(※写真はイメージです/PIXTA)

退職後は、現役時代には難しかった長期旅行や趣味を楽しみたいと考える人もいるでしょう。まとまった貯蓄があれば、元気なうちに使おうという判断にも十分な理由があります。ただ、給与収入がなくなった後は、旅行などの特別な支出に加え、毎月の生活費も預貯金から補う場合があります。資産の減り方を具体的に把握しないまま支出を続けると、当初の計画とのずれが大きくなることもあります。

通帳を見直して分かった資産減少の理由

夫婦の公的年金は、65歳から合わせて月約25万円。手取りでは月22万円程度です。

 

一方、毎月の生活費は約30万円。外食や自家用車の維持費なども含まれています。

 

「現役時代と同じように暮らしていたんだな」

 

隆夫さんは家計簿を見ながら、そうつぶやきました。

 

さらに、60歳から64歳までの5年間は、夫婦ともに公的年金を受け取っていませんでした。

 

その間も、食費や光熱費、保険料などを預貯金から支払っています。退職後には自宅の給湯器を交換し、外壁の補修も行いました。

 

過去6年間の支出を整理すると、海外旅行の約1,800万円に加え、年金収入で賄えなかった生活費や住宅の修繕費などで約1,400万円を取り崩していたことが分かりました。

 

総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月の可処分所得が22万1,544円、消費支出が26万3,979円。月平均で4万2,435円の不足となっています。

 

隆夫さん夫婦は旅行以外の生活費も平均より高く、現在も年金の手取り額だけでは毎月約8万円足りない計算です。

 

「このまま旅行に年300万円使ったら、生活費の赤字も合わせて、毎年400万円近く減るんだね」

 

由美子さんが電卓を置きました。

 

単純計算では、預貯金3,800万円のうち、今後10年間で約4,000万円を取り崩すことになります。運用益や支出の変化などを考慮しない概算ですが、夫婦にとっては見過ごせない金額でした。

 

内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』では、今後優先的にお金を使いたいものとして、「趣味やレジャー(旅行等)の費用」を挙げた人は32.4%、「自分や配偶者あるいはパートナーの医療・介護の費用」は47.5%でした。

 

隆夫さん夫婦も、今後の医療費や介護費、自宅の修繕費について話し合いました。

 

「旅行をやめたいわけじゃないの。ただ、今までと同じペースで続けていいのかは考えたい」

 

2人は年間の旅行予算を当面100万円程度に抑えることにしました。近場の海外旅行や国内旅行も選択肢に入れ、長距離の海外旅行は数年に一度の楽しみにするつもりです。

 

「行った場所も、見た景色も後悔していません。でも、貯金の減り方はもっと早く確認しておくべきでした」

 

現在は旅行の計画を立てる前に、年間の生活費と預貯金の残高を夫婦で確認しています。

 

退職後の資金計画では、旅行や趣味に使うお金に目が向きやすいものの、日々の生活費や住宅の維持費も長期にわたって発生します。年金の受給開始時期や手取り額を踏まえ、毎年どの程度の資産を取り崩しているのかを確認することが、希望する暮らしを続けるための判断材料になるでしょう。

 

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