういうこと? 俺の分だけ作らないってこと?」
「そう。家にいる日は、自分で用意してほしいの」
正志さんには、妻が何を言い出したのか理解できませんでした。
「昨日まで普通に作ってくれてただろう?」
「昨日までは、あなたは仕事に行っていたでしょう」
和子さんはそう答えました。
正志さんが働いていたころ、平日の昼食は社員食堂や外食で済ませていました。一方、和子さんは仕事の合間に自分の昼食を用意していたそうです。
「私が家にいるからって、これから毎日2人分のお昼を作ることになるのは困るの」
正志さんは「別に簡単なものでいいんだけど」と言いかけました。すると和子さんは、少し強い口調で返します。
「簡単なものでいいなら、自分で作れるでしょう?」
その言葉に、正志さんは黙り込みました。
