たとえ、現役時代に高所得だった人であっても、老後の家計が安泰とは限りません。生活苦のなか、現役時代からのプライドにより、ついつい見栄を張ってしまうことも。ある家族の事例から、老後のお金について考えます。
「孫には言わないで…」〈最高年収1,200万円〉元エリートの74歳祖父、小3孫娘に「絶対知られたくなかった秘密」 ※写真はイメージです/PIXTA

孫には見せていた「余裕のある祖父」の姿

74歳の佐々木茂さん(仮名)。元々40代から50代にかけてフリーランスで活躍していました。事業は軌道に乗り、年収は1,200万円程度あったとか。子ども2人を大学まで行かせ、郊外に一戸建てを購入。家族に不自由な思いをさせないデキル男……周囲からの評価は、まさに“エリート”でした。

 

しかし、50代後半になると事業の状況が変わります。売上が落ち込み、以前のような収入を得ることは難しくなりました。最終的に事業をたたみ、その後は会社勤めなどを経て、67歳のときにリタイア。現在は公的年金を中心に生活しています。

 

その受取額は月10万円ほど。妻の年金を合わせても、月18万円程度です。2人で暮らすには、決して余裕のある金額ではありません。大きな出費があるときは、貯蓄を取り崩す月もあります。

 

それでも、孫の前では、そのことを見せませんでした。

 

佐々木さんには、小学3年生の孫娘がいます。近くに住んでいることもあり、月に何度か顔を合わせます。会えば、お菓子を買ってあげ、欲しいものがあると聞けば「じいちゃんが買ってやる」と言います。正月には、子どもたちから「おやじ、そんなに包まなくていいよ」と言われるほどのお年玉を渡していました。

 

厚生労働省『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、公的年金の平均受給月額は国民年金(老齢基礎年金)で5万9,310円、厚生年金(第1号)で15万2,89円。フリーランスをはじめとする自営業者中心の国民年金は受給額が低く抑えられがちで、受給者全体で見ても月8万円未満が約6割を占めているのが実情です。

 

余裕のないなか、見栄を張っている姿を見て、子どもたちは何度も父親に伝えていました。

 

「そんなに(孫に)お金をかけなくてもいい」

「自分たちの生活を優先して」

 

佐々木さんは、そのたびに笑って答えます。

 

「これくらいしか、やってあげられないから」

 

生活が苦しくても、佐々木さんは孫娘の前で財布をしまうことができませんでした。かつて事業をしていたころのように、家族から頼られる存在でいたかった――そのような思いもありました。特に孫には、「お金に困っているおじいちゃん」だと思われたくなかったのです。