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「優しい老害」を超えた先の厳しさ
居心地が良すぎる――コンプライアンスといったものがない時代を生き抜いてきた佐藤さんにとって、その退職理由は、まったく意味がわかりませんでした。
「居心地がいいのなら、辞める必要はないのでは? 小林さんは会社からも期待されているみたいだし――」
優しい佐藤さんの言葉に対し、小林さんはまっすぐ視線を合わせました。
「ハラスメントと言われるのが怖くて、上の人は本気で向き合うことから逃げているようにみえるんです。どこがダメなのか具体的に指摘もしてくれない。このままだと、他では通用しない人間になってしまう。それが怖いんです」
小林さんは「佐藤さんは昔は厳しかったと聞きます。もっと色々教わりたかったです」と言って、部屋から出ていったといいます。
「職場の害になりたくない」と徹底してきた過剰な配慮が、若手の成長機会を奪っていたのかもしれない――佐藤さんにとって衝撃的な事実でした。
良かれと思った過剰な配慮が若手の成長機会を奪う行為は「ホワイトハラスメント」と呼ばれています。株式会社マイナビの調査によると、職場でこれを経験した人は13.6%に達し、その経験者の71.4%が「今後1年以内に転職したい」と回答(未経験者より23.3ポイント高い)しています。
過度な気遣いによる成長機会の喪失が、若手の深刻な離職を招いている実態が浮き彫りとなりました。良かれと思った配慮が裏目に出る厳しい現実を前に、現場のシニア世代はどのように若手と向き合えばよいのでしょうか。佐藤さんは複雑な表情で、指導の難しさをこのように吐露しました。
「若い人、みんながハラスメント、ハラスメントと騒ぎ立てるわけではない。しかし少数の声であっても尊重しなければならない世の中――難しいです」
優しさと放置は紙一重です。ハラスメントを恐れすぎず、真摯に向き合うバランスの取れた指導力こそが、いまシニア世代に求められているのかもしれません。
〈参考資料〉