1.「お盆休み」の由来
日本の「お盆休み」は、インドから伝来した仏教行事の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と、江戸時代の「藪入り(やぶいり)」という風習が結びついて生まれたといわれています。「盂蘭盆会」は、毎年旧暦7月15日前後にご先祖様の魂を自宅に迎えて供養するもの。一方、江戸時代に商家などの奉公人が年に2回だけ実家に帰省することが許された休暇を「藪入り」といいます。
戦後の高度経済成長期以降、都市部に就職した地方出身の労働者が、故郷に帰省し、家族そろってご先祖様をお迎えできるようにと、多くの企業が「お盆休み」を慣習として取り入れてきました。
現在、「お盆」の期間は、東京など都市部では新暦の7月13日~16日とされているところもありますが、全国的には、旧暦の盆を新暦に合わせて1カ月遅らせた「月遅れ盆」にあたる8月13日~16日に行うのが一般的です。
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2.一斉休日と分散型夏季休暇
「お盆休み」は、生産ラインの都合で一斉休日が効率的な工場などでは便利な制度ですが、一斉休日にできない業種・職種では、「7~9月の間に、各自で5日間」などのルールの下、分散して夏季休暇を取得させる方法が普及しています。
お盆に帰省する必要のない人たちにとっては、分散型休暇のほうがありがたいでしょう。旅行を計画するにも、「混む時期を避ける」、「9月のシルバーウィークにつなげて長期休暇を取る」など、自由度が増します。
一斉休日期間に発生する緊急業務に備え、会社の携帯電話を持たせる「電話当番」は、労働から解放されたことにならないのでやめるべきですね。会社の緊急事態の場合は、使用者が対応すべき問題です。電話当番といえば出勤が当たり前だったひと昔前は、業務の発生状況により休日出勤手当か宿日直手当等が支給されていましたが、休日に社有携帯を持たされた状態は、賃金の扱いが難しくなります。電話が鳴らなければ自由に過ごせるが、鳴れば業務が発生する。休日なのに、ゆっくりくつろげません。
携帯電話が普及してから、休日にもかかわらず、個人の携帯電話宛てに仕事の連絡が入ることが増えました。筆者の夫も、かつて家族で遊びに行った遊園地のベンチで仕事の電話対応に追われていたことがありました。あれは「労働時間」だったはず、と思った記憶があります。
「働き方改革」が進み、「休日は一切仕事の連絡を受け付けません」という方針を打ち出しても受け容れられる世の中になってきたのではないでしょうか。一斉休日だけでなく、通常の営業時間を過ぎたら留守番電話に切り替わる会社も増えています。
テレワークの人の休日・休暇も明確にして、その日は業務連絡を入れないようにしましょう。
法令上の義務はなく、社内規程で定める
ところで、「お盆休み」は国民の祝日ではなく、「夏季休暇」自体も法令で義務づけられた制度ではありません。年休以外に設けるとすれば、就業規則等の社内規程で有給か無給かを明確にして定める必要があります(有給とするのが望ましい)。
夏季休暇がない会社で、かつ年休の取得率も低いならば、年休が10日以上付与されている労働者においては「年5日の時季指定義務」の規定をもとに、夏季に休んでもらうことも可能です。ただし、会社側で一方的に休暇の時季を指定することはできず、必ず労働者の意見を尊重したうえで取得時季を指定します。
なお、一斉休日(社休日)とした場合は労働義務がない日となり、この日に年休を使うことはできません。
3.法律上、年間休日数は105日で問題ないが…
ここで、年間休日数のお話をします。
労働基準法で定められた労働時間(法定労働時間)は、休憩時間を除き、原則1日8時間、週40時間です。
1年間が52週ですので、この法定労働時間を所定労働時間に設定している会社では、1週間の労働日数は5日間となり、
5日×52週=260日(労働日数)
365日-260日=105日(休日数)
となります。
年間105日の休日が確保できていれば法律上は問題なく、この条件でハローワークに求人申込みをしても、問題なく受け付けてもらえます。
しかし、労働者にとって、休日数は「働きやすさ」の指標となっており、法律上最低限の休日数(祝日も働く計算)では人材は集まらないのが実情です。とくに、若い世代は休日数を重視する傾向にあります。猛暑日を超えて「酷暑日」も増えるなか、夏季休暇のない会社は「社員の健康を考えておらず、働きづらそう」と思われるでしょう。
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4.労災事故防止のためにも「休める会社」へ
「みんなが休みの時期が書き入れ時」という業界(観光業、小売業、外食産業など)は、夏季休暇はもちろん、まとまった休暇取得が困難な状況が当たり前になっている職場も少なくないでしょう。シフトや業務のタスク管理等を見直し、交代で休暇が取れるように工夫していただきたいものです。
運送業なども、高齢化と人手不足も相まって、休暇が取得できないだけでなく、長時間労働の常態化による重大事故が増加し、社会問題になっています。
また、働き方改革による時間外労働の上限規制(いわゆる「2024年問題」)により、人手不足に拍車がかかったとも聞きます。そんななかでも、厚生労働省の「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」に掲載された改善事例などを参考に、ドライバーさんが十分に休める体制をつくり、健康管理、安全管理、そして事故防止の取り組み強化をすすめていただくよう、お願いいたします。
大企業が自社の効率化のため下請企業に無理をさせる、いわゆる「しわ寄せ」も、「中小受託取引適正化法(取適法)」(旧:下請法)の禁止事項に抵触する可能性があるので、業界全体で取り組むべき課題です。
5.経営者が考えたい、これからの「夏休み」
これからは、利益の最大化を中心に据えたこれまでの経営が是正され、会社で働いてくれる労働者を大切にする会社が評価される時代です。従業員らの健康管理を考え、戦略的に実践する「健康経営」が、国を挙げて推奨されています。健康経営は、「企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます」と、経済産業省HPで説明されています。
過酷な猛暑日・酷暑日が増え、「夏」の期間がますます長くなる昨今。熱中症予防対策と同時に、疲労の蓄積による労災事故、および生産性の低下を防ぐためのひとつの方法として、これからの「夏休み」のあり方を考えてみませんか?
服部 明美
社会保険労務士
社労士はっとりコンサルティングオフィス代表
【厚生労働省:参考資料】
・『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』パンフレット
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000501911.pdf
・「働き方・休み方改善ポータルサイト」https://work-holiday.mhlw.go.jp/
https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/
【経済産業省:参考資料】
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html
【その他、参考資料】
一般社団法人 人を大切にする経営学会「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞
https://www.htk-gakkai.org/a0013/MyHp/Pub/
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