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「絶対威張らない」元部長の誓い
都内・大手企業で営業部長を務めていた佐藤一男さん(62歳・仮名)。60歳で定年を迎えた後、再雇用制度を利用して同社で働き続けています。
立場は役職のない一般社員に変わり、給料も激減しました。現役時代の月収は60万円(手取り約48万円)でしたが、再雇用後は月額30万円(手取り約24万円)まで低下しています。
定年前との待遇の違いに不満がゼロではありませんが、それ以上に恐れていたのが、周囲から「老害」と呼ばれる事態でした。かつての部下に横柄な態度を取ったり、過去の成功体験を押し付けたりしないよう、細心の注意を払っていました。社内でハラスメントに対する警戒感が高まるなか、佐藤さんは徹底して「優しい相談役」を演じていたのです。
現場の業務において、指示や命令は一切出しませんでした。若手社員の提案には常に「いいと思うよ」「応援している」と肯定的な言葉を重ねました。提出書類に軽微なミスを見つけても「次から気を付ければ大丈夫」と優しくフォローし、決して咎めることもありませんでした。周囲からは「佐藤さんは話しやすくて優しい」と評判になり、本人も良好な人間関係を築けていると満足感を抱いていたのです。
厚生労働省が公表した最新の「令和7年高年齢者雇用状況等報告」によると、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%に達しており、シニア雇用の安定化はほぼ完全に浸透しています。具体的な措置内容の内訳を見ると、定年後の「継続雇用制度の導入」が65.1%と大半を占めており、次いで「定年の引上げ」が31.0%となっています。
この結果が示すように、定年後も同じ職場で働き続けるシニア社員が急増する中、現場では若手世代との接し方に苦慮し、ハラスメントや関係悪化を恐れて必要な指導や指摘すら控えてしまう例があるといいます。それは、佐藤さんの職場でも同様でした。
ある日、会社が期待を寄せていた入社6年目のエース社員、小林大樹さん(28歳・仮名)が突然、退職願を提出。驚いた佐藤さんは小林さんを別室に呼び出し、辞める理由や不満などを尋ねました。小林さんは感情を排した冷ややかな声で答えました。
「佐藤さんは信頼できる方なので本音を言います。ここには自分が成長できる環境がありません。居心地はいいのですが……良すぎるんです」