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同窓会で突きつけられた現実と月収65万円の虚無感
都内の精密機械メーカーで課長職を務める伊藤健太(44歳・仮名)さんは、毎月支給される額面65万円の給与に一定の納得感を持っていました。20代から残業を重ね、社内の昇進競争を勝ち抜いて得た立場です。同世代の平均的な年収と比べても優位に立っている自負がありました。
変化が訪れたのは、地元で開催された高校の同窓会に参加した時です。帰省の折に顔を出した伊藤さんは、数年ぶりに再会した同級生たちと近況を報告し合いました。そこで、高校卒業後に不動産会社へ就職し、現在は地元の不動産関連企業を経営する高橋亮介(44歳・仮名)さんと話したことが、伊藤さんの意識を大きく変えることになります。
高橋さんは事業を順調に拡大させており、年収は伊藤さんの3倍以上に達していました。それ以上に伊藤さんが衝撃を受けたのは、高橋さんの余裕ある労働スタイルでした。高橋さんはこう語りました。
「事業が軌道に乗ってからは実務を社員に任せている。社長があまり現場に口出ししてもな。平日でもできるだけ家族との時間をとるように頑張っているよ」
伊藤さんは自らの現状を振り返りました。朝6時に家を出て満員電車に揺られ、夜は10時過ぎまでオフィスに残る毎日です。伊藤さんは高橋さんに自嘲気味に伝えたと言います。
「自分は東京で必死に働いてやっと課長だ。自分の時間などほとんどない」
そういう伊藤さんに対して、高橋さんは「大企業の課長だろ、すごいじゃないか!」 と感嘆している様子でした。しかし同窓会の帰り道、伊藤さんは強い虚無感を覚えました。東京で汗水流して手に入れた地位と報酬がちっぽけなものに思えたのです。
厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査』によると、「40~44歳」男性正社員の平均給与は、月収で45.7万円、年収で773.9万円。また大企業に限ると、月収で52.9万円、年収で930.2万円です。伊藤さんが得ている給与は、大卒×大企業勤務というフィルターを通しても上位に位置する高い水準です。しかし給与水準が高い層であっても、労働時間や責任負担に対する納得感が伴うとは限らないようです。