(※写真はイメージです/PIXTA)

年齢を重ねると、住み慣れた家で暮らし続けるか、生活しやすい場所へ移るかを考える機会が増えます。子どもが独立して遠方に暮らしている場合、将来の通院や日常の買い物を考え、子世帯の近くへの転居を検討する人もいるでしょう。ただ、住む場所が近くなれば、親子の付き合い方にも変化が生まれます。互いの生活を尊重するためには、転居後の関わり方を考えておくことも大切です。

「そんなに心配しなくていいよ」転居後に親子が決めたこと

転居後、美咲さんは週に何度も両親のマンションを訪れるようになりました。

 

仕事帰りに食料品を届けたり、休日には「買い物に連れて行こうか」と連絡したり。孫も時折、顔を見せてくれます。

 

最初は夫婦も喜んでいました。ところが、ある土曜日のことです。

 

「今日、そっちに寄るね。お昼、一緒に食べよう」

 

美咲さんから連絡が来たとき、隆夫さんと和子さんは映画を見に行く準備をしていました。

 

「今日は出かけるから、また今度にしてくれないか」

 

隆夫さんがそう伝えると、美咲さんは少し驚いた様子だったそうです。

 

「えっ、そうなの? 何か買っていこうと思ってたんだけど」

 

その日の夜、和子さんが夫に言いました。

 

「美咲は心配してくれているのよ。でも、毎週のように予定を合わせるのは、ちょっと大変ね」

 

娘の厚意はありがたいものの、近くに住むようになってから、訪問を断ることに気を使うようになっていたのです。

 

内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、子どもがいる65歳以上の人のうち、「同居ではなく近居したい」と答えた割合は32.8%でした。一方、「同居したい、同居を続けたい」は23.2%となっています。

 

また、同居または近居を希望する人にメリットを尋ねたところ、「ちょっとした手助けが必要な場合に安心して過ごせる」が88.7%に上りました。

 

隆夫さん夫婦にとっても、娘が近くにいる安心感は大きなものでした。ただ、2人が望んでいたのは、日常的に世話をしてもらう生活ではありません。

 

数日後、隆夫さんは美咲さんに率直な気持ちを伝えました。

 

「いろいろ気にかけてくれてありがとう。でも、そんなに心配しなくていいよ。必要なときは、こっちから頼むから」

 

美咲さんは少し寂しそうな顔をしましたが、こう答えたといいます。

 

「近くに来てくれたから、つい顔を見たくなっちゃって。でも、2人の予定もあるよね」

 

親子で話し合い、訪問するときは事前に都合を確認することにしました。買い物や通院は基本的に夫婦で行い、重い荷物の運搬など、手助けが必要なときは娘に相談します。

 

また、急な体調不良に備えて、互いの連絡先やかかりつけ医の情報も共有しました。

 

それからは、月に2回ほど一緒に食事をするのが楽しみになっています。

 

「娘が近くにいるのは心強いですよ。でも、私たちも自分たちの予定を楽しみたい。今のところ、このくらいがちょうどいいですね」

 

高齢期の住み替えでは、住宅の設備や交通の便に加え、家族との関わり方も暮らしやすさに影響します。親子が近くに住む場合には、訪問の頻度や手助けを頼む場面について互いの希望を伝え合うことで、それぞれが無理なく生活を続けやすくなるでしょう。

 

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