1.「紹介だけ」に頼らない新規集客
小規模企業の経営者の方とお話ししていると、「うちは紹介で仕事が来ているから、営業にはあまり困っていない」という声を聞くことがあります。
実際、紹介営業は小規模企業にとって非常に有効な営業手法です。信頼できる人を介するため初対面でも話が進みやすく、広告費もかからない。これからも、紹介営業は小規模企業にとって大切な経営資産であり続けるでしょう。
ただ昨今は、紹介を受けた見込み顧客の多くが、すぐに会社へ連絡するのではなく、まず会社名をWeb上で検索し、ホームページとGoogleマップの口コミを確認します。信頼に足る知人からの紹介とWeb上の情報を総合し、「問い合わせてもよさそうだ」と判断した上で連絡する人が増えているのです。
今日の紹介営業による新規集客は、Web上の情報とセットになったのです。
紹介の前に、Webで下調べをする
これは感覚的な話ではありません。消費者庁の調査(令和5年度「消費者意識基本調査」)によると、商品やサービスを選ぶ際に顧客が参照する情報源は、一人あたり平均5.3個にのぼります。最も多いのは「テレビ・ラジオ」(74.0%)ですが、それに続くのが「家族・友人・知人」(66.5%)と「インターネット記事やブログ」(61.3%)となっています。つまり、多くの人が、知人の話とWeb上の情報を見比べたうえで最終的な判断を下すということです。
だからこそ、会社名を検索した顧客が十分な判断材料にたどり着けなければ、せっかくの紹介が問い合わせにつながらないこともありえます。この前提に立つことが、有効な新規集客の出発点になります。
「紹介だけ」に頼る小規模企業の新規集客リスク
紹介営業の強みは、最初から一定の信頼があること、成約率が高いこと、そして営業コストが低いことです。一方で見落とされがちなのが、紹介件数は自社でコントロールできないという点です。
担当者の交代、地域の人口減少、取引先の外部業者の見直し……こうした事情により、ある日を境に紹介が細ることがあります。これまでは盤石だったやり方が、環境の変化で急に通用しなくなる。紹介“だけ”に頼る新規集客には、こうしたリスクが潜んでいます。
Web上の信頼は一朝一夕には築けません。そのため、紹介が減ってから慌ててWeb集客を始めても、即効的な集客は期待できません。だからこそ、紹介で仕事が回っているうちから、少しずつ準備しておくことが重要なのです。
★大同生命が運営する
経営者のコミュニティサイト『どうだい?』
HPはこちら!(登録・利用無料)
2.新規集客の第一歩は、選ばれる理由を「言語化」するこ
では、何から手をつければよいのでしょうか。
ここで多くの経営者が「広告費がないから集客できない」と考えます。しかし、Web集客においては、予算の多寡より、「自社の強み」が顧客に伝わる言葉になっていないことのほうが、はるかに大きな問題です。
とはいえ、「自社の強みなんて、特に思いつかない」という方も多いでしょう。「急ぎの相談にもすぐ動く」「大手が断る細かい依頼も引き受ける」「専門用語を使わず説明する」――こうした “自社ならでは”の価値は、毎日続けているうちに、自分では“特別なこと”だと感じなくなってしまいます。
そんなときは、自分にいくつかの質問を投げかけてみてください。私が経営者の強みを引き出すときに使う質問を、いくつか挙げてみます。
・競合と比べて「ここは負けない」点は? (対応の速さ/価格/品質/アフターフォローなど)
・お客様に言われて、一番うれしかった言葉は?
・「他社では断られた」という相談を、引き受けたことはないか?
・そもそも、なぜこの仕事を始めたのか?
