(※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職を迎えると、長年続けてきた生活のリズムが大きく変わります。毎日出勤していた人が自宅で過ごすようになれば、食事の時間や家事の負担にも変化が生じるでしょう。特に、夫婦の一方が家事を主に担ってきた家庭では、退職後の役割分担について改めて話し合う必要が出てくることもあります。何気ないひと言が、そのきっかけになる場合もあるようです。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「昼飯、何?」定年翌朝、妻が返した思いがけない言葉

「定年退職した翌日、妻に『昼飯、何?』と聞いたんです。そしたら、思いがけないことを言われましてね」

 

そう振り返るのは、61歳の正志さん(仮名)です。

 

正志さんは長年勤めたメーカーを退職し、現在は妻の和子さん(59歳・仮名)と2人で暮らしています。子ども2人はすでに独立。住宅ローンも完済し、退職後は趣味の釣りや旅行を楽しむつもりでした。

 

正志さんは60歳以降も再雇用で働いていましたが、61歳を区切りに退職することを決めたといいます。一方、和子さんは現在も近所のスーパーで週4日、パート勤務を続けています。

 

退職翌日、正志さんはいつもより遅く起き、リビングで新聞を読んでいました。和子さんはその日、午後からの勤務を控え、午前中は家にいました。

 

午前11時を過ぎたころ、正志さんが台所にいる妻に声をかけたのです。

 

「昼飯、何?」

 

和子さんは返事をせず、しばらくして「あとで話すから」とだけ言い、洗濯物を干しに行きました。正志さんは首をかしげましたが、特に気にせずテレビを見始めました。

 

約30分後、和子さんがリビングに戻ってきます。

 

「さっきのお昼ごはんの話だけど」

 

「ああ、何か作るの?」

 

正志さんがそう答えると、和子さんは落ち着いた口調で言いました。

 

「私、今日からあなたのお昼ごはんは作らないことにしたの」

 

「えっ?」

 

正志さんは思わず聞き返しました。

 

「どういうこと? 俺の分だけ作らないってこと?」

 

「そう。家にいる日は、自分で用意してほしいの」

 

正志さんには、妻が何を言い出したのか理解できませんでした。

 

「昨日まで普通に作ってくれてただろう?」

 

「昨日までは、あなたは仕事に行っていたでしょう」

 

和子さんはそう答えました。

 

正志さんが働いていたころ、平日の昼食は社員食堂や外食で済ませていました。一方、和子さんは仕事の合間に自分の昼食を用意していたそうです。

 

「私が家にいるからって、これから毎日2人分のお昼を作ることになるのは困るの」

 

正志さんは「別に簡単なものでいいんだけど」と言いかけました。すると和子さんは、少し強い口調で返します。

 

「簡単なものでいいなら、自分で作れるでしょう?」

 

その言葉に、正志さんは黙り込みました。

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