「買い物は俺が行くよ」80歳父が息子に通帳を見せた理由
「最近、息子が優しくなったんです。ありがたいことだと思っていたんですけどね……」
そう話すのは、80歳の正雄さん(仮名)です。
正雄さんは妻を4年前に亡くし、現在は一人暮らし。月約21万円の公的年金を受け取り、住宅ローンを完済した自宅で暮らしています。
預貯金は約5,000万円。長年の会社勤めで蓄えたお金と退職金の残りで、生活に大きな不安はありませんでした。
ただ、昨年から膝の痛みが強くなり、重い荷物を持って歩くことが負担になっていました。
そんな父を気遣うようになったのが、車で30分ほどの場所に住む長男の健一さん(52歳・仮名)です。
「買い物くらい俺が行くよ。毎週土曜日に必要なものを買ってくるから」
以前は仕事が忙しく、実家に顔を出すのは年に数回ほど。それだけに、正雄さんは息子の申し出をうれしく感じたといいます。
最初は買い物リストを渡し、代金を現金で精算していました。
ところが、ある日、健一さんがこう提案します。
「毎回お金を渡してもらうのも面倒だろう。買い物用の口座から引き出して払うようにしようか」
正雄さんは、普段の生活費に使っている銀行口座のキャッシュカードを息子に預け、暗証番号も教えてしまいました。
「息子ですから、変なことに使うなんて考えもしませんでした」
それから半年ほど、健一さんは毎週食料品や日用品を届けてくれました。
買い物代は週に1万~1万5,000円程度。正雄さんも、おおよその金額は把握していたつもりでした。
しかしある日、銀行で通帳を記帳した際、見覚えのない出金が並んでいることに気づきます。
5万円、10万円、また10万円。
「こんなに使った覚えはないんだけどな……」
半年間の出金額を確認すると、買い物代として想定していた約30万円を大きく上回っていました。不審な出金だけで、合計約60万円に上ります。
正雄さんは息子に電話をかけました。
「健一、ちょっと聞きたいんだけど、このお金は何に使ったんだ?」
電話の向こうで、健一さんはしばらく黙っていました。
