「売れないなら誰が管理する?」再び向き合った相続問題
和子さんと正志さんは、まず現地を確認することにしました。
車で片道3時間ほどかけて訪れた土地は、想像以上に荒れていました。
「これ、本当に父さんの土地なのか……」
正志さんがつぶやきます。
近くの不動産会社に査定を依頼したところ、売却できたとしても数十万円程度になる可能性があり、買い手がつく時期は分からないとのことでした。
草刈りを業者に頼めば、その都度費用がかかります。現地まで通う交通費も無視できません。
「私はもう70歳よ。毎年ここまで管理に来るなんて無理だわ」
和子さんがそう言うと、正志さんも困った表情を浮かべました。
「俺だって近くに住んでるわけじゃないし、ずっと面倒を見るのは難しいよ」
総務省『令和5年住宅・土地統計調査』によると、全国の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%でした。このうち、賃貸・売却用や別荘などを除く空き家は約385万戸に上ります。
今回見つかったのは建物のない土地であり、この空き家数には含まれません。ただ、利用されなくなった不動産を誰が管理するのかという問題は、土地の相続でも生じます。
和子さんたちが司法書士に相談すると、父親の死亡時に所有していた土地は相続財産に含まれ、改めて権利関係を整理する必要があると説明されました。
以前の遺産分割協議書には、今回の土地についての取り決めがありません。
「もう一度、弟と話し合わないといけないんですね」
和子さんは肩を落としました。
司法書士からは、相続登記が義務化されていることや、一定の要件を満たす土地については、国に所有権を引き渡す「相続土地国庫帰属制度」があることも教わりました。ただし、この制度は申請すれば必ず利用できるものではなく、審査手数料や承認後の負担金も必要です。
「父さんの土地だから、できればきちんと整理したいけど……」
正志さんの言葉に、和子さんもうなずきました。
結局、2人は土地の管理費用を当面折半しながら、売却の可能性や国庫帰属制度の利用条件を調べることにしました。土地をどちらが取得するかについては、必要な調査を終えてから決める予定です。
「相続って、預金を分けたら終わりだと思っていました。父が何を持っていたのか、もっと確認しておけばよかったですね」
和子さんはそう振り返ります。
相続では、故人の預貯金や自宅に目が向きやすいものの、離れた場所にある土地などが見落とされる場合もあります。相続手続きを進める際には、所有不動産の情報を確認し、後から財産が見つかった場合の対応も含めて、相続人同士で話し合っておくことが重要でしょう。
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