「今さら父の土地が?」相続から5年後…思いがけない連絡
「父の遺産は、もう全部分けたはずなんですけど……」
そう戸惑いを口にしたのは、70歳の和子さん(仮名)です。
和子さんは夫と死別し、現在は一人暮らし。月約18万円の公的年金を受け取り、住宅ローンを完済したマンションで暮らしています。
5年前、父親が92歳で亡くなりました。母親はそれ以前に他界しており、相続人は和子さんと3歳下の弟・正志さん(67歳・仮名)の2人でした。
父親が残した財産は、預貯金約2,400万円と実家の土地・建物です。
実家には正志さんが住み続けることになり、預貯金は不動産の評価額も考慮して分けました。きょうだいで遺産分割協議書を作成し、必要な名義変更も済ませています。
「弟とも特にもめませんでしたし、相続のことは終わったと思っていました」
ところが、ある日、正志さんから電話がかかってきました。
「姉さん、父さんの土地がほかにもあるらしいんだ」
話によると、父親名義の土地に隣接する土地を売却しようとしている人がおり、境界を確認する過程で、父親が登記上の所有者になっていることが分かったそうです。
隣地の関係者から依頼を受けた土地家屋調査士が所有者の死亡を確認し、相続人への連絡を進めた結果、正志さんのもとに問い合わせが届いたのでした。
「そんな土地、聞いたことないわよ」
和子さんには、まったく心当たりがありません。
後日、登記事項証明書などを確認すると、父親が約40年前に購入した地方の土地だと判明しました。
面積は約180平方メートル。かつて別荘地として分譲された区画の一つで、建物はありません。
「父さん、昔、別荘を持ちたいって言ってたことがあったな」
正志さんの言葉で、和子さんも幼いころに父が旅行先の土地について話していたことを思い出しました。ただ、実際に購入していたとは知りませんでした。
「土地があるなら、売ればいいんじゃない?」
最初はそう考えた和子さん。しかし、不動産会社に相談すると、思わぬ返事がありました。
「このあたりは取引が少なく、すぐに買い手が見つかるとは限りません」
現地の道路は狭く、周辺には利用されていない区画も目立つといいます。
さらに土地には雑草や低木が生い茂っており、隣地の所有者からも管理を求められていました。
「財産が見つかったのに、どうしてこんなに困ることになるんでしょうね」
和子さんは、ため息をつきました。