・逆に、苦手なこと・できないことは? (正直に出すほど、かえって信頼されます)
これらの質問は、自分が思い込んでいる強みではなく、お客様が実際に評価してくれている点を引き出してくれます。きれいな文章にする必要はありません。思いついたことを、箇条書きでメモするだけで十分です。そこにこそ、自社が選ばれる本当の理由が隠れています。
新規集客で重要なのは、派手な宣伝ではありません。大切なのは、今いるお客様から評価されている理由を、初めて見る人にも伝わる形に整えることです。そして、その“言語化”の素材こそが、先ほどの数行のメモなのです。
言語化された信頼を、Web上に置く
言語化の素材ができたら、それらをWeb上に配置していきます。
Googleビジネスプロフィールは、とりわけ「地域名+サービス名」で検索する見込み客に対し有効な集客ツールです。プロフィールに記載されている営業時間・所在地・写真・口コミ等の情報は、問い合わせにつながる確率を大きく左右します。また、Google自身も、正確な情報の充実、口コミの返信、写真の追加を推奨しています。
自社ホームページは、デザインの豪華さより、初めての人が「何をしている会社か」「どんな困りごとを解決するのか」「どう相談すればよいか」などの情報に素早くアクセスできる設計であることが重要です。
なかでも、お客様の声・導入事例は、いわばWeb上における自社の紹介状です。「どんな課題を、どのように解決したのか」が見えると、第三者にとっての安心材料になります。よくある質問(FAQ)は、料金・納期・対応地域など、問い合わせ前の不安を先回りして減らす場所です。
そしてSNS・LINE・メールマガジンは、タイムリーに自社を売り込む場としてではなく、見込み客とのつながりを維持し、いざ困ったときに自社を思い出してもらうための場所として考えましょう。
★大同生命が運営する
経営者のコミュニティサイト『どうだい?』
HPはこちら!(登録・利用無料)
3.“信頼の材料”は業種別に考える
自社に必要な“信頼の材料”が曖昧な場合は、業種別に考えてみましょう。
たとえば工務店なら、施工事例、対応エリア、工事の流れ、お客様の声。「この地域で、こういう家を、こう建てた」という情報が見えるだけで、安心感が変わります。
整体院なら、症状別の説明、初回の流れ、施術者の紹介、口コミへの返信。「初めてでも何をされるか分かる」状態が、予約のハードルを下げます。
そのほかにも、士業なら相談事例とよくある質問、飲食店ならメニューと店内の雰囲気が伝わる写真、というように、Web上に置くべき“信頼の材料”は、業種ごとに異なります。自社なら何を置けばよいか。そう考えると、やるべきことは一気に具体的になります。
4.AIは、社長の頭のなかを言語化する補助になる
ここで役立つのが、生成AIです。先ほど書き出した箇条書きのメモを、そのままAIに渡してみてください。「この内容を、ホームページに載せる紹介文に整えて」と頼めば、ぶつ切りのメモが、読める文章のたたき台になります。専門的な操作は要りません。普段の言葉で話しかけるだけで十分です。
このほかにも、よく聞かれる質問を整理する、お客様が感じている不安を想定する、事例やSNS投稿の下書きを作るなど、頭のなかにあるものを引き出す壁打ち相手として、AIは力を発揮します。
ただし、AIにすべてを丸投げすれば成果が出るわけではありません。最後に判断するのは経営者自身です。「自社らしさが伝わるか」「お客様に誤解を与えないか」「実際に提供できる内容か」をしっかりと確かめることが大切です。AIは信頼そのものを作る道具ではなく、経営者の経験を、外から見える言葉に変えるための道具です。
5.まずは「選ばれる理由」を3つ書き出す
大きな施策を一度に始める必要はありません。小規模企業に必要なのは、無理なく続けられる仕組みづくりです。
まずは、先ほどの質問を手がかりに、自社が選ばれている理由を3つ書き出してみてください。次に、その3つを、ホームページ、Googleビジネスプロフィール、事例やFAQに反映していく。これだけで、Web上には少しずつ信頼が積み上がっていきます。
紹介は、人から人へと信頼を運びます。Webは、時間をかけて少しずつ信頼の土台を築いていきます。この二つは対立するものではなく、互いに補い合うものなのです。
紹介の強みである「信頼」を言語化し、Web上にも置いておく。それが、紹介だけに頼る営業から、「紹介+Web上の信頼構築」へと進む第一歩です。
西 俊明
中小企業診断士・宅地建物取引士・FP技能士2級・情報セキュリティマネジメント・応用情報技術者・基本情報技術者・初級システムアドミニストレータ・ITパスポート(第1回試験1,000点満点合格、約4万人中2名のみ)
合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション 代表社員/CEO
★大同生命が運営する
経営者のコミュニティサイト『どうだい?』
HPはこちら!(登録・利用無料)
ホームページやSNSの見直しなど、Web集客の第一歩をサポートします。
管理職研修や人材育成に関する支援サービスです。指導力向上やハラスメント防止研修の実施にお役立てください。

